沖縄初のプロ球団で15人自主退団…背景に「コロナ禍の給与減額」 | FRIDAYデジタル

沖縄初のプロ球団で15人自主退団…背景に「コロナ禍の給与減額」

きょうドラフト会議。プロ野球参入を目指していた琉球ブルーオーシャンズに生じた球団幹部と選手の「不信」

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今年4月、福岡県内で野球教室を開いた琉球ブルーオーシャンズ。チームを代表してあいさつする清水直行監督(写真:共同通信)

沖縄初のプロ野球チームである琉球ブルーオーシャンズが10月1日、15人の自由契約を発表した。9月まで27人いた選手が、10月1日までに21人の自由契約を発表し、現時点では6人しか残っていないことが判明した。自由契約になった選手のなかには、報酬未払いや減額に対する球団幹部の対応に対する不信感を募らせ、自ら退団した選手が少なからずいたという。今からわずか2年前の2019年7月、日本プロ野球機構(NPB)へ新規参入を目指して発足したばかりの球団に何が起こっていたのだろうか。

「去年から金銭的事情に苦しめられまして…。僕たちは年俸制で総額を月で割った金額が毎月振り込まれる形でした。ただ、コロナの影響もあって去年の途中から報酬の減額が続きました。今年は5月につづき、8月も未払いでした。

5月の未払い分は6月にまとめて振り込まれましたが、満額ではありませんでしたし、8月以降の分はまだです。ただその理由を僕たちから北川球団社長や監督の清水さんに理由を聞きたくても、納得いく説明をしてもらえなくて…」

在籍していた選手の一人はため息交じりにこう明かした。

2019年7月に発足した琉球ブルーオーシャンズは千葉ロッテでエース右腕として活躍した清水直行氏を監督に据え、シニアディレクター兼打撃総合コーチに楽天イーグルス初代監督の田尾安志氏を招いた(田尾氏は去年で退団)。選手では、ヤクルトで活躍した左腕・村中恭平やDeNAやソフトバンクの中軸を担った吉村裕基(ともに昨年退団)をはじめ、一軍経験者を複数獲得。特定のリーグに属さない独自路線を打ち出し、プロ野球の二軍や独立リーグ、社会人チームと試合をしながら力量をあげ、3年後のNPB参入をめざしていた。

沖縄には高校野球で甲子園優勝経験がある沖縄尚学や興南などがあり、毎年春にはプロ9球団がキャンプを張る。加えて、球団発足から約半年が経過した2020年の年始に、報道番組で王貞治・ソフトバンク球団会長が間口を広げることで野球熱を高めることを目的とした「16球団への拡張構想」を打ち出し、琉球ブルーオーシャンズがNPB入りを目指す気運は高まっていた。

全国に26チームある独立リーグは地域で結成されたチームが独自に試合を開催し、2009年以降、NPB同様、プロの位置づけとなったが、選手の報酬は月10万前後で契約期間も6カ月前後と金銭的には恵まれているとは言い難い。しかし、琉球の選手はプロ野球経験者でなくても月額20万円で12カ月契約と、他の独立リーグのチームより4倍近い好待遇でスタートした。しかし球団の活動が本格的にはじまった2020年2月以降に、日本全土で新型コロナウイルスの感染拡大がひろがり、異変がおきはじめた。前出の選手が続ける。

「当初は活動できない時期でも給料が入っていたので、ありがたいなと思っていました。でも、コロナの影響もあって去年の4月から報酬の減額が続きました。当初、4月、5月分は事前に『減額します』という通知が来ていたのですが、そのうち、通知が来ないのに減額された状態で振り込まれて、後から減額通知の書類が来たこともありました。活動が再開して練習や試合ができるようになっても、結果的に減額される月もでてきたんです」

新型コロナは2年が経過しようとする今も、収束のメドはたっていない。したがって、琉球は予定していた試合や練習が、新型コロナの感染状況次第では実現しなくなることもあらかじめ想定し、2年目がはじまる今年2月、選手に以下のような覚書を交わした。

<緊急事態宣言等により完全に活動ができない場合、その期間の報酬を100%減額するものとする。または移動制限等により興行試合が出来ない場合は、その報酬を50%減額するものとする>

新型コロナの蔓延が原因で全体練習や開催予定の試合が中止になったら、給与カットされる、ということだ。この覚書にサインをしないと、春のキャンプに参加できない、という徹底ぶりだった。

選手たちが2月のキャンプイン前に結んだ覚書(左)と6月23日に全選手に送られた給与減額の「通知書」(右)。

選手の不信感が頂点に達したのは6月分の減額を通達されたときの球団幹部の対応だった。別の選手がこう明かす。

「沖縄では5月23日から緊急事態宣言が発令されましたが、練習は続けられて、試合も予定取り実施されたんです。5月22日~6月9日の期間中には、広島の二軍、巨人の三軍、埼玉西武二軍、千葉ロッテ二軍と練習試合をする山口・関東遠征も行われました。ただその遠征が終了し、沖縄に戻った後に、球団から<興行試合の開催ができないため、6月分の給与を減額する>との通知書を選手全員が受けたんです」

