判明!北朝鮮が発射した極超音速ミサイルはとてつもない兵器だった | FRIDAYデジタル

判明!北朝鮮が発射した極超音速ミサイルはとてつもない兵器だった

「日本への脅威」次に撃つのは潜水艦発射型ミサイルだ!

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北朝鮮が今月、連続して発射したミサイルは全て「本物」だった! 衝撃の実験が相次ぐ北朝鮮の軍事状況、その背景を、軍事ジャーナリスト・黒井文太郎が解説する 写真:AFP/アフロ

北朝鮮の朝鮮中央通信は9月29日早朝、前日に行われたミサイル発射について「国防科学院が新しく開発した極超音速ミサイル【火星8】型の試射に成功した」と報じた。

極超音速ミサイルとは、今の軍事の世界でももっとも注目されている兵器のひとつである。北朝鮮が、この開発を実際に進めており、すでに初期実験段階にまで達していたのだ。

28日午前6時40分に発射された1発のミサイルについては、当日段階で韓国軍が「飛翔距離200㎞以下、最大高度およそ30㎞」「弾道ミサイルかは未確認」と発表していた。

ただ、韓国軍筋からの未確認情報として、聯合ニュースなどが「これまでとは違う高度や速度から新型ミサイルと推定される」「極超音速ミサイルの実験の可能性も」とも報じていた。北朝鮮側の発表により、その懸念が事実だったことが確認されたことになる。

極超音速ミサイルとは、なにか

米国がミサイル防衛を開発したことで、従来の弾道ミサイルでは迎撃される可能性が高くなった。そこでロシアや中国は、ミサイル防衛を掻い潜るミサイルの開発に力を入れている。

そのひとつが、マッハ5以上の高速で低い弾道で発射される極超音速滑空ミサイルだ。弾頭を滑空体にすることにより比較的低い高度を高速のまま長距離飛べるのが特徴で、敵に発見されにくく、軌道予測もされづらいため、迎撃が難しい。

さらに高度70㎞以下で飛べば、大気圏外用の迎撃ミサイルを搭載する現在のイージス艦では対応できない。ミサイル防衛突破の切り札ともいえる極超音速ミサイルだが、北朝鮮はそれを実際に開発していたわけである。

北朝鮮はすでに、敵イージス艦ミサイル防衛突破用に低高度を変則軌道で滑空するKN-23短距離ミサイルを開発しているが、まだパワーが弱く、速度・飛距離が充分ではない。イージス艦の迎撃ミサイルを掻い潜る高度で発射した場合、韓国および、せいぜい西日本の一部にようやく届く程度だ。

その点、たとえば北朝鮮がすでに開発している火星12141516といった中・長距離弾道ミサイルのロケット技術を応用し、そこに滑空体を搭載できれば、日本全土はおろか、グアム、アラスカ、ハワイ、さらには米本土まで射程に入る可能性がある。

「火星8」を写真から解析すると

極超音速ミサイル「火星8」の画像(「朝鮮中央通信」より)

今回、朝鮮中央通信が発表した写真からすると、火星8には、1段式液体燃料ロケットに、操舵翼のついた新型の滑空体が弾頭として搭載されている。

写真だけから直接、性能を推測するのは難しいが、今回は飛翔距離が200㎞以下と短いので、途中で実験失敗したのでなければ、短距離ロケットに滑空体を載せて初期段階の飛行実験を行った可能性が高い。(※ロケット部分がグアムを射程に収める「火星12」を短くしたようなものとも見えるので、仮にそうだとすると、すでに中距離ミサイル開発にトライしていて、今回は「あえて出力を落とした」か、あるいは「失敗した」可能性がある/9月30日追記)

朝鮮中央通信の当該記事によると、分離された極超音速滑空飛行戦闘部の誘導機動性と滑空飛行特性をはじめとする技術的指標を実証」とあるので、少なくとも滑空体の分離と初歩的な誘導は成功したものとみられる

また、初めて取り入れたアンプル化されたミサイル燃料系統とエンジンの安定性を実証」との文言から、ロケットのエンジンにも改良が加えられていたことが推測できる。

ただ、もちろんそれで終わりというわけではなく、まずは日本やグアムあたりまでを射程に収める中距離ミサイルを開発し、実戦配備を目指すだろう。さらに滑空体の制御や耐熱などの技術開発が進めば、いずれはICBM級のロケットと組み合わせて、米本土を狙うミサイルを開発していく計画だと考えられる。

