事件から3年半“償い”なし…新潟7歳女児殺害犯の「悪逆非道」 | FRIDAYデジタル

事件から3年半“償い”なし…新潟7歳女児殺害犯の「悪逆非道」

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事件が起こったのはいまから3年前(撮影:幸多潤平)
事件が起こったのはいまから3年前(撮影:幸多潤平)

「えーマジすか。マジかー。えー、ちょっと待って。ちょっと待って」

「生きてる間のわいせつには、心当たりすらないんだよなー。だから、なおさら分かんないんすよね。うそだろ〜」

9月30日の東京高裁102号法廷。証言台に置かれたモニターで再生されているのは、取調べ時の録画映像だ。

映像では黒い半袖Tシャツを着て、いかにも若者らしい言葉遣いで警察官の調べに答えている小林遼被告(27)。この日の法廷では、映像よりも幾分痩せた体に黒いスーツを着用し、坊主頭にマスク姿で静かに映像を見つめていた。

事件は2018年5月7日に起こった。小林被告は新潟市で小学2年生だった女児Aさん(当時7)を殺害し、その遺体を線路に遺棄したとして、殺人などの罪に問われている。

起訴状によれば小林被告は同日15時20分ごろ、新潟市西区において運転中の軽自動車を、下校中のAさんの臀部に後ろから衝突させた。転倒したAさんを抱きかかえ軽自動車の後部座席に乗せたのち、その頸部を圧迫して気絶させ、車を発進。

15時28分ごろから59分ごろまでの間、同区の通称『なぎさのふれあい広場』駐車場にて、Aさんの下半身に触れ、わいせつ行為に及ぶ。意識を取り戻したAさんの頸部を約5分以上にわたり圧迫して殺害した。その後22時25分ごろ、JR東日本越後線の線路内にAさんの遺体を遺棄。のち走行した電車にその遺体を轢過させ、頸部を切断させたとされる。

2019年に新潟地裁で開かれた一審の裁判員裁判において小林被告は、生前のAさんへのわいせつ行為、及び殺意は否認していた。対する検察側は、小林被告には殺意はあったと主張。「まれに見る悪逆非道な犯行」として死刑を求刑したが、新潟地裁が言い渡したのは無期懲役の判決であった。だが地裁は小林被告に犯行当時殺意があったことや、生前のわいせつ行為は認定した。

この一審判決を不服として検察・弁護側ともに控訴を申し立て、昨年9月から東京高裁にて控訴審が続いている。

この日は被告人質問に先立ち、逮捕直後の警察官や検察官による取調べの様子が記録された映像が再生された。1時間半にわたる映像の中で、2018年逮捕当時の小林被告は冒頭のようにAさんに対する生前のわいせつ行為をしばらく認めていなかった。

一方、調べ担当の警察官は、Aさんの遺体に生体反応があったことから、生前になんらかの暴行があったと小林被告に伝える。映像ではしばらくそうした応酬が続いていた。

警察官「遺体の痕跡さ、何度も言ってるけど、生きてる間に何かあったのは間違いないんで」

小林被告「そかぁ〜〜〜。いや〜。絶対生きてるんすよね? え〜ちょっと待って、え〜ちょっと待って。うっそ。はぁ……」

ところが終盤では「生前のAさんへのわいせつ行為」と認めた。Aさんの月命日である、犯行翌月の夜のことだった。

「ランドセルおろさせて、次にズボンとかずり下ろします。完全に脱がせないで、膝ぐらいまでずりおろして、えっとー、このタイミングでえっと、XXX(性器)に指入れる」(取調べ映像での発言)

映像には一連の流れを生々しく説明する様子が映る。性器を表す放送禁止用語が幾度も調べの中で飛び交っていた。さらに映像終盤では検察官の取調べで、認めることにした気持ちを問われ「月命日の話とかされてー、あー、言ってねえことあるなー、いずれ言わなきゃいけないんだよなーと、ちょうどいいタイミングでもあるから、言おうというか、ここで言ってしまおうというか、そういう気持ちで言いました」と明かしてもいた。

