岸田内閣に安倍元首相が送り込んだ「原発推進」の懐刀 | FRIDAYデジタル

岸田内閣に安倍元首相が送り込んだ「原発推進」の懐刀

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総選挙まで1ヶ月、当面「短期限定政権」となった岸田政権は、元気がない。支持率はかなり低い。内閣の顔ぶれは冴えない。党の実権を握ったのは麻生派の甘利明幹事長。金銭疑惑はスルー。官邸の実権は経産省出身の嶋田隆政務秘書官が握った。

 短期限定の「岸田内閣」が始動した(写真:AFLO)
 短期限定の「岸田内閣」が始動した(写真:AFLO)

岸田首相は、閣僚について臨時国会前から人事を進め、矢継ぎ早に発表した。そして、間髪入れず「解散総選挙の10月19日公示、10月31日開票日」を発表。おおかたの予想より早くなった総選挙に、与野党とも慌てている。霞ヶ関の官僚たちもまた同じ。とくに、投票用紙を海外在留邦人に届けなければ憲法違反となる総務省は右往左往している。岸田はなぜ、こんなに急いだのか。

退官後いくつもの肩書きをもった元官僚を起用した理由

首相秘書官はこれまで7人態勢だったが、この7月、菅政権下で8人態勢になった。今回、8人のうち「筆頭」をつとめるのが嶋田隆氏。岸田首相の懐刀となった嶋田秘書官には、大きなミッションが課せられているという。

嶋田は開成高校から東京大学に入学、工学部を卒業し、旧通商産業省入省した。官僚として極めて順調なキャリアを経て2019年に退官。その後「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に特別顧問として名を連ねた。

退官後は、ドリームインキュベータ社特別顧問から、ネットアセスメント社代表取締役社長、西武ホールディングス顧問、富士フイルムホールディングス取締役、読売新聞大阪本社監査役、読売新聞西部本社監査役、日本テレビホールディングス監査役、日本テレビ放送網監査役、ドリームインキュベータ取締役と、多くの肩書きをもってきた。

「こうした役職の数々は安倍さんの声掛かりで得られた『食い扶持(ぶち)』です。各団体から報酬がありますから、それらを合計すると、退官後もけっこうな年収になっていたはずです。安倍晋三元首相の手下として『生かして』おいたわけです」(官邸スタッフ)

安倍が仕込んだ、岸田の懐刀

東京大学工学部計数工学科卒、次官経験者の首相秘書官というのは、きわめて「異例な人事」(報道各社)だが、それもこれも、嶋田が現役時代に手がけた「原発再稼働」のため。嶋田は「原発推進」のために退官後も強力な政治力で確保されていた人材なのだ。それが、岸田政権で「実った」というわけだ。

「官邸入りした嶋田秘書官は、今井尚哉·安倍首相秘書官の推薦だった。と同時に、経産省に強いコネクションをもっている甘利幹事長の強力な推しがあったようだ。甘利は、嶋田を使って岸田政権に原発推進をさせようとしているのです」(内閣府キャリア)

東日本大震災によって東京電力福島第一、第二原子力発電所が被災、放射能漏洩事故を引き起し、数十年がかりの廃炉作業が進められている。問題は溜まり続ける汚染水の処理だ。菅義偉の前政権下で「汚染水は、十分に処理した上で海洋放出」という方針が決定された。昨年初めから経産省が現地に赴き、沿岸の地元漁業関係者と詰めの段階となっている。

「嶋田さんはまず、この処理水についてIAEA(国際原子力機関)のお墨付きを得て海洋放出を目指します。その後、電力ネットワークの再編を岸田首相に進言し、東西電力のネットワーク再編に着手。エネルギー行政は大きく動きだします。

そして、東電管理では稼働できないままとなっている新潟県柏崎刈羽原発に東北電力と日本原電を参入させ、MOX燃料による原子力発電を進めます。

つまり今回の官邸人事は、原発再稼働、原発立て替え(リプレース)のため。嶋田秘書官の異例の起用、正体はこれなんです」(経産省キャリア)

原発推進か、政権交代か

辣腕といわれた今井尚哉内閣官房参与でも、原発推進を達成できなかった。嶋田はそれを推し進めるのに欠かせない、強力な官僚OBだ。今井は、岸田政権でも引き続きエネルギー政策を担う。そして閣内には、原発推進派の急先鋒である山際大志郎経済再生担当相が配置されている。

「今井はとにかく『安倍命』。そして今井の武器は『なんでもやる』ことなんです。NHK政治部の記者にハンディカメラを持たせ、安倍の独占取材をさせたこともある。安倍に『政治』をさせるためには、なんでもやる。なりふりかまわないんです。世論を二分する原発再稼働と憲法改正は同時には出来ないので、経済再生に繋がるエネルギー安定化は岸田政権にやらせ、満を辞して安倍再々登板のときに憲法改正を、というシナリオが今井の頭の中に描かれているんでしょう」(保守派エネルギー族有力議員)

甘利幹事長は原発リプレース議連の最高顧問。岸田政権下で、日本の原発問題は大きな転換をするかもしれない。が、岸田内閣の支持率は低迷している。

「いわゆるハネムーン期としては、異例の低い支持率です。過去を振り返ると、内閣発足時の支持率が低くなり、底を打った政権の『次の選挙』に、政権交代が起きています。今の状況はこれとよく似ている」(政治部記者)

「とりあえずの安定感」「薄味」と言われる岸田内閣だが、そのミッションは原発推進と憲法改正の露払い。じつはかなり濃い口の過激な内閣かもしれない。

  • 取材・文岩城周太郎

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