新兵器が続々完成している

さらに、同記事の注目部分は次の部分だ。

「第8回党大会が示した国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画の戦略兵器部門の最優先5大課題に属する極超音速ミサイルの研究開発は、順次的かつ科学的で頼もしい開発プロセスに従って推し進められてきた」

つまり、極超音速ミサイルは、現在進めている5つの優先的な戦略兵器開発のひとつだというのである。

では、残りの4つは何かというと、2021年1月の第8回党大会報告で今後の課題として提示されたのは「核兵器の小型軽量化・戦術兵器化と超大型核弾頭生産」「1万5000㎞射程内への正確な弾頭誘導(※報告の別の部分で「多弾頭個別誘導」も言及されている)」「水中および地上固体ロケットICBM」「原子力潜水艦と水中発射型核戦略兵器」となる。北朝鮮はおそらく、このすべての開発を継続している。

このように、北朝鮮は2021年1月に内外に堂々と宣言した新兵器開発を、着々と進めている。今回のミサイル発射に対して「米韓への政治的牽制が目的」との見方もあるが、北朝鮮がこの9月に3回発射したミサイルは、1回目がまったく新型の巡航ミサイル、2回目が既存ミサイルの改良版の新たな発射方式で、3回目の今回もまったく新型の極超音速滑空ミサイルだ。すべてが新兵器の実射実験である。

北朝鮮のミサイル発射が米韓への牽制効果に実際になっていないことからしても、彼らは自らの戦力強化目標に必要な試験をただ粛々と実行しているだけのことであり、さらに今後も続けていくものと考えなければならないだろう。

堂々と核ミサイル戦力を強化する金正恩

もちろん今年1月に決まった目標が、そんな短時間で次々と実現できるわけもないので、かねて進めていた新兵器開発で、実現化の目途が立ったものを1月の党大会で発表したということだろう。実際、巡航ミサイル発射の際の北朝鮮側の声明では「過去2年間で開発されたもの」と言及している。タイミング的には、2019年2月のベトナム・ハノイでの米朝首脳会談の決裂を経て、北朝鮮が対米交渉を硬化させた後ということになる。

ちなみに金正恩委員長(現・総書記)は2020年5月の党中央軍事委員会拡大会議でも「核戦争抑止力をよりいっそう強化し、戦略武力を高度な臨戦状態で運営するための新しい方針」を指示している。国際社会が呑気に「北朝鮮の非核化」を語っていた間にも、北朝鮮は隠れもしないで堂々と公言しつつ、核ミサイル戦力の強化に邁進していたわけである。

次の発射実験では「日本を飛び越える」可能性も

では、北朝鮮は次に何をしてくるか?

今、いちばん準備が進んでいることが確認されているのは、前述した〝優先的な戦略兵器開発目標″の中の「原子力潜水艦と水中発射型核戦略兵器」のうちの「水中発射型核戦略兵器」だ。

北朝鮮はすでに2019年10月、潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)の「北極星3」の水中発射実験に成功しているが、その改良型「北極星4」とそのさらに改良型「北極星5」を軍事パレードに登場させながら、まだ発射実験を行っていない。その発射実験はおそらく、いつでも可能な状態になっているものと思われる。

北朝鮮が次にSLBM発射実験を行うなら、かなりの高い高度で打ち上げて日本海に落とすか、もしかしたら日本列島を飛び越えるかもしれない。いずれにせよ、北朝鮮が急ピッチで開発を進めている巡航ミサイル、極超音速滑空ミサイル、新型SLBMはすべて日本にとってたいへんな脅威となる兵器である。

日本政府は、引き続き注視が必要だ。

  • 取材・文黒井文太郎

    黒井文太郎:1963年生まれ。軍事ジャーナリスト。紛争地を多数取材。軍事、インテリジェンス関連の著書に『超地政学で読み解く! 激動の世界情勢 タブーの地図帳』(宝島社)など

  • 写真AFP/アフロ

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