引退・白鵬　朝青龍との歴史的「泥酔でカラオケ手打ち」現場

幕内45回の優勝、横綱在位84場所、通算1187勝……。

いずれも横綱・白鵬（36）がうちたてた、史上最多記録の数々だ。偉大な力士が引退する。初土俵から20年。白鵬が現役を退く意向を持っていることがわかった。以前から痛め、20年８月に手術したヒザの状態が、限界に達しているという。全勝優勝となった今年７月場所後には、報道陣にこう語っていた。

「右ヒザがもうボロボロで……。言うことをきかなかった」

引退のキッカケは、ケガだけではない。

「出場を夢見ていた、東京五輪が終わってしまいましたからね。父親ジグジドゥ・ムンフバトさん（故人）は、モンゴル相撲の盟主として６度の優勝を誇ります。前回の東京五輪（64年）から４大会連続で出場し、メキシコ五輪（68年）ではレスリング代表として同国初の銀メダルを獲得している。白鵬には、五輪開幕式で土俵入りを披露し『（偉大な父と）同じ景色を見たい』という強い思いがあったんですよ。

すでに、引退後の準備を始めていますよ。自分の部屋の場所選定も行っているとか。候補地は銀座です。銀座には、白鵬が所属する宮城野部屋の元ちゃんこ番が経営する『H』とい店があります。白鵬もたびたび店を訪れ、こう話しているそうです。『こういう旨いちゃんこと素晴らしい空間で、弟子を育てるのがオレの夢だ』と」（相撲協会関係者）

土俵上で３秒間ニラみ合い

本誌は、たびたび白鵬の大物ぶりを象徴する場面に遭遇してきた。もっとも驚かされたのは、同じ横綱同士でライバル心が強く、性格も正反対と言われる朝青龍（41）との「手打ち現場」だ。両横綱は、土俵内外でたびたび険悪な雰囲気となっている。

「08年５月場所の千秋楽のことです。朝青龍が引き落としで白鵬を破った後、腰にダメ押し。怒った白鵬は朝青龍を右肩で押し返し、立ち上がってからも３秒ほどニラみ続けました。

以来、二人はお互いを避けるようになります。奉納相撲や豆まきなどのイベントで顔を合わせても、口をきこうとしません。08年８月に行われたモンゴル巡業では、わざわざ別々の飛行機に乗ったくらいです」（朝青龍の知人）

冒頭に掲載した写真をご覧いただきたい。そんな犬猿の両横綱が、男性を挟み満面の笑みで身体を寄せ合っている。写真が撮られたのは、朝青龍が５場所ぶりの優勝をきめた09年１月場所直後のこと。ロシア人女性など、20人ほどが招かれたパーティだ。参加者が振り返る。

「パーティが始まる前から、朝青龍は酒が回っていて上機嫌でした。普段はあまり声をかけない若い付け人たちにも、『優勝できたのはオマエたちのおかげだ』と殊勝なことを話していましたからね。シャンパンのボトルや500万円以上する『ロマネコンティ』を注文して、ガンガン飲んでいました」

会場の別のブースには、たまたま白鵬や日馬富士などのモンゴル人力士がいたという。

「モンゴルのタニマチが白鵬らに気づき、朝青龍グループに招き入れたんです。タニマチは両横綱に、モンゴル語で話しかけていました。おそらく『モンゴル人同士なんだから仲良くしろ』と、言っていたのでしょう。二人をソファに座らせると、なかば強引に引き寄せていましたから。

おかげで朝青龍と白鵬は、酒の勢いもあり『手打ち』ができたんです。しばらくモンゴル語で、笑いながら談笑していましたよ」（同前）

白鵬との関係を修復できたことで、朝青龍は気分が良くなったのだろう。会が始まって１時間半ほどすると、着ていたTシャツを脱ぎ、上半身裸になってカラオケを熱唱し始めた。

「確かフランク・シナトラの『マイ・ウェイ』や長渕剛の『乾杯』など、４～５曲歌っていたと記憶しています。身振り手振りを交えて歌うので、白鵬やロシア人女性たちは大笑い。最後は、優勝した朝青龍を胴上げしてお開きです。その頃には、空が白み始めていました」（同前）

圧倒的な度量で、先輩横綱を受け入れた白鵬。今後は親方として後進を指導し、自分の偉大な記録を塗り替える力士を育てる。