ワクチン接種 データから導かれた「3回目接種が必要な理由」 | FRIDAYデジタル

ワクチン接種 データから導かれた「3回目接種が必要な理由」

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2回のワクチン接種では収束の目途は立たない! 

新型コロナウイルスのデルタ株が猛威を振るう中、ワクチンの2回接種を終えた人に3回目を接種する動きが先進国を中心に出てきている。イスラエルでは8月1日から、ワクチンの3回目接種が60歳以上を対象に始まった。アメリカは2回目の接種から8ヵ月経った18歳以上の人に、今月の20日からファイザー製かモデルナ製ワクチンの3回目接種をスタートさせるという。

昨年の12月から驚くべきスピードでワクチン接種を進めてきたイスラエルでは、8月から60歳以上の高齢者を対象に3回目接種を開始。その後、接種対象を30歳以上に広げ、現在は12歳以上への3回目接種が進んでいる

日本も準備は進めているようだ。河野太郎ワクチン接種推進担当大臣は8月31日の記者会見で3回目接種について、「アメリカ同様8ヵ月の接種間隔を機械的に当てはめれば」としたうえで、医療従事者は11月以降、5月の連休明けから1回目の接種を始めた65歳以上の高齢者は来年の2月になるとの見通しを示した。

一方、アメリカの食品医薬品局(FDA)と疾病予防管理センター(CDC)は2回の接種を完了した人に追加接種は不要とする共同声明を発表し、7月初めの時点では3回目接種に慎重な姿勢を示していた。

内閣官房の「COVID-19 AI・シミュレーションプロジェクト」研究開発チームの一員である東京大学大学院工学系研究科・大澤幸生教授によると、シミュレーションで「感染拡大の抑制には3回のワクチン接種が必須」との結果が出たという。そのシミュレーション結果の中身とは? 3回目に向けて接種体制は現状のままで大丈夫なのか? 大澤先生に聞いた。

「第6波」は!? 3回目の接種開始は年内が必須

ワクチンを接種して免疫がついた人に対して、予防効果を維持するために一定期間が過ぎた段階で再びワクチンを打つことを、アメリカではブースターショット(追加接種)と呼ぶ。現在使われているコロナのワクチンは2回の接種で1セットだから、3回目はブースター接種ということになる。

「2回目のワクチンを打ってから2ヵ月ほどで、一部の人は免疫をある程度失います。つまり抗体価(抗体の量)がだいぶ減って、感染可能な状態になってしまうんです。2回1セットのワクチンが効いて新規感染者が一時的には微減するでしょうけれども、1セットの接種だけではピーク時の数に戻ると考えられます。 

そこで3回目接種が必要となる。新規感染者が再び増え始めるところで打てば、ゼロに向かって収束していきます。3回目のワクチン接種はあくまでブースターですが、その効果がブースターとまでいかず2回目と同程度であるとしても、シミュレーションの結果から3回の接種は必須と私は考えています」(大澤幸生教授 以下同)

大澤先生によると、実際にコロナに感染すると非常に強い免疫がつくため、再び感染可能な状態に戻る確率は低いそうだ。ところがワクチンによってつく免疫は実際に感染した人ほど強くはなく、しかも1セットの接種では2ヵ月程度で抗体価が減少するため、弱い免疫を持ちつつも感染しやすい体に戻っていく。とはいってもワクチンを打つ前の状態に戻るわけではないので、3回目を打つことによって実際に感染した人に近いレベルのかなり強い免疫がつくのだという。

「1セットのみの接種では、感染者も重症者も一旦下がった後、再び上昇します。3回目を打たなければ収束の目処は立たないでしょうね」

では、3回目の接種はいつが望ましいのか。日本は今のところ、3回目接種を実施するとすれば、2回目を打ってから8ヵ月後を予定しているようだが。

「私のシミュレーションでは、年内が理想という結果が出ています。今年中に3回目接種を始めると、来年の2月くらいには新規感染はかなり収束し、3月末には重症者もほぼゼロに近づきます。3回目の接種が1月か2月でももちろんそれなりの効果は出るわけですが、2回打っただけだと12月の中旬頃には感染者が増えていきますし、重傷者の数も横ばい状態が続きます。ですから3回目は、免疫がなくなった人からできるだけ早く打つほうがいいでしょう」

実は、緊急事態宣言を延長しても意味がない!?

