在宅勤務が離婚を誘発…?コロナ禍で急増「夫の妻追い出し」の実態 | FRIDAYデジタル

在宅勤務が離婚を誘発…?コロナ禍で急増「夫の妻追い出し」の実態

配偶者による「身体的暴力」は減少傾向だが、この1年で「経済的暴力」が増加中

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コロナ禍で夫から「経済的DV」を受ける女性の相談が急増しているという(写真はイメージ)

夫は妻からの小言を1年間以上聞き続け……

パンデミックにより日常生活が劇的に変化する中、労働市場でも家庭内でも女性が追いやられる事態が起こっている。

新型コロナウイルスが蔓延しはじめて1年以上が経過するが、この間、夫から離婚を切り出されて行き場を失う女性からの相談が増えつつある。

15年以上女性に寄り添い支援を続けてきた、一般社団法人エープラス代表理事の吉祥眞佐緒さんが明かす。

「相談のためエープラスにたどり着く女性の多くは、家計を補助するためにパートの仕事に就いていましたが、緊急事態宣言やまん延防止措置による影響で、事業縮小によって収入が減ったり解雇されたりしているんです」

DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)が施行されて、この10月で20年が経つ。最近になってやっと、あからさまな身体的暴力は減少傾向に転じ、殴る蹴るといった暴力や、声を荒げたり人格を否定するような暴言を吐く行為はDVに値するとの認識が広まってきた。「その一方で、コロナ禍では、特に経済的暴力や極度な家計の圧迫による配偶者間の問題が急増しているんです」と吉祥さんは言う。

コロナ禍で配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス)が増加したことは、国連の調査でも世界的な問題として告発されている。

国内では、2020年4月から1年で、DV相談は1.6倍に増加(内閣府調査)。全国にある配偶者暴力相談支援センターや24時間電話・メール相談のDV相談プラスには、毎月のように1万5000件を上回る相談が届く。

あるケースでは、コロナ禍で家族が家にいる時間が増えた結果、ストレスをぶつけ合い、妻が追い出されてしまったという。

「家族が一緒にいる時間が増え、かつ家庭の収入が減った場合、ストレスが強くなるのは大抵女性の方だ」と吉祥さんは話す。

厳しくなった家計管理や、騒ぐ子どもの世話は妻が対応を迫られる。その不満は夫に向き、コロナ感染防止のために帰宅時には手を洗えなど、細かいことを注意するようになったことで、夫の我慢が限界に達した…という結末だ。

これまでは、夫との考え方や子どもの教育方法が多少違っても共有する時間が少なかったため、それほど気にはならなかった。夜遅く帰宅する夫との間では会話も限定的で、食事の時間で済んだ。真面目に働いて家計を助けてくれるのならと、週末は乗り切って結婚生活を続けることができた。

ところがリモートワークで長時間を共にする中、「多少」の違いを相容れなくなり、些細なことから修復不可能な家庭内不和に発展した。

夫は、妻からの小言を一年以上も聞き続け、「一生懸命働いているのに何事だ。もう俺は耐えられない」と行き詰り、妻にはこれ以上金を使わせたくないからと離婚を迫った。

住宅ローンを支払っている夫にとっては、自宅の所有権は自分にあるとの意識があり、収入が激減したため自宅を売却するからと、妻に対して1週間以内に子どもを残して、荷物をまとめて出て行くことを言い渡した……これがこの1年で増え続けている「妻追い出し」のケースだ。

女性の側にフルタイムの収入、さらに貯蓄があると決断は早い。1週間もあれば新しい部屋を見つけて、離婚の手続きに合意する。

離婚は、被害を受けた側からでないと申し立てができない。そのため、まずはどちらが有責配偶者(離婚に至るまでに責任ある側)なのかを判定しなければならず、証明しづらい経済的DVなどでは、お互いが被害者だと主張を続けるために長引くケースが多数見られる。さらに日本の裁判では精神的損害の補償水準が低く、慰謝料を勝ち取ったとしても弁護士、その他裁判費用に消えていく。

夫からのDVに悩んだ末にエープラスに相談に来るような女性には、夫が経済的DVで妻の美容院の費用や化粧品や被服代などを出し渋ったり、生活費に十分貢献しなかったりするため、パートで稼がざるをえないなどという背景を抱える。