本誌は、選手全員に一律で出された該当の通知書を入手。6月23日付で北川智哉社長から出されたことになっている。

文書にはこう書かれている。

<尚、6月分につきましては、沖縄県緊急事態宣言発令中に伴い、興行試合の開催ができないため、6月10日より契約書および覚書の減額を適用させていただきます>

この通知をもらった選手の多くは、頭の中に「???」がついた。5月22日から関東遠征に行き、試合も消化。沖縄から戻った後、通知が来るまで予定されていた数回の全体練習は消化できていた。

「フルに出勤しているにも関わらず減額」という通知だ。「減額の理由が納得いかない」と選手側は、シーズン途中からGM兼任となった清水監督に説明を求め、さらに「このままでは練習はできない」と要望を出し、清水監督もその要望に応じて、一時的に全員が集合した状態の自主トレで数日間、練習をすすめた。

この自主トレ期間中に北川社長と直接電話で話した選手も何人かいた。「減額の理由を聞きたい」と話しても北川社長は「球団としては説明を尽くしている。お前(電話した選手)と議論するつもりはない」と明確な解答は得られなかった。さらに「お前ら何様のつもりなんだ。社長に説明しろっていうのはおかしい」「練習しないなら、カネは払わない」などど高圧的に言われ、選手たちは全体練習を再開する運びとなった。

再開後の全体練習でミーティングが開かれ、球団が示す「選手の報酬減額理由」を、清水監督の口から聞いた。聞いた選手はこう解釈している。

「平時なら問題なく使える施設や球場を、緊急事態宣言下なので特別に使わせてもらっている状況。そういう状況は“緊急事態による影響を受けている状況”にあてはまるので、報酬をカットする、という説明でした」

本誌が入手した「年度初めの覚書」「6月23日付の通知書」の文言と比較しても、上記のように解釈するのは難しい、と言わざるを得ない。実際、ある選手はこう明かす。

「(覚書や通知書には)書いていないけど、会社側が(全体練習再開後のミーティングで説明されたような)そういう解釈でいるから減額します、と言われたら、選手としてはなすすべないですよ。この一件で、『もう(改善を求めても)無理だな』とあきらめる人が増えたと思います」

コロナ禍での球団運営の苦しみは想像を絶するものがあるだろうが、しかし、そのしわ寄せが選手たちに向かうのは、納得できるものではないだろう。選手の前にほとんど姿を見せない琉球の北川智哉球団社長はどう受け止めているのだろうか。弊サイトの電話取材に、こう明かした。

――今年は5月分に続き、8月分の給料が滞っているようですが間違いないですね。
「契約書、覚書に従って私たちはやっています。ただ守秘義務もありますので、内容の詳細についてはお答えできません」

――報酬減額の理由は何ですか?
「緊急事態宣言、というのがひとつのポイントになります」

――緊急事態宣言下でもチームは山口、関東に遠征に行き、沖縄に戻った後も通常の練習を消化できていた。それでも減額されることに選手は納得していないようですが…。
「選手たちが何を言ってるか、我々はわからないんですが、全て契約書通りにきちんと支払いしておりますので。あの、契約書、覚書通りですね」

――選手が大量に退団し、9人残らない状況についてはどうお考えですか?
「今、GM(清水監督)が話ししておりますので、私としてはGMに任せております。私がでしゃばるつもりは一切ございません。(9人集まらないことは)想定していませんし、トライアウトの人数もかなり来ていると聞いているので、20名以上のメドは立っている。今年以上の活動をできると踏んでいます」

選手との契約交渉の場についた清水GM兼監督はこう明かす。

「今の状況は、僕も一歩俯瞰して見たときに『大丈夫か?』という状況です。今後、会社としてどういう方針で選手を獲得していくのか、ということについて、球団と話さなければいけないと思っています。その方針が決まれば、ここに従って自分で納得をして、選手と同じように自分で選択していきたいなと思っています」

来季も契約するのか、という質問については「今は契約期間ですので仕事をさせていただいてます、としか言えません」と語るにとどめた。

実際、10月3日の再始動日に練習場に姿を見せたのは4人だけだった。球団を離れたある選手はこう明かす。

「こういうことになるのであれば、『お金がありませんので、給料は払えません』とはっきり言われたほうが、まだよかった。できればこの球団で少しでも長くやりたかったんですけどね…」

NPB参入をめざしていた球団で生じた、経営トップと選手の亀裂。信頼回復には時間がかかるかもしれない。

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