元厚労省コロナ責任者が由布院で「2日連続ゴルフの休日」の是非
鈴木康裕・前医務技監 医療現場が逼迫する中、これを不要不急ではないと言えるのか 昨夏まで新型コロナウイルス対応を陣頭指揮していた医系技官のトップ 退官後は国際医療福祉大学副学長に就任
大分県の由布院温泉は九州屈指の人気観光地である。大分空港からクルマに乗れば50分ほどで到着するため、全国から宿泊客が訪れる。だが、今夏は宿泊施設の空室が目立っているのが現状だという。
いまだ13都府県で緊急事態宣言が、16の道県にまん延防止等重点措置が発令中の8月21日土曜、由布院温泉にあるゴルフコースに目を引く男性2人がいた。スーツ姿の男性1人と女性2人が、彼らをクラブハウス到着からカートで出発するまで付きっ切りでアテンドしていたのだ。
そんなVIP待遇を受けていたのが、カートを運転している国際医療福祉大学の理事長・高木邦格(くにのり)氏(63)、そして後部座席の向かって左に座っている同大学の副学長・鈴木康裕(やすひろ)氏(61)だ。
なかでも鈴木氏は、慶應大学医学部卒で元厚生労働省のエリート官僚である。昨年8月まで医務技監を務めていた。
「医師免許を持つ医系技官のトップとして、’17年に厚労省に新設された事務次官級ポストが『医務技監』です。鈴木氏は技術総括審議官、保険局長を経て、初代医務技監に就任しています。昨年1月からは政府の新型コロナウイルス対策を陣頭指揮し、現場責任者だった大物官僚です」(全国紙社会部担当記者)
’20年8月7日付で厚労省を退官後、鈴木氏は大学副学長に転身。朝日、日経などの新聞各紙に識者として登場し、コロナ対策について提言もしている。また、医療コンサルティング会社がユーチューブに配信したインタビュー動画で鈴木氏は、
〈「自分たちの行動一つで高齢者への感染リスクを抑えられる」というようなもっと広い視点で今回のコロナ危機を捉えて、実際の行動を変えられるような情報発信を、もっと丁寧にやるべきでした〉
と若者に政府の声が届いていなかったことを反省する弁を述べていた。だが、自分自身の行動に問題はないのだろうか。
この日の午後3時過ぎ、ラウンドを終えてクラブハウスに戻った鈴木氏と高木氏は着替えることなく、迎えに来た運転手付きのレクサスで走り去っていった。
「このゴルフ場の周りは別荘地で、そこに同大が所有する立派な保養所があるんです。もちろん天然温泉の大浴場が完備されています」(医療ジャーナリスト)
彼らはそこに宿泊したのだろう。
翌日の日曜朝も同じゴルフ場に鈴木氏と高木氏は一緒にレクサスで現れ、スーツに身を固めたスタッフ3人がクラブハウスで彼らを出迎えた。
1番ホールでは、男性7人が横に並んで鈴木氏のティショットを見守っていた。2日目は別の同伴者を加えて、2組8人でラウンドを楽しんだようだ。
泊まりがけで週末に2ラウンド。プレーを見るかぎり、ゴルフを始めたばかりの鈴木氏を上級者の高木氏が誘って、大分県へのゴルフ旅行に出かけたと思われる。
一方で、国際医療福祉大学のHPには学生に向けて、「夏季休暇中の不要不急の帰省・旅行・外出等自粛のお願い」が掲示されている。さらに、同大の教授で感染症学の専門家である松本哲哉氏は、連日のようにコメンテーターとしてテレビ番組に出演し、「人流」を減らすことを主張している。
本誌は理事長と副学長の大分県へのゴルフ旅行について、国際医療福祉大学に質問状を送付したが、同大広報部はこう回答する。
「本学関係者がたとえプレーをしたとしても、私人であり、貴社の取材に応じさせていただくような公職にはございません」
「自分たちは特別だ」と考えている人がいるかぎり、コロナ禍に終わりは来ないのではないだろうか……。
8月27日発売のフライデーでは、国際医療福祉大学理事長と元厚労省幹部である副学長のゴルフ旅行について詳しく報じている。
『FRIDAY』2021年9月10日号より
- 写真:朝日新聞(5枚目)