世界から取り残されてる…?日本の「大麻事情」最前線のホントの話 | FRIDAYデジタル

世界から取り残されてる…?日本の「大麻事情」最前線のホントの話

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この国の「大麻」を取り巻く環境が大きく変わるかもしれない――。

スイスの大麻製品関連企業の栽培現場。「商品」としての価値が認められ、世界ではこうした栽培が広まっている(写真:AFLO)

日本で「大麻」と聞けば、大多数の人が「薬物」「危険」「中毒」「逮捕」などのネガティブなイメージを思い浮かべるだろう。

一口に「大麻」といっても、医療の現場で使われる「医療用大麻」もあれば、健康食品やオイルなどに使われる「大麻由来製品」もある。また、古来日本では「麻」は社会や生活に結びついた植物で、衣服の原材料にもなっていたうえ、神事などでは欠かせなかった。大相撲で横綱が締める綱も、原材料は大麻だ。

にもかかわらず、日本ではいわゆるマリファナなどの「薬物としての大麻」にばかり焦点が当たり、「大麻イコール悪」というイメージが変わらず残り続けている。毎年のように有名人やアーティストが大麻の所持で逮捕され、それが大々的に報じられることで、「大麻イコール悪」という構図が作られているからだ。

そんななか、今年に入ってから、大麻に関する活発な議論が日本で行われていたことをご存じだろうか。

「医薬品容認」の画期的な議論

6月11日に、厚労省が開催した「大麻等の薬物対策のあり方検討会」。この検討会の結果をまとめた報告書が、さまざまな議論を呼んでいる。

最も注目を集めたのは「大麻使用罪の創設」が提案されたことだが、それについては後段に譲るとして、まず知っておきたいのが、この検討会の報告書に「大麻草を原料とする医薬品の使用を解禁する方針」が盛り込まれたことだ。

今年5月14日、厚労省の有識者検討会で大麻草使用の医薬品容認案が話し合われた(写真・共同フォト)

これまで日本では、大麻草を原料とする医薬品の輸入が原則認められていなかった。それが、この報告書では「海外からの医薬品の輸入」に加え、国の承認を得れば、「医薬品の製造・販売、また国内での使用も認めるべきだ」と結論づけられたのだ。

この変化の背景について、全国紙社会部記者が解説する。

「昨年12月、国連の組織であるCND(国連麻薬委員会)で、『非常に中毒性が高く、乱用の恐れがある麻薬』のリストから、大麻を削除することが決められたのです。世界各地で医療分野での大麻成分の活用が進められていることをうけて、国連も認識の変更を迫られた。この国連での決定を背景に、日本でも医療用大麻をはじめとした議論が進められたというわけです」

大麻から抽出される成分には主に、幻覚作用を有する「テトラヒドロカンナビノール(THC)」と、抗精神作用のない「カンナビジオール(CBD)」などがある。使用するといわゆる「ハイ」になる効果があるのが、THCを含む「嗜好用大麻」(一般的にはマリファナなど)である。一方、抗精神作用のない後者にはリラックス効果や治療効果が認められ、うつや不安を押さえたり、不眠症にも効果があることが認められている。

THCもCBDもいずれも「医療用大麻」としての活用法が研究されているが、今回日本で「輸入・製造・使用を可能にすべき」と議論されている医療用大麻は、基本的にはCBDに限定したものである。

「CBDには痛みを和らげる効果もあることから、日本でも大麻由来の医薬品が認められるようになれば、がんの緩和ケアなどに活用・研究されることが期待されます」(ヘンプ製品普及協会)

世界的に医療・健康関係での利用が進んでいることから、日本でもようやく「医療大麻の活用」が現実味を帯びてきたということだ。早ければ来年春の法改正を目指して、今後、国会で活発な議論が行われると見られている。

タイでは医療大麻クリニックが開院するほど社会に浸透している(AFLO)

医療現場での利用に先行して、日本でもCBDを含有したオイル製品や食品などが「リラックス効果がある」といった理由から注目が集まり、流行の兆しを見せている(THCを含まない、大麻の茎・種を原料としたオイルや食品は日本で販売・購入が可能)。

