池袋暴走で禁固5年 裁判長が被告に「謝って」と異例説諭の意味 | FRIDAYデジタル

池袋暴走で禁固5年 裁判長が被告に「謝って」と異例説諭の意味

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9月2日の判決後、車で裁判所を後にする飯塚被告

「被告人、いいですか」

約1時間におよぶ、判決理由を読み上げた後のことだった。裁判長がハッキリした口調で、異例の説諭を始める。

「過失は明白です。判決に納得できるなら、被害者遺族に真摯に謝っていただきたい」

被告人はうなだれながら、何度も小さくうなずいたーー。

9月2日、19年4月に東京・池袋で起きた乗用車暴走事故で、旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三被告(90)へ禁固5年の実刑判決が下された。飯塚被告は黒いスーツ姿で、代理人に車イスを押され出廷。下津健司裁判長が判決を言いわたすと、2度ほど頭を下げた。判決内容について、交通事故裁判に詳しい弁護士の園高明氏が解説する。

「遺族の思いに寄りそった重い判決です。飲酒や無免許運転に比べ、過失の場合は実刑にならないケースが多い。しかし被告はアクセルとブレーキの踏み間違いを否定し続け、『反省の念がない』と受けとめられたのでしょう。複数の方が亡くなり、事故後の遺族の心理的負担が大きかったのも考慮されたと思います」

「アクセルを踏んでいないのに加速」

裁判所に向かう松永拓也さん(中央の遺影を持った男性)

痛ましい事故だった。当日、飯塚被告が運転する乗用車は、赤信号を無視して横断歩道に突入。制限速度を大幅に超える時速100km近いスピードで、歩行者を次々となぎ倒したのだ。横断歩道にいた松永真菜さん(当時31)と長女の莉子ちゃん(同3)が死亡。9人が重軽傷を負った。

「20年10月から始まった公判で、飯塚被告は運転能力に『問題ない』『過失はなかった』と言い続けてきました。『アクセルを踏んでいないのに加速した』と、乗っていたプリウスに異常があったと無罪を主張したんです。経年劣化などで、車の電気系統にトラブルが生じブレーキがきかなくなったことが、暴走の原因であると。

しかし、事故後の乗用車の解析結果や証言など考慮すると、飯塚被告の過失は明らかでしょう。今年6月には、プリウスを製造したトヨタ自動車が異例のコメントを発表しています。『車両に異常や技術的な問題は認められなかった』」(全国紙社会部記者)

飯塚被告の主張に、遺族は強く反発する。亡くなった松永真菜さんの夫・拓也さん(35)は、今年4月の被告人質問の直後に記者会見を開き、こう憤りをあらわにした。

「荒唐無稽な主張をされ続け、事故後で一番失望した」

拓也さんは、9月2日に実刑判決が下れた後にも会見。心境を、次のように語っている。

「むなしい思いもあるが、遺族が少しでも前を向いて生きていくキッカケになる。(飯塚被告が)罪を認め、心から謝罪するタイミングは刑が確定してから。謝罪があれば、受け入れざるをえない。今後の被告の行動を見守りたい」

判決後、裁判長が「謝っていただきたい」と説諭したことは、拓也さんの胸に響いたようだ。「救われる気持ちになり涙が出た」と声をふるわせた。

「裁判長が異例の説諭をしたのは、飯塚被告が『法律上の責任を感じているが(謝罪については)お答えしかねる』と発言していたからです。客観的な事実を受け入れるべきだと考えたのでしょう。遺族の気持ちに寄り添った説諭だったと思います」(前出・記者)

警察庁によると、アクセルとブレーキの踏み間違いが原因で起きた事故は、16年から20年の5年間で2万1103件にのぼる。そのうち、被害者が亡くなったのは243件……。飯塚被告が判決に不服がある場合は2週間以内に控訴し、東京高裁で審理が続くことになる。

  • 撮影蓮尾真司

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