専門家が語る「ワクチンについて、いま改めて知ってほしいこと」
ウイルス・免疫学の峰宗太郎医師「心配すべきは…」
「接種から3ヶ月で、抗体値が4分の1に」こんな見出しが踊った。藤田医科大の研究チームが発表した内容を報道したニュースだ。これを読んで、不安になった人も多いだろう。
「現状まったく心配することはありません。それは『抗体価』(血液中の抗体の量)が下がったのであって、『予防効果』が4分の1に下がったわけではないからです。新型コロナウイルスの感染やCOVID-19の発症・重症感染に対する『予防効果』は、十分に保たれています」
こう話すのは、ワクチンの専門家・峰宗太郎医師。FRIDAYデジタルでは、これまでたびたびインタビューをしてきた。刻々と変わる状況のなかでも、峰医師は常に冷静だ。
「ワクチン接種で得られる抗体はとても多く、感染した人が治癒後に得られる抗体よりずっと多いことが分かっています。
そして、その『抗体価』のという一つの要素が下がっていっても、それに比例して感染や発症の予防の効果が下がるという単純なことではないのです。4分の1程度なら予防効果にはほとんど影響がありませんから。それよりも、こういった研究の一部を強調するような報道によって、ワクチン接種をためらう人がいるとしたら、ほんとうに残念なことです」
峰医師が在住するアメリカでは、日本より早くからワクチンの接種体制が整った。
「それでも、反ワクチン派ともいうべき人たちは相変わらず存在して、さまざまな『発信』をしています。今はアメリカでもイベルメクチン推しが盛んです。これは、日本でも同じ状況のようですね。…科学的なことがわからない人たちが騒いでいるのですが、信じてしまう人も一定数いるのが現状です」
アメリカ国内では、ワクチン接種が進んでいる北東部の州で接種率が6割近い一方、南部の反ワクチンの傾向が強い南部の州では接種完了率が4割程度にとどまっている。接種率の差によって死者数は「5倍」の差があるという。
「ワクチン拒否死」を招かないために
アメリカ、テキサス州の女性はワクチン拒否して感染、4人の子どもを残して亡くなった。最期に「子どもたちにはワクチンを」と言い残したという。米国内では、こうした「ワクチン忌避派」の死亡例がつぎつぎと報道されている。
「モデルナワクチンの異物混入、これは、絶対にあってはならないことです。なにが起きたのか、徹底的に調査する必要があります。けれども、この異物混入で健康被害の可能性は現状あまり心配する必要は無いだろうと思ってはいます。こういった事故があるとワクチン拒否の声が高まるのは当然ですね。ワクチン普及には、アメリカでもかなり苦労しています。日本のみなさんにはぜひ冷静に、情報を読んでほしいと思いますし、製薬企業や国はしっかり迅速かつ透明性をもって対応してもらう必要があります」
ワクチン陰謀説などの「トンデモ本」も売れている。
「ですが、各国の調査データは明らかに『ワクチンは有効である』ことを示しており、ベネフィットとリスクのバランスからいっても接種推奨ができると各国の公的機関も発表しています」
今、信じるべきはなにか。データが、それを示しているだろう。
峰宗太郎:医師(病理専門医)、薬剤師、医学博士。京都大学薬学部、名古屋大学医学部、東京大学大学院医学系研究科卒。国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所等を経て、米国国立研究機関博士研究員。専門は病理学・ウイルス学・免疫学で、ワクチンの情報、医療リテラシー問題にも明るい。愛称は「ばぶ先生」。