医療用大麻の利用が広まり、日本国内での「大麻をめぐるイメージ」が変わることで、相乗的に食用・健康品としての大麻の利用も広まることが、関係者の間で期待されているのだ。

「私どもの協会も『大麻は麻薬と言われているけれども、環境に良い植物で、紙から医薬品までができる』というコンセプトで、活動を20年以上行ってきました。今回、国が医療用大麻の利用等を認めることになれば、日本国民の大麻へのイメージも変わってくるのではないかと期待しています」(前出・ヘンプ製品普及協会)

大麻を巡る「偏見」

大麻のイメージの変化とともに期待されるのが「栽培者の環境改善」だ。

前述の通り、古来日本では麻(大麻)は生活に欠かせない植物だった。庶民の衣服の原材料となっていた時代もあれば、一部の宗教儀式では欠かすことができない役割を果たしてきた。日本人の名前に「麻」の文字がよく使われていることからも想像できるだろう。

日本でも100年ほど前には大麻栽培が盛んになされていたが、戦後、日本社会で薬物使用が蔓延することを恐れたGHQの指導のもと、1948年に「大麻取締法」が制定されると、急速に日本の大麻生産が廃れていった。54年には約4万人いた大麻栽培者は、現在は30数名しかいないという。彼らが栽培するのはほとんどTHCを含まない種の大麻で、その多くは神事や民芸品などのために使われている。

彼らは国からの許可を得て大麻を栽培しているが、自治体によっては「盗難防止のため」という名目で栽培地を厳重に警護することや、監視カメラを設置することなどが求められるなど、栽培すること自体に厳しい制約が課されてきたのが現実だ。少し前までは「大麻を育てている畑に入ると酔ったような症状が出てくる」などといった不正確な情報が広められるなど、大麻栽培を続ける農家は苦しい状況下に置かれてきた。

そんな農家や大麻栽培の研究者らにとって、社会全体で大麻への理解が進むことは願ってもないことであるはずだ。

実は厚労省も、世相の変化に合わせてか、少しずつではあるが柔軟な姿勢を見せ始めている。

「今年9月、厚労省が畑への監視カメラやフェンスの設置といった厳しい規制について、各都道府県に『合理的な指導を超えた規制は緩和するように』という通達を出したのです。今後、農家と都道府県、厚労省の三者によって、大麻栽培のあり方について話し合われる見込みです。少しは緩和されるといいのですが…」(大麻農家の一人)

厚労省のホームページに掲載されている「警鐘文書」

「使用罪」導入への懸念

大麻に関する本格的な議論が行われる一方で、実は「大麻へのさらなる偏見が助長される恐れ」を感じている関係者も少なくない。医療用大麻解禁の流れとは矛盾するように聞こえるかもしれないが、先の厚労省の検討委員会では、その一方で「大麻を使用した場合、罰則を課すべき」とする「使用罪」の創設が提案されているのだ。

これには説明が必要だろう。前出の社会部記者が解説する。

「従来の大麻取締法では、あくまで『大麻を所持していた・栽培していた・譲渡した・輸出入した』人たちが適用の対象でした。ニュースを注意深く見ていればわかりますが、大麻関連で逮捕された人はみな、『大麻を使ったこと』が理由ではなく『持っていた・育てていた・渡した』が理由で逮捕されています。

そこに、今後は『幻覚作用をもつ大麻製品を使用した場合も逮捕の対象とすべき』という議論が起こっているのです。いままでは大麻を使用したとしても、それ自体に対する罰則がなかった。もし法改正がなされれば、今後はマリファナなどを使用したことによって、逮捕されることになります」

一聴すると、薬物乱用・拡散を防ぐ意味では「使用罪」があったほうがいいのでは、と思うかもしれない。しかし、専門家の間では、

「大麻は覚醒剤などとは依存性の高さが違う。使用で逮捕は罪が重すぎる」

という声が上がっている。立正大学法学部で、国内外の薬物政策に詳しい丸山泰弘教授が説明する。

「先進国の中で、『使用罪』を設けている国は多くありません。いくつか理由はありますが、使用罪を設けたからといって大麻の利用者が減少するというエビデンスがないことや、国際的には使用者への罰則ではなく、使用してしまった人の回復支援に力が注がれているからです。そもそも、『使用者のほとんどが、深刻な問題になるほどのレベルでは使っていない』というのが国際的な認識です。