大澤先生による最新のシミュレーション結果。緊急事態宣言を9月20日の週まで延長したとしても、それだけでは12月に再び感染者数が増加に転じる。2回の接種でできた抗体が減少したところで3回目を打つと12月には収束に向かい始める。年内の3回目接種は不可欠だ

高所得国と低所得国のワクチン格差どうする

ところで、世界保健機関(WHO)によると、高所得国では100人当たりの接種回数が100回に達するのに対し、低所得国は1.5回にすぎないという。先進国が3回目接種に動き出す一方で、低所得国との接種格差が広がりつつあるのだ。

WHOのテドロス・アダノム事務局長は8月4日の会見で、少なくとも9月末まで追加接種を控えるよう富裕国に自制を求めた。全ての国で人口の10%が接種できるようにするためだ。

「それはまったく正論だと思います。ワクチンは世界全体にできるだけ平等に、その国や地域の人口に比例した量を分配すべきです。WHOは富裕国が3回目を打って貧困国が1回目や2回目を打てないのは問題だと人道的立場で主張しているんだと思いますが、感染拡大を抑制するための方策としても正しいです。平等性というのは有効で、私はそれをシミュレーションで証明しました。 

ただ、3回目をできるだけ早く打つことも大事です。これが今はトレードオフの関係にあるわけですね。確かに困るところではあります」

感染防止対策と経済活動をはじめ、コロナ禍で直面する様々なトレードオフ。さて日本は、接種格差の問題とどう向き合えばいい?

「このトレードオフが果たして難しいかどうかなんです。河野大臣がおっしゃっているように1月か2月から3回目を接種したとして、世界で本当にワクチンが不足するかどうか。また、発展途上国に保管の難しいmRNAワクチンを送って不足の解消に役立つのか。実はWHOもきちんと定量的に述べていない。少なくとも私は数字を見たことがありません。 

日本は十分な数のワクチンをすでに確保できていて、このワクチンを3回目として打つと、河野大臣はおっしゃっていると私は理解しています。もし本当にそうなら、3回目のワクチンをできるだけ早く打っていく権利が、日本にはあるだろうと考えます。

3回目接種は決して、個人が強い免疫を得るための利己的な行為ではありません。社会全体の感染拡大と重傷者増加を抑制するための社会政策なんですから」 

4回目、5回目のワクチン接種は必要か

ワクチン接種に関しては、対応の不手際が続く日本。モデルナのワクチンを使う職域接種の受け付けをめぐって混乱が生じたり、自治体向けのファイザーのワクチン供給量が自治体の希望量に追いつかなかったり、先日も東京都が若者接種でドタバタ劇を繰り広げたばかりと、お粗末感は否めない。3回目接種が行われることになった場合、スムーズに進むことを願いたいものだ。

東京都は16~39歳を対象に8月27日、渋谷に予約不要の会場を設けて接種を開始したが、希望者が殺到して現場には長蛇の列。午前7時半にはTwitterで受け付け終了を告知する事態に。都は「想定外」と釈明したが、こうなることは容易に想定できそうなものだが…

「ワクチン接種もそうだしPCR検査もそうですが、日本は少しずさんな面があるのかなと思っています。ワクチンに関して言えば、たとえば職域接種の場合、自治体から送られている接種券をチェックするところもあれば、確認せずに打つところもあるんです。後者のケースでは、きちんとカウントされていないわけですね。これではいけない。平等性の原理に沿って打たれているかどうか、自治体はちゃんと数をチェックするべきです」 

そして、大澤先生は3回目接種の体制についてこう提言する。

「3回目のワクチンは各都道府県に平等に分配したうえで、自治体は数を確認するだけにして、誰にいつ打つかは現場のお医者さんがその人の抗体価によって判断する。できれば医療従事者の裁量に任せて3回目の接種を始めていただくのがいいと思います」

職域接種の一時停止などワクチン接種をめぐる混乱で7月に自らの不手際を認めた河野大臣が、8月20日の会見では「総裁選うんぬんより、まずワクチン接種をしっかり進め、今の仕事をしっかりやりたい」と発言。我々国民は、その言葉をしっかり覚えておきたい

大澤先生のシミュレーションでは3回目の接種で感染はかなり収束するとのことだが、その後4回目、5回目の接種が必要になるかどうかも気になるところだ。すでに新たな変異株も確認されている。

「私は4回目、5回目接種のシミュレーションはしていませんが、抗体が減少後に3回目を打つと来年の3月後半にはゼロに近いところまで収束しますので、4回目接種のニーズは少ないのではないかと今は思っています。 

ただし、3月はラムダ株が新たに流行している可能性があります。ラムダ株に関しては十分なエビデンスがありませんが、今現在のワクチンでは相当効き目がゆるいということです。おそらく新たなワクチンが開発されるだろうと考えています」

もっとも、政府CIOポータルのワクチン接種状況のデータを見ると、2回目接種率は約4割だ。まずは、希望する全ての人の2回接種を終えることが先決だろう。

大澤幸生(おおさわ・ゆきお)東京大学工学系研究科システム創成学専攻教授。1968年京都生まれ。1995年に東京大学工学研究科で工学博士を取得後、大阪大学基礎工学研究科助手、筑波大学ビジネス科学研究科助教授、東京大学情報理工学研究科特任助教授などを経て2009年より現職。専門はシステムデザイン、知識工学、ビジネス科学。チャンス発見、データジャケットに基づくイノベーション市場、データの可視化と価値化などを研究。

『未来の売れ筋発掘学』(編著、ダイヤモンド社)、『ビジネスチャンス発見の技術』(岩波アクティブ新書)、『イノベーションの発想技術』(日本経済新聞出版社)、『データ市場』(近代科学社)などの著書がある。

  • 取材・文斉藤さゆり写真アフロ

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