アメリカで見た「コロナで取り残されていく日本の悲しき姿」 | FRIDAYデジタル

アメリカで見た「コロナで取り残されていく日本の悲しき姿」

現地リアルレポート

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日本のいまだ見えない「コロナ出口戦略」

今年9月、アメリカ西海岸へ渡航した。新型コロナの影響で、約1年半ぶりの海外。アメリカ本土行きの場合、航空券は今も普通に買うことができるものの、コロナ前と違う点が多々ある。

出入国に関わる諸々の準備が必要であり、日本帰国後には「隔離」もある。旅行はもちろん、留学やビジネスでも海外渡航へのハードルは依然高いままだ。むしろ、渡航先によっては出国よりも帰国のほうが厳しい。

成田空港第2ターミナル出発フロア。閑散としていて、開いているカウンターも少ない。2021年9月撮影
成田空港第2ターミナル出発フロア。閑散としていて、開いているカウンターも少ない。2021年9月撮影

実際に日本を出国し、そして帰国してよくわかったのが「日本が世界から遅れている」という現実だった。日本国内にずっといても「そうだろうな」とは薄々感じてはいたものの、その予感が実体験して確信に変わった。

日本人が日本語で読んでも難解な、国の発表資料

出発前から「日本帰国時が最大の難関」と考えていた。というのも、メディアやSNSなどを通して、「日本人の帰国であっても書類不備で入国拒否され、強制送還される」との情報を耳にしていたからだ。その書類は、新型コロナ検査結果の(陰性)証明書のことで、厚生労働省の公式サイトには「検査証明は原則として厚生労働省の所定フォーマットを紙でご提示いただくようお願いいたします」と明記されている。

まず、この所定フォーマットは当然ながら、世界共通ではない。海外で、日本語が通じる医師や病院を探すのは容易でなく、たとえ見つけたとしても費用が相場より高額だ。また、アメリカでは、証明書や請求書などは、自分のメールアドレス宛てにデータ送付がいまや日常的。紙にいちいち書いてもらう習慣はもはや古い。

ロサンゼルス空港にある新型コロナ検査場。検査結果の書式は日本の所定フォーマットではなかったが問題なかった。検査費125ドル(書類込)
ロサンゼルス空港にある新型コロナ検査場。検査結果の書式は日本の所定フォーマットではなかったが問題なかった。検査費125ドル(書類込)

厚生労働省の公式サイトをさらに調べると、「所定のフォーマットを使用することが困難な場合には、任意のフォーマットの提出も妨げられませんが、『検査証明書へ記載すべき内容』が満たされている必要があります」とも書かれてあり、データの提示で問題ない旨も載っている。ただ、この情報はページをさらに先に進まないと出てこない。むしろ、最初にもっとわかりやすく明記すべきことだろう。日本人が日本語で読んでも、国による説明は非常にわかりづらい。

たくさんの「紙」を「人間」が何度も確認する旧態依然な体制

日本政府の「紙」への執拗なこだわりは、日本入国時にも痛感させられた。

機内で乗務員から「誓約書」「入国される皆さまへのご協力のお願い」が、紙で配布された。合わせて配られた以前からの税関に提出する「携帯品・別荘品申告書」も、相変わらず紙である。

そして、到着後に機内から出て、まずは陰性証明書をはじめとする必要書類の確認から始まり、抗原検査のための検体番号の付与も紙、質問票に関する説明も紙、さらに「日本へ入国・帰国する皆さまへ」という待機期間中のルールなどが載る分厚めの紙の冊子も渡された。とにかく紙が多く、先に帰国した知人から「紙を仕分けするファイルがあると便利」と言われた理由がよくわかった。

それらの紙を、「必要書類確認」「アプリ確認」などのブースごとに、人間が毎回目視でチェックする。1つ1つの確認自体はさほど時間がかからないが、広い空港内を次のブースに向かって延々と歩かされ、長距離フライトの後でもあり、正直疲れた。車椅子利用者だと優先レーンがあったものの、赤ちゃん連れや高齢者は一般と同じ動線で、傍から見ていて気の毒だった。こういった人々に、なんらか配慮できないものだろうか。

結局、到着から出口まで3時間ほどかかった。厳格な水際対策を行うのに異論はないものの、大量の「紙」と「人間」による個別の確認作業は要領がよいとは言えない。非デジタル化のリアル、国際空港でも典型的な日本の「お役所仕事」ぶりを見せつけられた。

入国者ホテル待機は全額国費負担、14日隔離短縮もまだ10日 

アメリカの場合、一部の州からの日本入国者に課していた宿泊施設での3日待機が、今後すべての州で解除されると、9月17日付で発表された。筆者はアメリカ滞在中にこの情報を受け取ったが、実際に解除されるのは20日0時から。日本帰国は19日夜で、たった数時間の差で3日待機となった。「あと数時間なのに」「ホテル待機途中で自宅隔離に切り替わらないのか」など、検疫ブースで尋ねる人を多く見かけた。結局、丸3日待機のち自主隔離だった。

