2ヵ月半白星ナシの田中将大…石井監督が気が気でない特殊事情
勝ちきれない。
7月13日のソフトバンク戦以来、2ヵ月半も白星から見放されている楽天・田中将大(32)だ。成績は9月28日現在、4勝6敗、防御率2.98。13年に24勝0敗、防御率1.27という圧倒的な結果を残した印象が強く、モノ足りなさを感じてしまう。9月26日のオリックス戦では7回1失点と好投するも、打線の援護がなく勝ちはつかなかった。
「良い投球ができていたと思う」
試合後、本人は報道陣にこう語ったが、気になることもある。制球が乱れ3個の暴投を記録。1試合3暴投は、田中にとって8年ぶりのことだ。前の登板(9月20日のソフトバンク戦)では、2本塁打を浴び自己ワーストの8安打5失点で、5回でマウンドを降りた。
「3月の練習中に、右ヒラメ筋(ふくらはぎ奥の筋肉)を傷めたことが影響しているのかもしれません。右脚は、メジャー在籍時から何度かケガしていますからね。踏み込みがたりず、ストレートが走っていない。直球で抑えられないため、多投する変化球を打者に狙われているんです。打ち取るためにより変化を大きくしようと、暴投が多くなっているんだと思います」(スポーツ紙担当記者)
過去の苦い経験
勝ちきれない田中に対し、石井一久GM兼監督も不安を隠せない。5失点したソフトバンク戦後には、「らしくなかったと思います」と珍しく苦言をていしているのだ。気が気でないのも当然だろう。昨オフ、ヤンキースからフリーエージェントになった田中を獲得したのは、全権監督である石井氏の決断によるのだから。
「楽天は田中と、年俸9億円の2年契約を結んでいるといわれます。途中でメジャー挑戦できる『オプトアウト権』のある、破格の好条件ですよ。石井さんが、ここまで大盤振る舞いをした背景には、特殊な事情があります。
石井さんには、過去の苦い経験があるんですよ。GMだった19年オフに、チームを最下位から3位に引き上げた当時の平石洋介監督を解任してしまった。石井さんは理由として『サインミスの多さや走塁を含めた意識改革が改善しきれなかった』と説明しています。平石さんは納得いかなかったのでしょう。コーチとして、ライバルのソフトバンクに移ってしまいました」(球団関係者)
石井GMが平石監督の後釜に据えたのが、ヤクルト時代の後輩で気心の知れた三木肇氏だ。ロッテから涌井秀章や鈴木大地などを獲得し、戦力も大幅にアップ。昨季は7シーズンぶりの優勝が期待されていた。ところが……。
「大型補強にもかかわらず、終わってみれば楽天はよもやの4位とBクラス。三木監督を留任させようとした石井GMに、ファンから批判が集まったんです。結局、三木監督は退任。後任もなかなか決まらず、石井GMが監督を兼任することになりました。三木谷浩史オーナーとしては、GMとして結果を残せなかったのだから、責任をとり監督としてやってみろという思いでしょう。
石井さんは自身で指揮をとらざるをえず、逃げ道を断たれた状態でした。求められるのは優勝しかありません。V奪還のためには、日本で圧倒的な成績を残した田中が絶対に必要だと考えたんです。その期待の大きい田中が勝ちきれず……。石井さんとしては、『大金をはたいて獲得したんだからなんとかしてくれ』と祈るような気持ちでしょう」(同前)
楽天は現在3位と、優勝争いから大きく後退している。石井監督の表情は曇るばかり。田中は以前の無双のピッチングで、チームを急浮上させられるだろうか。
写真:共同通信社