オールブラックス対ワラビーズ 世界最高峰が激突した瞬間

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ニュージーランド代表は試合前にマオリ族の伝統の踊りハカを行う

2018年10月27日、横浜市の日産スタジアムでブレディスローカップが開催された。耳慣れない大会名かと思うが、1931年(32年という説もあり)から行われているラグビーの強豪ニュージーランド代表・オールブラックスとオーストラリア代表・ワラビーズが行う真剣勝負の定期戦だ。

長年のライバル同士が、しのぎを削る世界的に注目度の高い試合で、日本で開催されるのは今回が2度目。ちなみに両国は、2015年のワールドカップイングランド大会決勝でもぶつかっている。

「このブレディスローカップは、ワールドカップと同じくらい重要なんです。出場選手にとってはスピリットが試されるものであり、意気込みは格別だと思います」

こう語ったのはリッチー・マコウ。2015年までオールブラックスのキャプテンだった選手だ。今回の開催会場は、来年のワールドカップ日本大会の決勝がおこなわれる舞台でもある。46143人の観衆が集まるなか、ワールドカップ2連覇中のニュージーランド代表が試合を優勢に運び、37−20で勝利をおさめた。白星を獲得したスティーブ・ハンセンヘッドコーチはこのように語った。

「日本ではたくさんのファンに声をかけてもらい、素晴らしいサポートも得られました。宿泊施設も素晴らしい。伝統的な相手とここでプレーできたことには深い感銘を受けました。設備、運営の方々にとっては、今回の試合を通じ学びがあったのではないでしょうか。(来年のワールドカップ開催を)大変、期待しています」

この日、マン・オブ・ザ・マッチに輝いたリコ・イオアネ。父親はかつて日本でプレーしていた

今回は、80分の熱戦の中で見られた名場面を振り返りたい。

まずは前半11分、ニュージーランド代表が先制トライを決めたシーン。敵陣22メートルライン付近、左中間のスクラムからの連続攻撃が先制得点をもたらした。ここで目立ったのは、基本動作の徹底だった。

司令塔でスタンドオフのボーデン・バレットは、パスをもらうと真正面のタックラーから向かって右へカットイン。さらに右側に立つタックラーを含めた2選手を巻き込みながら、味方の見える位置にボールを置いた。

1人でも多くの相手を自分のいる密集に巻き込めば、その次の攻撃局面で数的優位を生みやすくなる。高強度のプレーが繰り返される中、ニュージーランド代表はその基本原理を共有していた。

身体の大きなフォワードが左右に散る中、このうちの2人、オーウェン・フランクスとコディ・テーラーのパス交換も見事に決まる。フランクスはディフェンダーを牽制しつつ右脇に短く鋭いパスを放つ。そこに走り込んだテーラーは、勢いよく前に出られた。

トライに直結するフェーズは、やはり自前のシステムを活かした連携技だった。

接点の左斜め後ろにスタンドオフのボーデン・バレット(B・バレット)が立ち、そのさらに左斜め後ろにはフォワード3選手が横一列に並ぶ。スクラムハーフのTJ・ペレナラからパスを受け取ったバレットは、後方の3選手のうち真ん中にいたロックのスコット・バレット(S・バレット)につなぐ。

その両隣の選手が各々ディフェンスを引き付けるなか、S・バレットはさらに左斜め後ろにいたインサイドセンター、ソニー・ビル=ウィリアムズにボールを回す。

この瞬間、S・バレットら3人の働きのおかげで左サイドへ広いスペースができていた。ウィリアムズは、その左サイドの深い位置から駆け込むフランカーのリアム・スクワイアにパス。最後はスクワイアが防御網を破り、フィニッシュを決めた。

実はこの過程では、他にも有効打となるフェーズが重なっていた。特にスクワイアは、止めの局面を含めて計3回もボールをもらっている。倒れても、倒れても、すぐに起き上がって攻撃に参加していた。

完成度の高いシステム、各々のスキル、運動量が絡み合ったトライを、スクワイアはこう振り返った。

「あの場面では、球出しを速くすればするほど相手が守りづらくなると思ってプレーしていました。いつもコーチからは『ディフェンスがどうしているのかを見てどちらへ行くかを判断しろ』と言われていました。最後のトライの場面ではそれができたので、幸運でした」

対するオーストラリア代表も名プレーを連発した。例えば20−13と7点差を追う後半16分ごろ、自陣22メートルライン付近でナンバーエイトのデービッド・ポーコックが得意技を披露する。密集戦で相手ボールに絡みつく、ジャッカルというプレーだ。

ここでは、タックルでニュージーランド代表の選手がポーコックの近くに倒れてしまっていた。ポーコックはその瞬間、相手が懐に隠すボールへ長い手を伸ばし、掌をつけると自慢の腕力で引き寄せた。相手のサポート役による体当たりにも、動じない。ポーコックに捕まった選手はノット・リリース・ザ・ボールの反則を取られた。ポーコックの技が光った瞬間だ。

現役世界最高のプレーヤー、ボーデンバレット。司令塔としてゲームをコントロールし、みずからトライも決める

もっともこの日、勝敗を分ける瞬間をおさえたのはニュージーランド代表だった。

後半6分。ニュージーランド代表は17-10と7点先行もピンチを迎えていた。この時、自陣ゴールエリアへ突っ込むランナーにB・バレットがタックルを決め、危機を救った。自分の腕をうまくボールに絡みつけグラウンディングを防いだのだ。ちなみにこのシーンのリプレイ映像はスタジアムのオーロラビジョンで流れたが、バレットの真後ろにはニュージーランド代表の選手がもう数名、回り込んでいた。

ここでは直前にニュージーランドが反則を犯していたため、ペナルティーゴールによる失点を招いた。ただ、被害を最小化したのは確かで、ニュージーランドはここから着実に加点していく。攻守に活躍のB・バレットは、試合後こう語った。

「毎試合、毎試合、どうやったらよくなるかが課題だと思っています。オールブラックスの選手として日本に来られるのはすごく嬉しいこと。ファンの方も本当にリスペクトしてくれるので、またここへ来ることを楽しみにしています」

妙技連発の激闘を制したニュージーランド代表は、11月3日、東京・味の素スタジアムで日本代表と対戦する。メンバー構成などは流動的だが、黒いジャージィを着る者のスタイルと精神は変わらないはずだ。初のワールドカップ自国開催を間近に控えた日本代表にとって、愉しくも厳しいレッスンが待っている。

取材・文:向風見也 写真:アフロ

Photo Gallary3

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