それを考慮しますと、使用罪創設の議論は世界の流れに逆行していると言えます。

厳罰化をすれば使用者が減るのか。本当に使用者を減らしたいなら、使用してしまった人が二度と使用しないようにするための回復支援に力を注いだほうが効果的ではないのか‥‥そういった議論なく使用罪の導入議論が進められているのは、不可解です。『医療用大麻を導入するけど、大麻を自由に使っていいわけじゃないですよ。危険な薬物なんですよ』と言いたいがために、使用罪を導入しようとしているように思えて仕方ありません」

「使用罪」の導入の問題点を説明する丸山教授

「大麻使用罪」が創設されれば、いま以上に「大麻=悪」のイメージが定着するのは間違いなさそうだ。

「害悪」についての研究

大麻を巡る議論でさらに複雑なのは、幻覚作用のある大麻成分=THCに関しても近年では研究が進んでおり、依存性や常習性についてもさまざまな視点が提供されていることだ。

「大麻に害がないというわけではないが、どれぐらいの害なのか、社会的に許容できるレベルかどうかといった議論を、エビデンスに基づいて行うべきだと思います」というのは前出の丸山泰弘教授だ。

「幻覚性のある大麻も日本で使用できるようにすべきだ…というつもりはありませんが、大麻がとんでもなく有害であるかのような前提に立った議論では、本質を誤ると思います。

一例をあげると、元国連事務総長のコフィ・アナン氏(故人)らが名前を連ねる国際NGO『薬物政策国際委員会』が発表した、薬物や酒類などの有害性をランキング化したレポートでは、トータルな有害性では、トップはアルコールで、大麻は全体の8位。
(http://www.globalcommissionondrugs.org/wp-content/uploads/2019/06/2019Report_EN_web.pdf)。

また、英国の精神薬理学のナット教授を中心に組織された独立科学評議会が発表した『英国における薬物乱用の有害性』という報告書でも、最も有害とされたのはアルコールで、大麻は上から数えて8番目、タバコよりも『使用者への有害性は低い』とされています。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(10)61462-6/fulltext

それでも、アルコール全般を禁止しようという議論にはなりません。『飲んでもいいが、事故や犯罪を起こしたら罰する』という話です。一方で、大麻は『使用をした時点でダメ』となる方向に向かっている。

エビデンスベースで話が進んでいるなら納得もできますが、どうにもそのような議論がなされないまま、『使用罪の導入』や『大麻イコール悪』のイメージ強化が進められているのは不可解です」

こうしたデータは時として「嗜好品としての大麻解禁論」にも使われることがある。その議論には疑問を覚える人も、少なくとも「どの程度有害か」「どのくらい社会にリスクがあるのか」をしっかり議論したうえで、厳罰化や規制のあり方について考えるのがフェアだという意見があることは、認識しておくべきではないだろうか。

いまの風潮は変わるのか

現在、大型量販店や通販を利用すれば、日本でもCBD由来の健康食品やオイルなどを購入できることは先に述べた。医療用大麻の利用が認められるのもほぼ確実である。10年前と比べると、ずいぶんと「大麻」を巡る状況が変わっていることに気づくはずだ。

イギリスの一部ではCBD製品がこのような形で販売されている(AFLO)

一方で厳罰化の議論が進む中、「大麻」という言葉の響きは日本社会でどう変容していくのか。それは、日本に住む一人一人がこの問題を他人事ではなく「自分ごと」としてとらえられるかどうかにかかっているだろう。

世界の大麻を巡る状況を客観的に見ながら、「正しい情報」「正しいデータ」をもとに、どこまでを許容し、どこに「アウト」の線を引くのかについて、真剣な議論を始める時が来ているのではないだろうか――。

提供:メイヂ食品株式会社

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