令和に残る「ラブホの回転ベッド」が映えると人気沸騰中
SNSに今も残る昭和LOVE遺産
アイネ香芝店(奈良)

昭和の時代、オトナの遊具として誕生した「回転ベッド」が、今、令和の若者の間で再びブームとなっている。
煌(きら)びやかな昭和レトロの雰囲気が楽しめると、Amazonプライムの番組『キコキカク』で水原希子(30)が紹介し、SNS上には回転ベッドの部屋で女子会を楽しむ大学生やOLの姿が溢れている。またコスプレイヤーが撮影会を楽しむスポットにもなっているようだ。
600軒以上のホテルを実際に訪れてリサーチしてきた、ラブホテル探訪家の逢根(あいね)あまみさん(36)がその魅力を語る。
「なんといっても、独特な雰囲気や仕掛けが面白いです。ベッドを宇宙に浮かぶUFOに見立てたり、上下に動いたりするのは、現代にはないセンスですね。回転ベッドは、個性的な昭和のラブホテルの象徴。ド派手な非日常空間は、今の若者には目新しく見えます」
一口に回転ベッドと言っても形は様々。中でも、奈良県にある『アイネ香芝店』の回転ベッド(上写真)はまるで万華鏡の中にいるような神秘的な空間だ。部屋の梁が放射状に張り巡らされ、ベッド側面には点滅する電球がつき、回ると壁の鏡に反射して、部屋中がキラキラと光る。
形が珍しいタイプだと、静岡県の『ユートピア』にあるロールスロイスの形をしたベッド(2枚目写真)がずば抜けている。一見すると、これが本当に回るのかと疑うが、電源を入れるとフロントライトが光り、ドリフト走行をしているかのように車体がゆっくり回るのだ。
「かつて男性は、この物珍しさを口実に女性をホテルに誘っていたんです。また、鏡張りの壁と回転ベッドはセットで設置されていました。アダルト動画が手軽に観られなかった時代、鏡に映った男女の姿を見るのは新鮮だったんです」(同前)
しかし、回転ベッドは’80年代前半をピークに減少。現在ではなかなかお目にかかれない、レアものになってしまった。
主な原因は、’85年の新風営法の施行だ。それまでは、単なる宿泊施設だったラブホテルが、回転ベッドや鏡張りの装備品により風営法の管轄へと変更された。それを嫌がった多くのラブホテルが回転ベッドを撤去。法律上、旅館として営業できるよう対応することとなった。また、減少理由は他にもあると逢根氏は語る。
「’80年代中頃からは都会的なデザインが流行し、華美な装飾が廃れていくとともに回転ベッドも徐々に姿を消していきました。しかし、令和になって昭和ならではの派手なホテルが人気になったことで、生き残った回転ベッドが再注目されているんです」
数を減らし、さらに貴重になった回転ベッド。昭和も令和も物珍しさに惹かれる若者の性質は変わらないようだ。
ユートピア(静岡)

スターホテル(三重)

ニュー高瀬(埼玉)

アイネ五條店(奈良)

AI(静岡)

『FRIDAY』2021年9月24日号より
撮影:逢根あまみ