東京五輪用のプリウスが続々中古車市場に…!意外な背景
東京オリンピック・パラリンピック期間中、東京・中央区にある「築地市場」跡地は、大会運営で使用されるトヨタ車などの車両の駐車場になっていた。
9月上旬、あらためてその場所を訪れると、五輪仕様にラッピングされた大量のトヨタ車が変わらずに置かれていた。「ゴールテープ」をイメージしてデザインされた赤い彩りが入った白いボディが特徴的だ。このクルマはこれからどうなるのか? 大半が「中古車」として販売されることになるのだという。
自動車ジャーナリストの加藤久美子氏が言う。
「東京五輪に提供されたトヨタの車両は約3700台。そのうち約2700台が中古車市場で販売されることになるそうです。車種としては初代『MIRAI』約500台、『プリウスPHV』約500台をはじめ、約9割がハイブリッドなどの電動車です。『トヨタ認定中古車』を扱う全国トヨタディーラー系の中古車店では、すでに販売が開始されています」
この”東京オリパラカー”がいま中古車市場で大人気になりそうだという。国内大手中古車店の関係者はこう明かす。
「今、コロナ禍の影響で新車の減産が続いているため、ただでさえ中古車が大人気なんです。価格も上がり、人気のクルマは在庫薄となっています。この状況で、五輪仕様のトヨタ車が3000台近くも市場に流れてくるのは大歓迎です。なにしろ、ほとんどが1000km以下でほぼ新車同様。状態も素晴らしく良いし、何より『即納』できますからね」
新型コロナウイルスの拡大により、東南アジアの工場が操業停止し、部品調達がままならず、日本国内の工場は減産で新車供給が遅れ気味なのである。それにより、活況となった中古車市場で、「即納できる新車同様の中古車」であることに加えて、「東京オリンピック・パラリンピックで使用されたプレミア感」がある”東京オリパラカー”は人気が出て当たり前だろう。
あるカーディーラーはこう明かす。
「払い下げスタート直後は5~6台は仕入れることができたのですが、現在は激しい入札合戦となっていて、なかなか落とせない状況です。もはや、販社間で奪い合いですよ」
9月上旬に埼玉県入間市にある大規模なトヨタ認定中古車店「カーロッツ入間」を覗いてみると、これから販売が開始されるであろう“東京オリパラカー”がズラリと並んでいた。トヨタ自動車直系の中古車販売店とあって、レクサスやアルファード、ハイラックスなど一般ディーラーでは扱わない五輪仕様の車種も揃っていた。ただし、値段はまだついていなかった。
トヨタ公式中古車サイト「GAZOO」で検索してみると、「東京2020オリンピック・パラリンピックの大会運営で使用された車両です」という謳い文句で、プリウスPHVの中古車が何台も出てくる。いずれも年式2020〜2021年、走行距離は1000km以下が中心で状態は極めて良好だ。
だが、価格は300万円前後でそれほど高くない。いったいなぜだろうか?
「東京五輪の使用車両としてのプレミアがある一方で、ボディに東京五輪のラッピングがしてあることで中古車としての評価が低くなるという矛盾が生じているんです。そのため、実際の販売価格にはあまり影響がないようです。それでも、人気はありますので、中古車サイトにアップされたクルマはすぐに情報が消えてしまうのが現状です。
ちなみに五輪仕様のラッピングを剥がさず、そのまま販売することがルールになっていると聞いています。ただ、ユーザーが購入した後に剥がすのは問題ありません。中には有料できれいに剥がせる業者を紹介してくれるディーラーもあるようです」(前出・加藤氏)
東京五輪に思い入れがあって、中古車を探している方なら、検討する価値は十分にある。







取材協力:加藤久美子写真:加藤博人 村田仁(築地市場跡地の俯瞰)