こうした女性たちは、コロナ禍で子どもの学校や幼稚園が閉鎖した際、理解ある雇用主が休職を認めたとしても「会社に迷惑がかかる」として、子育てに専念することを選択することが多い。結局、自己都合で退職を決めてしまう。

仕事も稼ぎも奪われた分、子どもに関心が注がれる。ストレスも同時に子どもに向き、夫の無理解もそれに輪をかける。子どもや夫も、自宅にいる時間が増える中でさらに追い詰められていく。

吉祥さんは、特にコロナ禍での夏休み中には「金銭関係が原因で家庭内で喧嘩になることが非常に多い」と話す。

コロナ渦で家にいる時間が増えた妻は少なからずストレスを抱える。そのストレスが子供に向けられたことで一気に離婚につながるケースも増えている(写真:アフロ、イメージ画像)

仕事も稼ぎも奪われた妻の関心が子供に注がれ……

例えばある女性は、夏休みでゲームばかりしている子どもの学力低下を懸念し、ゲームの時間を1日40分に制限した。子どもの成績や態度が悪いのは「母親のしつけのせい」だと指摘されることが一般的に多いため、女性は過干渉になっていった。

普段は育児に関心のない夫は、女性が子どもと言い合いになる時だけ介入し「お母さんは意地悪だ。お父さんと暮らせばゲームはやりたい放題だから、離婚したらお父さんについておいで」などと子どもの味方を装った。

さらには女性に経済力がないことを引き合いに出し、彼女と暮らすのであれば安アパートで大学にも行くことができないなどと吹聴していた。そのため、子どもは次第に母親を軽蔑し始め、言い合いになると決まって母親に家を出て行くように迫るなどした。

実際は、父親が養育費を支払えば、離婚時に経済力が不十分であっても、女性が子どもの学費や生活費などを心配する必要は微塵もない。ただ、長年DVに悩んできた女性は、自分の無力さに納得してしまうことが多いのだ。

中には、帰宅時に鍵を変えられていたという女性が、「家は、住宅ローンを払っている自分の所有地。出ていかなければ不法侵入罪で訴える」などと夫からラインのメッセージで脅され、警察に通報されたり逮捕されたりすることを恐れて着の身着のままで駆け込んでくる女性もいる。

経済力のある女性においては、鍵が変えてあっても、自分で鍵屋を呼んでさらに鍵を変えるなどというケースもあるが、行動に移せる女性はそれほど多くない。

自宅を追われる女性たちは「もう少し優しく接していればよかった」あるいは「もう少し夫の機嫌をとればよかった」などと後悔する。DV関係においては特に、女性の側は自分に責任を感じて内省する。

「結婚生活が長ければ長いほど、DV夫からは『お前が悪い』と言われ続け、さらに自分の親からも同じように言われて育った女性には、自分を正当化することが難しい」と吉祥さんは言う。

こうした暴力の被害経験から、子どもの学校や幼稚園が閉鎖した際にも、女性たちには休職を申請したり雇用主にシフトの調整を申し出たりする力はない。労働組合とも無縁な上、孤立しがちで法律の知識もないパート労働者が多いため、自主的に退職してしまう傾向が強いという。

経済力がなく、さらに家を追い出された女性たちは、途方に暮れる。もしこれまで通りに、ママ友と会う機会があり、子育ての悩みを相談できたり、他の家庭事情を参考にできたとしたら結果は違ったかもしれない。

取り返しのつかなくなった地点に追い込まれ、女性たちは「もっと早く誰かに子育てのことを相談できたらよかった」「誰かに話を聞いてもらえていたら」といった後悔を口にするそうだ。

女性たちに必要なのは、ストレス発散できる場や自分の子育てについて意見を集える場であると同時に、そうした場が女性を責めず、肯定かつ受容し、女性たちが安心して相談し共感されるべきだ、と吉祥さんは指摘する。それがあって初めて、女性が意思表示や意思決定の力を養うことができるのだ。

DV相談プラス https://soudanplus.jp/  0120-279-889(24時間フリーダイヤル)

  • 取材・文松元千枝

    ジャーナリスト。人権や労働など社会的正義に関する問題を主に取材する。共著に『マスコミ・セクハラ白書』(文藝春秋)、『マンガでわかるブラック企業』(合同出版)など、共同翻訳には『ストする中国』(彩流社)があり、2021年1月に共同翻訳『世界を動かす変革の力——ブラック・ライブズ・マター共同代表からのメッセージ』(明石書店)を出版

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