電通が「男女バスケへの先行投資を本格化」その驚きの背景 | FRIDAYデジタル

電通が「男女バスケへの先行投資を本格化」その驚きの背景

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東京五輪の準決勝・スペイン戦で体を張ってボールを守る主将のDF吉田麻也(右)。これまで高かった日本代表の地位を守るには、10月のW杯最終予選で結果を出すことが求められる(写真:アフロ)
東京五輪の準決勝・スペイン戦で体を張ってボールを守る主将のDF吉田麻也(右)。これまで高かった日本代表の地位を守るには、10月のW杯最終予選で結果を出すことが求められる(写真:アフロ)

サッカーW杯カタール大会・アジア最終予選に挑む日本代表は10月7日にサウジアラビア代表戦(アウェー)、同12日にオーストラリア代表戦に挑む。9月28日にはこの2試合の招集メンバーが発表された。

1勝1敗で迎える森保ジャパンは強豪2カ国との対戦は本来であれば天王山だが、そんなムードは一切ない。本誌は長年、日本サッカー協会のマーケティングカンパニーである電通がバスケットボール日本代表のTV地上波放映権の販売を軸に「先行投資」を本格化させた情報をキャッチ。4年に1度のサッカーW杯最終予選の最中にしてなぜ、バスケットに注力するようになったのか。その謎を探った。

民放各局へバスケ放映権の「売り込み」があった

サッカー日本代表人気が大きな分岐点を迎えている――。9月からのW杯アジア最終予選ではホーム開幕戦(●0−1、オマーン)を落とし、2戦目の中国戦も1−0の辛勝。10月の2試合で1試合でも負けるようなことがあれば、これまで6大会連続で出場してきたW杯への道は一気に狭き門になり、森保解任論が浮上する。

森保一監督(53)からは「私の職には一戦、一戦に生きるか、死ぬかが懸かっている」という決意のコメントがあった。

日本サッカー協会関係者からは、こんなコメントまで耳に届いた。

「次回の2026年W杯から、出場国が現状の32か国から16も増えて48か国になります。それに伴って、日本が戦うアジア予選でも現行4.5枠から8枠に増えるんです。次回のW杯アジア最終予選は、今回の2次予選のようなレベルになる。ハラハラドキドキする最終予選は、今回がラストです。地上波で最終予選をTV生中継で見られることができるのもこれが最後でしょうね」

にもかかわらず、過去のアジア最終予選のような盛り上がりがない。なぜなのか。

そんななかでサッカー日本代表の人気を支えてきた、大手広告代理店・電通の「変容」をキャッチした。電通が男女バスケットへの先行投資を本格的に開始したというのだ。

電通は日本サッカー協会とは2001年から6年総額160億円以上、続く2007年からは8年総額240億円以上という日本スポーツ史上破格のビッグマネーで、スポンサーならび放映権ビジネスにおける一括契約を結んできた。熱狂的な人気にも後押しされてW杯出場の常連国にもなり、日本サッカー協会は他のスポーツ団体が羨むNO.1の稼ぎ頭にもなった。

東京・文京区には自社ビル(JFAハウス)を所有して、協会の経常利益が年間200億円を超える年もあり、その70%近くがA代表を軸にした「代表関連収入」で占められる年もあった。コロナ禍でなければ、サッカー日本代表は毎年150億円クラスを確実に稼ぎ続けられる、超優良なコンテンツだ。

「電通のすごいところはスポーツに対して『先行投資』ができるということ」―。

1993年、一大ブームを巻き起こしたJリーグ立ち上げから関わっている幹部の一人は続けて、こう明かす。

「当初はサッカー日本代表の放映権契約も確実に黒字になるというプロジェクトではなかった。代表がアジアで強くなり、W杯にも出られるようになった。ある意味、ラッキーもあって協会やJリーグの収入の大きな柱になった。それは電通に『スポーツ競技を育てていくんだ』という社風があったからです。これがなかったら、Jリーグも日本協会もここまで大きくなっていない」

