『ハコヅメ』永野芽郁を覚醒させた山田洋次監督と『キネマの神様』 | FRIDAYデジタル

『ハコヅメ』永野芽郁を覚醒させた山田洋次監督と『キネマの神様』

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ドラマ『ハコヅメ』が高評価で終わった永野芽郁。本格派女優の階段を着実に登っている

夏ドラマで高視聴率を獲得した水曜ドラマ『ハコヅメ〜たたかう! 交番女子〜』(日本テレビ系)。朝ドラでヒロイン演じた戸田恵梨香と永野芽郁がW主演を果たし、大きな注目を集めたが、収録途中に永野芽郁が新型コロナウイルスに感染。8月4日、11日のオンエアを特別編に差し替えて放送するなど、現場は混乱を極めた。

「このドラマは、元警察官の秦三子による人気漫画『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』が原作。ワケあり元刑事・藤聖子(戸田)と天然新人・川合麻依(永野)の凸凹ペアによる”リアルな警察官あるある”が盛り込まれたお仕事コメディです。

実はこの漫画は、これまで何度も映像化の話があり、そういった意味でもファン待望の作品。特に永野演じる川合は、永野芽郁という女優の個性が生かされ、可愛さの破壊力も抜群。一言で言えば”当たり役”との声が上がっていました。それだけに7月23日に”新型コロナウイルス感染”が公表された時には衝撃が走りました」(ワイドショー関係者)

今作の永野の演技については、原作漫画を手掛ける秦氏は

「主人公の川合を描く時は、“表情のさじ加減”にいつも悩まされる」

と前置きした上で、

「川合を演じる永野さんは、息をするかのように、その場面での最善で最高の表情を出してしまう」

「心の動きを瞳の揺らめきだけで語ってしまう永野さんの演技が特に好き。私の画力では真似ができないので、そこはすごく悔しい」

と絶賛。確かに今回、永野が演じる川合は、演技することで生まれる違和感をギリギリのラインで抑え、ナチュラルに役を演じて魅せる。女優として、大きく成長した跡が見てとれる。しかし永野は、どの作品から新たなスタイルを手に入れたのか。

デビュー以来、常に“素”の自分で真っ向勝負するのが、女優・永野芽郁のスタイル。例えるなら甲子園の晴れの舞台で豪速球を投げ、三振の山を築く、まさにヒーローのような存在感を放ってきた。

「‘99年生まれの永野は、10歳で子役デビュー。ティーン雑誌のモデルを経て‘15年、鈴木亮平主演の映画『俺物語!!』でオーディンションを勝ち抜きヒロイン役を射止める。

さらに‘18年、朝ドラ『半分、青い。』(NHK)でも2366人の中からヒロインに選ばれ彗星の如く頭角を現しました」(前出・ワイドショー関係者)

人気漫画の実写化となった映画『俺物語!!』では、純情不器用な巨漢高校生・剛田猛男(鈴木)に想いをよせる大和凛子役を好演。鈴木演じる猛男よりもある意味、注目を集めている。

「漫画原作を読み、『自分と凛子ちゃんは少し似ているところがある』と気付いた永野は、オーディション会場に入ったら役作りよりも『“素”の自分を出す』ことに専念。また朝ドラ『半分、青い。』でも『自分は明るいことにすごく自信があったので、“素”のまま自由に演じられるのは鈴愛(ヒロイン)しかいないと思っていました』と“素”の自分への揺るぎない自信を口にしています。

またそんな永野を見て、脚本家の北川悦吏子も『スズメを見つけました。他にも素敵な人はいたけど、スズメという名前をつけた以上、遠くまで飛ぶ人が、いいと思いました。おっちょこちょいで、突拍子もない、規格外のスズメにぴったりです。永野さん、遠くまで飛んでください』と力強くエールを送っています。永野にとって“素の自分”こそ、最大の武器というわけです」(制作会社プロデューサー)

『半分、青い。』では、そんな永野の面目躍如たるシーンが登場する。それは‘18年7月4日に放送された第81話。漫画家を諦める決心を固めた鈴愛が、師匠・秋風羽織(豊川悦司)に想いをぶつける切ないシーン。永野の剛腕がうなる。

「私には翼がない。私は飛べない鳥です」

「飛べない鳥が飛べる鳥を見上げて、下を歩くのはごめんだ。人生に曇りの日が増える。私は自分の人生を晴らしたい。曇り空を晴らしたい。私は私の人生を生きる」

溢れる涙を拭おうともせず、噛みしめるようにセリフを口にする鈴愛。その涙は、まるで甲子園の決勝戦で敗れ去った高校球児の涙のようで美しかった。

しかしこの朝ドラ出演後に、永野は大きな壁にぶつかる。過酷な長丁場の現場を終えるタイミングで、チーフマネージャーが永野の元を離れたことも重なり、燃え尽き症候群が永野を襲う。

「当時、出演した番組『ホンマでっか!? TV』(フジテレビ系)では、『人生の楽しみが見つけられません』と真剣な悩みを告白。マツコさんに『朝ドラ終わった後だからじゃない?』と聞かれ『それもありますね』とすんなり認める一幕もありました。

また生物学者の池田清彦先生に『人生の楽しみを見つけられないのは、幸せの絶頂だってことだよね』と言われハッとする姿も印象的でした」(放送作家)

朝ドラという舞台で充実感(=幸せの絶頂)を味わってしまった永野芽郁。そんな彼女が燃え尽き症候群から抜け出すために、必要なサプリ。それがドラマ復帰作に選んだ菅田将暉主演の連ドラ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)だった。

「このドラマでギャラクシー賞テレビ部門個人賞に選ばれた菅田は、表彰式に登壇した際、永野の演技について『演技を超えた本物の何かになる瞬間がある。そういう瞬間が多かった』と話せば、永野自身も『(菅田演じる教師と向き合い)熱く温かい言葉を掛けてくれて、その姿に本当に救われて、無事に3ヶ月間終えられたと思います』と話しています。このドラマを選ばなかったら果たして永野は燃え尽き症候群から抜け出せたか、甚だ疑問です」(前出・制作会社プロデューサー)

自身も飛べない鳥になる可能性すらはらんでいた永野。そのピンチを乗り越え、“覚醒”し明らかに新たなステージに入ったと確信できたのが、今年8月に封切られた映画『キネマの神様』ではないか。

「松竹映画100周年記念作品と銘打たれ、山田洋次がメガホンを取る話題作。この作品で、助監督として撮影に明け暮れる若き日のゴウ(菅田将暉)に想いを寄せる食堂の娘・淑子役に永野は抜擢され、名匠・山田監督をメロメロにしています。特に主人公ゴウへの恋心をわかって欲しくて、いじらしい表情を浮かべて『バカ、鈍感』と言い放つ場面は、映画史に残る名シーンとなりました」(スポーツ紙記者)

9月24日で22歳を迎えた永野。10月29日には令和最大のベストセラーを映画化した主演映画『そして、バトンは渡された』が公開される。『キネマの神様』が宿った永野芽郁のピアノ演奏を心待ちにしているのは、私だけではあるまい。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO近藤裕介

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