目指せ北京五輪…!「日本女子カーリング」激戦の見どころ
日本はまだ五輪出場権が獲得できていない!
東京五輪が閉幕し、年が明けるとすぐに北京五輪がやってくる。前回の平昌五輪では、フィギュアスケートやスピードスケート、スノーボードといった人気競技と並んで注目を集めたのが、「そだねー」も流行語となった女子カーリングだ。
前回大会は日本代表となったLS北見(現ロコ・ソラーレ)が同競技で日本初となる銅メダルを獲得して大きな話題となった。今回の北京五輪でも当然メダルが期待されるが、そう簡単にはいかないのがカーリングという競技だ。北京五輪は来年2月に開催を控えているが、実は日本は五輪出場権も獲得できていないのが現状。さらに、カーリングは他の団体競技と違って選抜ではなく予選を勝ち上がったチームがそのまま代表となるのも特徴だが、その日本代表の決定もこれからなのだ。


今回も注目が集まるであろう女子カーリングの現状を中心に、五輪までのスケジュールをさらっていきたい。
- 2021年9月10日~ 日本代表決定戦(ロコ・ソラーレ 対 北海道銀行フォルティウス)
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- 2021年12月 北京五輪最終予選(日本代表チームが出場)
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- 2022年2月4日 北京五輪開幕
まず、日本代表についてだが、北京五輪へ向けては前回銅メダルで2020年の日本選手権優勝のロコ・ソラーレと、2021年の日本選手権でロコ・ソラーレを破り優勝した北海道銀行の決定戦が9月10~12日に行われる。この代表決定戦は最大で5ゲームを戦い、先に3勝した方が日本代表権を獲得。その後、日本代表として12月に行われる五輪最終予選に出場して、他国と最後の五輪出場枠を争うことになる。

日本代表決定戦に望む2チームを改めて紹介したい。
まずは、前回銅メダルの「ロコ・ソラーレ」。レギュラーとなるメンバーは、吉田夕梨花(よしだゆりか、リード)、鈴木夕湖(すずきゆうみ、セカンド)、吉田知那美(よしだちなみ、サード)、藤澤五月(ふじさわさつき、スキップ)と変わらずだが、前回はリザーブとして登録され、チームの精神的支柱でもあった本橋麻里が下部チーム育成のため、下部のロコ・ステラでプレイヤーとして復帰。しばらく4人体制だったが、2020年より、二度の五輪出場経験があり、近年はカーリング中継の解説としても活躍していた石崎琴美(いしざきことみ)が加入し、リザーブとしてチームを支える。
一方、「北海道銀行」は船山(旧姓・林)弓枝(ふなやまゆみえ、リード)、近江谷杏奈(おうみやあんな、セカンド)、小野寺佳歩(おのでらかほ、サード)、吉村紗也香(よしむらさやか、スキップ)、田畑百葉(たばたももは、リザーブ)という布陣(チームは現在6人体制で、20歳の伊藤彩未も在籍)。レギュラー4名のうち、船山、近江谷、小野寺の3人がオリンピック経験者で、船山は北京五輪出場を果たすと4度の出場となる大ベテランだ。

激しい戦いが繰り広げられる国内戦は9月10日スタート
さて、この両チームにはさまざまな縁や共通点が多く、そのことも知ったうえで観戦すると面白いだろう。
まず、ロコ・ソラーレの吉田知、吉田夕、鈴木、藤澤、北海道銀行の船山、近江谷、小野寺、吉村の8人が北海道北見市出身で、藤澤以外は常呂町の出身と同郷出身が多い。さらに、女子カーリングの競合選手が多い黄金世代の1991年度生まれも、吉田知、鈴木、藤澤、小野寺、吉村がいる。吉田知、吉田夕、
さらに吉田知はソチ五輪時に北海道銀行に所属しており、船山、小野寺とも同じチームで戦った仲間でもある。
吉村もジュニア時代から実力者として知られ、国内では負け知らずの成績を残し、大学時代には世界ジュニア選手権に3年連続で出場、2013年には銅メダルを獲得し、グランドスラム準優勝といった実績を持つ。しかし、あと一歩のところで五輪出場を逃しており、彼女が五輪にかける思いもかなり強いはずだ。
また、ロコ・ソラーレのコーチを勤めている小野寺亮二は北海道銀行・小野寺の父親で、親子対決にも注目が集まる。
このように、現在の日本の女子カーリングシーンのトップは、小さいころから同じチームで戦ったり、対戦相手としてしのぎを削ったりと、長年共に戦い、手の内を知り尽くした選手が多い。
現在、日本の女子カーリングは“4強”といわれ、ロコ・ソラーレ、北海道銀行に加え、中部電力、チーム富士急の4チームがしのぎをけずっている。ロコ・ソラーレが平昌五輪に出場して出られなかった2018年の日本選手権はチーム富士急が優勝、2019年は中部電力が優勝し、日本代表として出場した世界選手権では4位となるなど、高レベルのパフォーマンスを発揮。
2020年はロコ・ソラーレが中部電力との接戦を制して優勝、2021年は圧倒的強さを見せるロコ・ソラーレに予選こそエキストラエンド(延長戦)で敗れたものの、決勝戦では見事ロコ・ソラーレを撃破して北海道銀行が優勝を果たすなど、まさに群雄割拠の体をなしている。2020年と2021年の日本選手権を連覇すれば無条件で日本代表となるが(男子はコンサドーレが連覇を達成し、日本代表に。女子と同様、12月の最終予選に挑む)、ロコ・ソラーレの連覇を北海道銀行が阻む形となった。
また、女子だけでなく男子も日本代表のコンサドーレが世界最終予選に、男女1名ずつのペアで戦うミックスダブルスも9月18~20日に日本代表決定戦を行うが、このミックスダブルス日本代表決定戦には吉田夕梨花がコンサドーレの松村雄太とのペアで出場。吉田夕のもう一人の姉が松村雄太と結婚しており、このチームは義理の兄妹となる。さらに、ミックスダブルの日本代表決定戦に出場する谷田康真・松村千秋チームの谷田はコンサドーレ所属、松村千秋は松村雄太の妹だ。
北京五輪に向けて激しい戦いが繰り広げられる9月の代表決定戦。まずは、この試合を見ておけば、本戦の五輪がさらに楽しめること間違いないしだ。
選手の特徴がわかれば、観戦の楽しみ方も変わる!
【ロコ・ソラーレ】
吉田夕梨花(リード):1993年生まれ。吉田知那美の妹。チーム最年少ながら、熱くなりがちな“お姉さん”たちを鎮める役割。冷静な判断と正確なショットでチームを支える。世界トップレベルの“ウィックショット”※に注目したい。ミックスダブルスでの北京五輪出場も目指す。(※リードが行う、高い技術を要するショット。吉田夕をはじめ、トップ選手があまりにもバシバシ決めるようになったため、ルール改正で禁止になる動きも。五輪でウィックショットが見られるのは今回が見納めの可能性もあるので余計に注目したい)

