世界が認めたリアルファイター千葉真一さん 跡継ぐのは横浜流星か | FRIDAYデジタル

世界が認めたリアルファイター千葉真一さん 跡継ぐのは横浜流星か

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アクション俳優として、世界から認められた千葉真一さん。極真空手の黒帯だった…
アクション俳優として、世界から認められた千葉真一さん。極真空手の黒帯だった…

8月19日、新型コロナウイルスによる肺炎のため、俳優・千葉真一さんが亡くなった。

千葉さんは日本を代表するアクション俳優として、またハリウッドではJJサニー千葉の名前で多くの映画に出演、時にはアクション監督として活躍し全米での人気も高かった。

アクション俳優といえば、すぐにシルベスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーの名前を思い浮かべる人が多いかもしれないが、彼らの出演するアクション映画は素手の格闘シーンよりどちらかといえば銃撃シーンのほうが多い。

また彼らは筋肉隆々のギリシャ彫刻のような肉体を誇るが、実際に格闘技の経験がある人は少ない。ということで、ここでは格闘家出身のアクション俳優を取り上げてみたい。千葉さんもその一人だ。

今でこそブラッド・ピットやトム・クルーズ、キアヌ・リーブスなど、ハリウッド俳優の多くがアクションをこなしアクション映画で主演を張るようになったが、ʼ90年代前半くらいまでは普通の俳優が格闘やアクションを演じることはあまりなく、アクション映画は『アクション俳優』と呼ばれていた俳優たちが主人公を演じることが多かった。彼らの多くは実際に武道や格闘技の経験者、あるいはアスリートであって、みんな非常に高い身体能力を保持している。

その代表格としてスティーブン・セガールやジャンクロード・ヴァンダム、そして香港で制作された『功夫(カンフー)』映画出身のブルース・リーやジャッキー・チェン、ジェット・リーらの名があげられる。

セガールは日本で空手や合気道を学び、その後ロサンゼルスで道場を開いている。合気道は七段の腕前だ。

ヴァンダムは全欧プロ空手選手権ミドル級王座を獲得したこともある。ジェット・リーは小さいころから中国武術を習い、ʼ74年に中国全国武術大会で初優勝したあと5連覇を遂げている。その記録はいまだ破られていないという。彼らは俳優だがリアルファイターでもあるのだ。

そしてアクション映画ファンの間でよく話題になるのが、

「アクション俳優は本当に強いのか」
「実際に戦ったら誰が一番強いのか」

ということ。

スクリーンの中で主人公は、華麗な技を駆使してバッタバッタと敵をなぎ倒す。セガールなどは相手に指1本も触れさせることなく合気道の技で投げ飛ばしている。

あくまでも映画なのだから主人公が強いのは当たり前。繰り出す技も派手に見えるように演出されていて、実戦向きではない部分も見られる。しかし演技とはいえそのような大技を出せるということは人並外れた身体能力があるということだろう。

試しにセガールに技をかけてもらった映画関係者は、こう語っていた。

「彼の手を掴んだら一瞬で投げ飛ばされて、何が起きたのかわかりませんでした」

『ロッキー4』でスタローンの敵役『イワン‧ドラゴ』を演じたドルフ‧ラングレンは極真空手四段で、ヨーロッパの大会で優勝した経験もある強者だ。リハーサルのときスタローンがラングレンに“本気で殴ってみろ”と殴らせたら肋骨と肺を痛めたという話は有名だ。

千葉さんは体操の選手としてオリンピックを目指していたがケガで断念。俳優として東映に入社することになるのだが、実は入社前から極真会館の前身である大山道場に通っていた。

今は『フルコンタクト空手』などというスマートな呼び方をするが、なんのことはない実際に素手で殴り合い、蹴りあいをする直接打撃の実戦空手。それが極真だ。

だから当時の極真は『ケンカ空手』と呼ばれていた。大山道場時代は今では考えられないほどの荒々しい稽古が行われていたという。

千葉さんはその極真で四段を允許(いんきょ)されている。武道の段位には名誉段位というものがあり、年齢やその団体への貢献度などを考慮して、実力とは関係なく与えられるものもある。しかし千葉さんはほかの一般門下生と同じように昇段審査を受けて黒帯を取得している。