電通は1981年、当時サッカー日本リーグがアマチュアだったにもかかわらず、世界クラブNO.1を決める「トヨタ杯」(現クラブW杯)を日本に招致。当時、トヨタ自動車が冠スポンサーとして世界大会の運営を各広告代理店へ公募していて、電通がトヨタと国際サッカー連盟(FIFA)の橋渡しを行い、実現した。

社会現象にもなったJリーグも1993年のスタート当初こそ、電通のライバル博報堂が独占して様々なマーケティング契約を結んできたが、2014年から電通と契約。国内だけではなく海外TV放映権の販売についても2020年から3年間の契約を延長している。今や、日本スポーツ界の人気スポーツで「日本代表」と名前がつくマーケティングは、ほとんど電通が関係しているといっていい。

その電通が今、『先行投資先』として目を付けたのが男女バスケットボールだった。ある民放関係者が明かす。

「今後、バスケの男女代表戦が地上波でTV放送されます。民放各局に放映権の売り込みがありました。サッカー日本代表の放映権と同じ手法です」

関係者によると、現在日本テレビと、年末の高校選手権の放映を長年続けているテレビ朝日の2局で「争奪戦」を展開中という。

「放映権料に関してはサッカー代表戦のように1試合1億円という金額ではない。W杯や五輪予選をゴールデンタイムで放映することもまずありえない。それでも電通が赤字覚悟の先行投資をするということです」(前出・Jリーグ幹部)

男女のバスケットには話題が多い。NBAで活躍する八村塁(上)と東京五輪で女子の銀メダル獲得に貢献したオコエ桃仁花(下、写真:アフロ)
男女のバスケットには話題が多い。NBAで活躍する八村塁(上)と東京五輪で女子の銀メダル獲得に貢献したオコエ桃仁花(下、写真:アフロ)

八村塁や東京五輪銀メダル戦士のオコエ…と話題満載

バスケには今話題が多い。男子には八村塁(23)=ウィザーズ、渡邊雄太(26)=ラプターズ=の2人の世界最高峰NBAプレヤーがいる。女子は東京五輪で堂々の銀メダルを獲得。メンバーの一人は、プロ野球楽天・オコエ瑠偉(24)の実妹・桃仁花(もにか・22)だ。

女子代表を指揮したトム・ホーバス監督(54)は、男子代表監督へ〝異例のスライド就任〟が決まった。90年に来日してトヨタ自動車(現・アルバルク東京)にアマチュア契約で入団。4季連続で日本リーグ得点王にもなった。トヨタ時代は東京本社でサラリーマン生活もしている。

日本人の夫人との出会いのきっかけをテレビのバラエティ番組で「六本木でのナンパ!」と告白。自宅では「日本語」で会話をする。「間違いなく、私は熱い人」「是非、応援してください。100%頑張ります」と、シンプルな日本語で選手を引っ張る、異色の代表監督だ。

バスケットボール日本代表もサッカーと同じく男女ともW杯と五輪がビッグイベントだ。女子のW杯が来年オーストラリアのシドニー(9月22日から10月1日)で開かれる。さらに、男子W杯(2023年8月25日から9月10日)では予選ラウンドがフィリピン、インドネシアそして日本(沖縄)での3か国で開催される。

「バスケで日本を元気にしたい」をキャッチコピーに、男子W杯イヤーの2023年には日本バスケットボール協会が創立100周年を迎える。代表チームを支える創設6年目のBリーグが、サッカー日本代表監督としてW杯で2度指揮した、現J3FC今治・岡田武史会長(65)を理事として招へいすることも決まった。

新たな「国民的人気スポーツ」が出来ることは歓迎すべきことだろう。バスケ界からしても「頼もしい援軍」であることは間違いないはずだ。

一方のサッカー業界はどうか。来年のサッカーW杯カタール大会に向けて「一戦一戦最善の準備をして勝利を重ねていきたい。本大会ではベスト8以上を目標にしている」(森保監督)。ということはアジア最終予選でもたついている余裕はない。10月の2試合を落とすようなことがあれば、サッカー日本代表離れにより拍車がかかるのは誰の目にも明らかだ。

その勝敗に、野球をのぞいた人気スポーツの「盟主交代」の命運がかかかっている、と言っても決して過言ではない。

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