神戸弘陵3年 島野愛友利「女の子が…ではなくて」エースの願い
甲子園に出場した兄二人を追いかけて、自らも聖地のマウンドに 中学時代は男子と一緒に全国の頂点に、そして女子高校野球でも日本一に
子どもの頃、バッティングセンターやスポーツ用品店に行くと、「女の子なのに野球を頑張っているんだねえ」と珍しがられた。「野球をやるのは男の子の専売特許」と言われている気がして、いつも不思議な気分だったと振り返る。
神戸弘陵高校硬式女子野球部のエース・島野愛友利(あゆり)さん(17)の5歳上の兄は大阪桐蔭で’16年のセンバツを経験し、1歳上の兄も履正社で甲子園の土を踏んだ。島野さんも自分の力を試してみたいという想いから、中学時代は女子野球ではなく大阪・大淀ボーイズに所属。男子に混じってエース番号を勝ち取り、日本一に輝き、一躍、野球界のニューヒロインとして注目の的(まと)となった。
「ずっとお兄ちゃんの背中を追って、中学まで野球をやってきました。でも、高校に入学したら、お兄ちゃんやチームメイトとは同じ場所(甲子園)を目指せない。そう諦めかけていたんですけど……」
高校入学のタイミングで芸能事務所『ホリプロ』にも所属し、女子野球を広く認知させるスポークスウーマンの役割を担ってきた。そして、今春に第25回全国高校女子硬式野球選手権大会の決勝が甲子園を舞台に開催されることが決定。この夏を前に、彼女は愛らしい笑みを浮かべながらこんな誓いを立てた。
「女の子が『女子野球をやっています』ではなく、『野球をやっています』と胸を張って言えるような、メジャーなスポーツに女子野球をしていきたい」
8月23日、ナイター開催となった決勝で、島野さんは抑えとして最終回のマウンドに上がった。女子選手としてはトップクラスに入る、MAX123kmの直球こそ110km台後半に止(とど)まったが、三者を難なくアウトにとり、有終の美を飾った。
「大きな一歩を踏み出せた。女子選手にとっても、甲子園が目指すべき舞台としてあり続けることが私の願いです」
卒業後は女子プロ野球か、大学で野球を続けるか、決断しかねている。いずれの舞台であろうとも、野球選手としての島野さんが果たす役割は変わらない。

『FRIDAY』2021年9月10日号より
取材・文:柳川悠二