しかも極真の昇段審査はそう楽なものではない。1つ1つの技はもちろん、型、筆記試験、さらに逆立ち歩行や高い位置にあるボールを蹴るなど、身体能力も問われる。そして最後が組手審査だ。

この組手審査が過酷を極めるのはフルコン空手の有段者ならだれでも知っていることだが、極真ルールでは初段で10人、段が上がるにつれ審査を受ける段位×10人を相手に戦わなければならないのだ。

そして千葉さんは、大会にも出場してその実力を示している。

ʼ77年、ハワイで開催された極真会館日本代表チームとハワイ代表チームとの対抗戦に出場した。他の日本代表メンバーには大石大吾、二宮城光、東孝、中村誠など空手ファンならだれもが知る極真のスーパーファイターが顔を揃えていた。

対戦相手は『アメリカ東海岸チャンピオン』になったこともある身長180cmを超す黒人選手であった。対戦結果は千葉さんが第2ラウンドに二段蹴りで一本勝ち、すなわちK.O.で相手を倒している。

千葉さんはこの試合で多彩な技を繰り出しているが、その中でも相手選手が度肝を抜かれたのが、前方に宙返りして踵で蹴る技。この技は現在、子どもから大人まで多くの空手家が使う必殺技で、空手の技の中でも最も高度で派手な『胴回し回転蹴り』という技。世界で初めてその技を使った空手家は千葉さんだという。

私が極真会館に入門したとき、当時極真会館最高顧問だった故・梶原一騎氏と私の師匠でもあった氏の弟で極真会館首席師範(当時)だった故・真樹日佐夫氏(真樹道場創始者)に、千葉さんの実力について尋ねてみると、

「彼は本当に強い。間違いなく極真カラテ黒帯の実力を持ってるよ」

と言っていた。

ブルース・リー主演の『燃えよドラゴン』が大ヒットし、‛70年代初頭から香港製の『功夫映画』が人気となったこともあり、千葉さん主演の日本製空手映画も欧米で注目を浴びブームが巻き起こったのだが、そこにはハワイでの試合が大きく影響していたという。それまで千葉さんの空手を映画用のアクションと見ていた海外の本職の空手家たちが、千葉さんが試合にも出場し、しかも一本勝ちするほどの強豪ということを知って、

「Sonny Chibaは本物の空手家」

と声を上げるようになったという。

そんな千葉さんの後を継ぐのは、JAC出身で愛弟子、しかもすでにハリウッドで活躍している真田広之が筆頭だと思うが、彼は前述したような格闘技経験者ではないし、彼はもうすぐ還暦を迎える。

今後、千葉さんをしのぐようなアクション俳優が日本から生まれることはあるのだろうか。

日本の俳優で格闘技、特に千葉さんと同じフルコンタクト空手の経験者といえば木下ほうかと横浜流星が有名だ。木下はこれからアクション俳優を目指すとは思えないので、となれば極真空手の有段者で『国際青少年空手道選手権大会 13・14歳男子-55kgの部』で優勝し、世界一に輝いた経歴を持つ横浜がぴったりではないだろうか。ドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)で見せた華麗な“後ろ回し蹴り”に目を奪われた人は多い。

横浜といえば、戦隊モノである『烈車戦隊トッキュウジャー』(テレビ朝日系)のトッキュウ4号として注目を浴びると、連続ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)で主演の深田恭子の相手役としてブレイク。アクションだけでなく、恋愛ドラマなどでの演技力にも定評があり、今後ますます注目される存在になるはずだ――。

  • 取材・文佐々木博之(芸能ジャーナリスト)

    宮城県仙台市出身。31歳の時にFRIDAYの取材記者になる。FRIDAY時代には数々のスクープを報じ、その後も週刊誌を中心に活躍。現在はコメンテーターとしてもテレビやラジオに出演中

  • 写真Splash/アフロ

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