筆者の待機場所は、空港のターミナルに隣接する「ホテル日航関西空港」だった。通常泊まると1泊1万円以上する
筆者の待機場所は、空港のターミナルに隣接する「ホテル日航関西空港」だった。通常泊まると1泊1万円以上する

この宿泊施設での待機は国の税金負担で、待機者に一切費用が掛からない。1日3回の食事がきっちり提供され、廊下に24時間警備員が監視していて客室から一歩も出られないものの、ホテルによっては客室が広くて大きなバスタブもあり、かなり快適に過ごせる。当初は客室が狭かったり、食事が貧相だったりという体験談も耳にしたが、かなり改善されたようだ。海外だと14日隔離すべて自己負担の国もあると聞いており、これを税金ですべて負担するのはやはり違和感を覚えた。

ホテル待機中は1日3回の食事が提供された。製造元は空港の機内食会社。味のレベルは高かった
ホテル待機中は1日3回の食事が提供された。製造元は空港の機内食会社。味のレベルは高かった

また、「日本はまだ14日も隔離しないといけないのか」と、アメリカ滞在中に会った人々に何度も聞かれた。国は、ワクチン接種者を対象に現在の自主隔離期間14日を10日に短縮する措置を近く始めると発表した。ただ、海外ではすでに隔離を免除する国・地域が増えていることを考えると、日本政府の対応はやはり遅い。

アメリカはPCR検査無料、屋内は厳しいマスク着用義務

アメリカ入国にも「出発3日以内に検査した際の陰性証明書」「誓約書」が必要だ。ただ、証明書の書式は自由で紙でもデータでもよく、誓約書もデータ対応しており、確認されたのは日本出発時のみ。新型コロナウイルス関連デジタル証明書アプリ「VeriFLY」も通用する。そして、アメリカでの入国審査では陰性証明書の提示は求められず、ワクチン接種や隔離に関する質問も一切なかった。 

アメリカのショッピングモールで、いたるところで見かけた「マスク着用義務」の看板
アメリカのショッピングモールで、いたるところで見かけた「マスク着用義務」の看板

そのアメリカでは、屋内はマスク着用が義務付けられている。もしマスクをしていなかったり鼻マスクだったりするとすぐに従業員や周りの人々からマスク着用するように注意される。地下鉄や路線バス、スーパーなどの入口にはマスクが置いてあって誰でも自由に使える。行列する場所では2メートル間隔で、ソーシャルディスタンスをしっかり保って並んでいた。

ロサンゼルスのスーパー「Ralphs」入口にあったワクチンの案内。時間内であれば予約不要
ロサンゼルスのスーパー「Ralphs」入口にあったワクチンの案内。時間内であれば予約不要

また、新型コロナのPCR検査は基本無料で、何回でも受けられる。ワクチン接種も空港をはじめ、街中の至るところで見かけ、これも無料。ロサンゼルスでは、地下鉄や路線バス(一部)の運賃も無料だった。ある店舗の入口には「NO MASK, NO ENTRY」の張り紙。白黒はっきりしているところが、日本との大きな違いだろう。

新型コロナ対策で先進国の動きに日本が付いていけていない 

世界の国・地域が、ワクチン接種を条件に、入国時の隔離などの規制を緩和する動きが加速している。日本でも今後、隔離期間のさらなる短縮や撤廃が進むのは間違いないが、懸念もある。

ロサンゼルスの人気観光スポット、サンタモニカ。外国人の姿はほぼなく、アメリカ人観光客が多くいて賑わっていた
ロサンゼルスの人気観光スポット、サンタモニカ。外国人の姿はほぼなく、アメリカ人観光客が多くいて賑わっていた

まず、日本入国時にあれだけ「紙」のチェックがあって手間がかかっていた手続きの簡素化が果たしてすぐ実現するのか。これから確実に増える入国者に対し、よりスムーズに対応できるのかもはなはだ疑問だ。一部でもデジタル化すれば一連の手続きは早くなるものの、ワクチンパスポートすらいまだ紙での発行のみというこの国で、果たして期待できるだろうか。

日本は、新型コロナ対策で国内での対応すら後手に回っている。世界の動きは早く、臨機応変に対応して動かないと、ますます取り残されるだろう。

■記事中の情報、データは2021年9月27日現在のものです。

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  • 文・写真(特記以外)Aki Shikama / シカマアキ

    旅行ジャーナリスト&フォトグラファー。飛行機・空港を中心に旅行関連の取材、執筆、撮影などを行う。国内全都道府県、海外約40ヶ国・地域を歴訪。ニコンカレッジ講師。元全国紙記者。

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