鈴木夕湖(セカンド):1991年生まれ。身長145cmとチーム最小ながら、海外選手から吉田夕とともに“クレイジースウィーパー”と呼ばれる強力なスウィープが持ち味。天然キャラでチームのムードメーカーであり、彼女の一挙手一投足から目が離せない。

吉田知那美(サード):1991年生まれ。ソチ五輪、平昌五輪に続き、3度目の五輪出場を目指す。バイススキップを務め、スキップ藤澤の2投への橋渡しをするチームの重要人物。全体的に好不調の波が少なく、安定したショットでゲームをコントロールする。表情豊かで、特にいいショットを決めたときの笑顔に注目。

藤澤五月(スキップ):1991年生まれ。ジュニア時代から同年代でトップ選手として活躍。ロコ・ソラーレでは絶対的なスキップとしてチームをけん引する。ショットの正確性やバリエーション、技術、アイスリーディング、経験など、どれをとっても日本の女子選手でトップの選手。特に、強気で攻めながら、

石崎琴美(リザーブ):1979年生まれ。2002年のソルトレークシティ五輪、2010年のバンクーバー五輪出場のほか、5度の世界選手権出場経験のある実力者。カーリング中継の解説者としてもおなじみで、そのわかりやすい解説にも定評がある。チームの最年長者としてその経験、わかりやすい解説からもわかる通りの頭脳的、論理的な思考でチームを支える。

【北海道銀行】
船山弓枝(リード):1978年生まれ。2002年ソルトレイクシティー五輪、2006年トリノ五輪、2014年ソチ五輪と3度の五輪出場経験を持ち、2011年のチーム結成時からプレーする大ベテラン。安定感あるショットでチームのリズムを作る。2児の母親。

近江谷杏奈(セカンド):1989年生まれ。2010年バンクーバー五輪出場。サードにつなげるショット、微妙な判断が要求されるスウィープで実力を発揮し、ゲームを作る役割を担う。ベジタリアンアスリートとしても知られ、インスタグラムの専用アカウント(@channa_gohan_)で料理も公開中。筋トレ大好きなカーリング選手で結成された「カーリング筋肉部」部員。

小野寺佳歩(サード):1991年生まれ。2014年ソチ五輪出場。大学までカーリングと並行して打ち込んだ陸上競技では、インターハイ出場経験もあるなど、高い身体能力を生かしたパワフルなショットとスウィープが持ち味。チームのムードメーカーであり、カーリング男女選手で結成された「カーリング筋肉部」の創設メンバー。ロコ・ソラーレの小野寺亮二コーチは実父。

吉村紗也香(スキップ):1992年生まれ。ジュニア時代からトップ選手として、同世代をけん引。五輪出場をあと一歩で逃し続けているため、北京五輪にかける想いはひとしお。2020年から取り入れたメンタルトレーニングの成果もあってショットの安定感、創造性にさらに磨きがかかる。2021年の日本選手権で躍動した姿も記憶に新しい。一投でゲームの局面を変えるスーパーショットに期待。

田畑百葉(リザーブ):2002年生まれ。2021年4月からチームに加入。2020年の冬季ユース五輪でカーリング混合団体に出場し、銅メダルを獲得。2021年の東京五輪では、開会式で日章旗を持って会場に入る大役も果たした。

取材・文:高橋ダイスケ