ドラマ『ハコヅメ』で注目!「プリキュアと警官に親和性」の理由 | FRIDAYデジタル

ドラマ『ハコヅメ』で注目!「プリキュアと警官に親和性」の理由

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今年6月の『ハコヅメ』撮影現場。イメチェンした永野芽郁のショートカットには驚かされた

戸田恵梨香(33)と永野芽郁(21)のコミカルな掛け合いが人気の水曜ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(日本テレビ)。女性警察官バディという珍しい切り口も、視聴者たちに新鮮な楽しさを与えているようだ。

そんな『ハコヅメ』の8月25日放送回で、興味深い「たとえ」が登場した。それは「女性警察官はプリキュアか?」というものだ。女子小学生たちに「女のおまわりさんてどういう仕事なの?」聞かれた藤(戸田恵梨香)は、「正義の味方だし、概ねプリキュア」と答えるのだが、小学生たちからは「絶対ちがーう」と全否定される……、という笑いを誘うシーンだった。

ちなみにプリキュアとは、女の子たちに大人気の少女戦隊ものアニメ。主に普通の女の子たちが覚醒してプリキュアとなり、毎回様々な敵と戦う。藤が女性警察官をプリキュアにたとえたのは、そういうワケだ。

しかしドラマのラストで、永野芽郁演じる川合は子供たちを前に「私たちはプリキュアではありません。みんなの命を守りたいけどそれはできないから、ルールを守ってほしい」と訴える。その言葉は見ている私たちの心にも強く響くものがあった。

では「女性警察官はプリキュアではない」という意見にも賛同かというと、それは否だ。個人的には、女性警察官はもちろん、何よりこの『ハコヅメ』というドラマの存在じたいがプリキュアだと思っている。なぜかというと、実はプリキュアのコンセプトは決して「悪を倒す正義の味方」という単純なものではないからだ。プリキュアの製作関係者は、次のように語っている。

「プリキュアの放送がスタートしたのは17年前の04年。当時はまだ女の子の戦隊ものが少なく、『女の子だって暴れたい!』という制作者たちの思いから生まれたものです。そのためプリキュアは、男らしさや女らしさを含め、全ての固定概念を打ち破ることを最大のコンセプトとしています。

その象徴が戦い方で、それまでの少女戦士ものではまだ珍しかった激しい戦闘シーンが当たり前に登場します。他にも戦士であると同時に、プライベートでは子育てをしているメンバーが登場したり、はたまた男の子がプリキュアに変身したり……。ジェンダーに絡む様々な問題も多く絡められています」

プリキュアが戦う「押し付け」

またプリキュアたちが戦う目的も、「正義のため」という一つの概念を押し付けるものではない。この点もプリキュアの特徴的なところだ。

「たしかに作品内では“敵”が登場するのですが、彼らには彼らの『自分たちの考え方が正しいから広める』という正義があるわけです。プリキュアはどちらかというと、そんな彼らをやっつけるというより、『浄化する』といったほうが正確。彼らの思い込みを取り払い、お互いを認め合い、共存していく道を探る。それが彼女たちの戦う理由でもあると思うのです」

正義というのはある意味、一方の考えの押し付けでもある。プリキュアが戦っているのは、その「押し付け」と、だ。これを私たちが暮らす社会に置き換えてみると、そこにも無限の押し付けが存在している。女性といえば殴り合わない、男性は女性を守るもの、そして警察官といえば男性、CAといえば女性……等々。

その門戸は開かれてきたといえ、ドラマ内でも藤と川合が語っているように、まだまだそういった思い込みから女性警察官になりたいという気持ちをそがれた人もいるだろうし、CAになりたい男性もためらいを抱いてしまうのが実情だろう。

しかし、私たちが幼い頃からそういった押し付けを取っ払ったドラマを当たり前に見て育ったとしたらどうだろう? たとえば今や、女性医師や女性弁護士のドラマは多数存在する。もちろん実社会で女性医師や女性弁護士が増えてきた、という背景もあるだろうが、ドラマで頻繁に彼女たちが活躍する姿を見せることで、その当たり前さをより強く根付かせた、という一面はあったと思うのだ。同様に『ハコヅメ』も、女性警察官バディという存在をドラマで描くことで、私たちが無意識に抱いている「女性警察官はレアな存在」という思い込みを「浄化」しているのかもしれない。

実は日本で女性警察官が主人公のドラマが登場するようになったのは比較的最近のことだ。さらに女性警察官バディとなると、私が調べた限りでは18年に放送された波瑠×鈴木京香の『未解決の女 警察庁文書捜査官』(テレビ朝日)が最初だ。「バディものドラマ」というと刑事や探偵といった職業で描かれることが多いが、これらの職業は長く男性の聖域だった、ということを表しているだろう。

しかし『未解決の女』は大好評を博し、シーズン2も制作された。続く『ハコヅメ』も、目下のところ高い視聴率をキープしている。このように、これまで男性キャストが主流とされていたバディもの職業ドラマが、今や当たり前に女性で描かれるようになっており、成功もおさめている。同様に、これまでは女性の職業ドラマとされていた看護師ものやCAものも、男性で描かれることが少しずつだが増えてきている。

こういった流れがますます加速することで、女の子も男の子も、気付けば「警察官といえば男性? 看護師といえば女性? 何それ??」という感覚になっていくのではないだろうか。

様々な考えの押し付けに対して力強く反論を述べ、是正していくという努力は大切だ。しかし時にそれは多大なエネルギーを要し、私たちを疲弊させる。だからこそドラマというエンタメの力を使って、ライトに、楽しく、社会の刷り込みを取り払っていく――。柔よく剛を制すではないが、エンタメだからこそできることがきっとあるはずだ。

どちらもその存在が、柔らかく社会の刷り込み取り払っている。そういう意味で『ハコヅメ』の藤と川合は、やはりプリキュアだと私は思うのだ。

  • 取材・文奈々子

    愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。タレントのインタビュー、流行事象の分析記事を専門としており、連ドラ、話題の邦画のチェックは欠かさない。雑誌業界では有名な美人ライター。

  • 撮影近藤裕介

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