しかし、のちに「生前のわいせつ行為はなかった」と供述を翻す。映像上映後に行われた被告人質問で、弁護人にその理由を問われると、小林被告は次のように説明した。

「調べ官から『動かない証拠がある』と言われ続け、私としても、覚えてないのにやっているのではと、そのように発言してしまいました。長い間、調べ官との話が長かったというの、ありまして、感情持ってしまったのと、絶対動かない状況があると言われて抵抗できなかった」

控訴した理由についても「生前のわいせつ行為や殺意に関して、私の事実と異なっている。正していただきたい。それを正した上で罪を償いたい」と自分の主張を“正しく”認定してほしいからだと語った。

そんな小林被告は、被告人質問の冒頭で立ち上がり、検察官の横に座る被害者参加代理人や遺族に向かって深々とお辞儀をしながら「このたびは私の身勝手で、巻き込んでしまい、癒えることのない深い傷を残して申し訳ありません!」と謝罪している。

事件から3年 遺族に謝罪文を一度も送っていなかった

彼の謝罪の気持ちが本物なのか、被告人質問の終盤で、被害者参加人である遺族が問いただした。

遺族「冒頭の謝罪、一審のときとほぼ同じですね、そのようなパフォーマンスが伝わると思いますか?」
被告「えー、難しい。そのように思っています」
遺族「一審の判決後、裁判長にかけられた言葉、覚えていますか?」
被告「はい、気持ち、伝わらないと。被害者のことを考えなさい、など。よく叱られた、というのが、正しいのかわかりませんが……」
遺族「『毎日、何度でも土下座してください』と言われたことは覚えてますか?」
被告「覚えてます、はい」
遺族「拘置所でも毎日、自慰行為をしていると、謝罪が足りないので、毎日何度でも土下座してください、と言われていましたね。やってますか?」
被告「拘置所では手を合わせるのみです、すいません」

公判では遺族に謝罪の姿勢を見せるが、いざ法廷を離れれば、謝罪が遺族に伝わるような行為は全く行うことなく、自慰行為に耽っていたという。事件から3年が過ぎたが、謝罪文を一度も送ったことがなく、また事件にかかる損害賠償で被告に約8000万円の支払いが決定しているにもかかわらず、一度も支払いに応じていないことも、遺族の質問から明らかになった。

遺族「あなたの方から何もないので、私どもで預金口座を調査したところ、あなたの口座がふたつ判明しましたが、ひとつは残高ゼロ、もうひとつが190円。口座は誰が管理しているんですか?」
被告「記憶が確かなら母です」
遺族「であれば、0円というのは、事件後に引き出して、あなたのため、自分たちのために使ったんですか?」
被告「あーえっと、そこまで私は把握していないので、急ぎ確認します」

遺族「平気で嘘をつき、反省が乏しいあなた。『被告をサポートし、共に苦しんで償う』と言いながら、何もしない、平気で嘘をつく。それがあなたの親。誰が信用すると思いますか?」
被告「おっしゃるとおりです。可及的すみやかに確認ししかるべく……」

被告がいくら弁解しようと、謝罪の気持ちのなさが否応なしに浮かび上がる。窮地に助け舟を出すためか、弁護人が再度立ち上がり「最後にこの場で伝えることを伝えてください」と促すと、被告は立ち上がり、遺族に向き直って土下座した。

「度重なる御無礼申し訳ございません。言わせてください、申し訳ございませんでした。命をかけても一生かけて謝罪し償い続けます。これで許してもらえると思っていません……申し訳ございませんでした」

こう苦しげに言い終わったところでスッと立ち上がり、再び証言台の前に座った被告に、弁護人がひときわ大きな声で聞いた。

「あなた、泣いてるんですか?」

しかし被告は泣いてはいなかった。

一体これは何なんだと、傍聴人ですら、壮大な茶番を見せつけられたような気持ちになるやり取りを、遺族はどう受け止めただろう。被告は法廷で謝罪の言葉は述べながらも、実際には謝罪のために何も動いていない。自分が取り返しのつかない事件を起こしたこと、そして遺族が小林被告やその家族に対してまであらわにした憤りをまるで認識していないかのように見えた。

年末には検察・弁護側双方による弁論が開かれる見通しだ。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

  • 撮影幸多潤平

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