飛行機満席なのに観光地ガラガラ!?「リベンジ旅行」で広がる格差 | FRIDAYデジタル

飛行機満席なのに観光地ガラガラ!?「リベンジ旅行」で広がる格差

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旅行する人できない人の「不公平」「格差」が広がっているワケ

新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言とまん延防止等重点措置適用による移動自粛の要請、不要不急の外出が制限されたことなどにより、誰もが気軽に旅行できない状況がしばらく続いた。そして、9月30日をもって全国的に解除された。

10月に入り、「飛行機が満席だった」という声を多く聞くようになった。確かに、空港や駅、各地の観光地などで以前より観光客の姿が目につく。一方で、ホテルやレンタカーのスタッフによると「まだそれほど予約が急に増えたという実感がない」との声も多い。

じゃあ、いったい誰が旅行しているのかという疑問がわくが…。

旅行業界に詳しい関係者によると「今、旅行している人たちはOTA(※)でホテルや旅館の予約をし、飛行機や鉄道なども自分でネット予約するか、もしくは車で、自分たちで動いている」という。 ※Online Travel Agent(オンライン・トラベル・エージェント)のこと。例えば、楽天トラベルやじゃらん、エクスペディアなど

つまり今、旅行をしている人たちは、OTAを駆使してホテル・旅館や飛行機などを個人手配で予約できる旅慣れた人。その人たちが、まだ「リベンジ旅行」で値上がりする前の状況で、先にどんどんお得に旅をいち早く満喫しているというわけだ。

一方、旅行客が動き出しているのに、行政の対策や対応はまだ慎重姿勢を崩さない。国による旅行喚起キャンペーン「GoTo トラベル」の再開はいまだ未定だ。その間にますます旅行における「不公平」「格差」が広がっている。

土日祝日の集中を避けるため、平日の利用を促す制度見直しを行う意向を明らかにした岸田文雄首相。ネット上には「割引なぜ平日だけ?」「平日働いている人たちにとって不公平だ」という不満の声が溢れた(写真:アフロ)
土日祝日の集中を避けるため、平日の利用を促す制度見直しを行う意向を明らかにした岸田文雄首相。ネット上には「割引なぜ平日だけ?」「平日働いている人たちにとって不公平だ」という不満の声が溢れた(写真:アフロ)

ANAやJALなどは今、10月下旬から11月にかけての増便を次々発表

飛行機は今、週末を中心に満席の便が相次いでいる。実は、これには理由があり、その1つが、航空会社が新型コロナによって「減便」している影響だ。発着便を欠航したり、機材を小型化したりしている。 

飛行機は、使用機材や乗務員などの手配もあり、一度減便を決めるとすぐに増便することが難しい。ANAやJALなどは今、10月下旬から11月にかけての増便を次々発表してはいるものの、現在は限られた便に予約が集中して満席となるケースが後を絶たない。機材を大型化しても100~200席程度の座席はすぐ埋まる。

緊急事態宣言やまん延防止等重点措置適用の解除時期が未定だった9月中は、航空会社より「10月分、欠航・減便のお知らせ」が続々届いていた。それが政府によって9月28日夜に全面解除が正式決定され、その日付が2日後の30日。すぐに対応するのに明らかに無理がある。

ちなみに、イギリスでは数ヵ月前からロックダウン解除までのロードマップを国民に提示し、それに合わせ各業界も準備を進めていた。 

沖縄・那覇発着便は、一時期よりは欠航が少なくなったものの、まだいくらか残っている
沖縄・那覇発着便は、一時期よりは欠航が少なくなったものの、まだいくらか残っている
那覇空港のチェックインカウンター。平日午前だったが、行列ができていた
那覇空港のチェックインカウンター。平日午前だったが、行列ができていた

沖縄のメインストリートはいまだ閑散、ホテル予約も微増に留まる

10月半ば、筆者が大阪・関西空港から沖縄へ向かった際、先月と比べて明らかに観光客の姿が多かった。中には、石垣行きの飛行機に乗る修学旅行生のグループも見かけた。

平日の日中に関わらずほぼ満席で、その大半が観光客。若者や中高年が多く、搭乗ゲートの前はとても賑やかだった。同日に羽田空港を利用した人から「チェックインカウンターがだだ混みだった」とも聞き、那覇空港に着くと多くの観光客がいた。

ただ、沖縄本島のホテルやレンタカーは、価格相場はそれほど上がっていない。那覇市の国際通りに立ち寄ると、土産店などは以前より開いていても、観光客の姿はまだら。それよりも、シャッターに「閉店」と貼られた店舗や、すでに更地となった場所がけっこう目に付いた。中には、10月1日を過ぎても臨時休業を続ける店もあった。

沖縄のメインストリート、国際通り。緊急事態宣言解除後に再開する店舗は増えたが…
沖縄のメインストリート、国際通り。緊急事態宣言解除後に再開する店舗は増えたが…
国際通りに目立つ「テナント募集」「閉店」の貼り紙。長引く移動や不要不急の外出自粛要請が確実に影響している
国際通りに目立つ「テナント募集」「閉店」の貼り紙。長引く移動や不要不急の外出自粛要請が確実に影響している

国による旅行支援対策はまたもや遅れ、いまだ実証実験の段階

動き出した旅行客の一方で、国や自治体などの対策や対応はまたしても後手に回っている。

昨年中断した「GoTo トラベル」は、いまだ再開時期は未定。一方、GoTo トラベル再開に向けて「ワクチン・検査パッケージ」の実証実験での旅行ツアーが、10月8日から始まった。ワクチン2回接種もしくはPCR検査などの陰性提出が参加条件で、全国の旅行会社11社で38のツアーが実施予定。観光庁から10月13日、36都道府県のホテル・旅館108か所でも、同様の条件での宿泊における実証実験を行うことも発表された。

那覇空港でもPCR検査を受けられる。しかし飛行機利用、ネット事前予約、支払いは現金のみと、とても便利とは言い難い
那覇空港でもPCR検査を受けられる。しかし飛行機利用、ネット事前予約、支払いは現金のみと、とても便利とは言い難い

ただこれも「いまだに実証実験の段階?」という疑問が残る。

例えば海外だと、先出のイギリスでは、一連の実証実験は、国民へのワクチンの接種とほぼ同時進行で進められた。ワクチン接種済みの観客6万人がマスク無しのロックコンサートに参加したのが2021年5月26日で、その時点で必要回数の接種を終えていた人は全国民の約35%だった。実証実験の結果を踏まえ、重症化率や致死率なども合わせて検証し、次の対策を打ち出してどんどんルール化している。イギリスは海外からの旅行客を徐々に受け入れ、ワクチン接種完了だと隔離もほぼ不要で、マスク着用義務もないためコロナ前に戻りつつある。

昨年の「GoTo トラベル」では、旅行需要への効果は全体的にはあったものの、一部の高級な旅館やホテルにと利用が偏り、業界内外から不満が続出したのも記憶に新しい。

イタリアでは、長距離移動ではワクチン証明が必須。EU内では6月末から「デジタル・グリーン認証(ワクチンパスポート)」がスタートしている(写真:アフロ)
イタリアでは、長距離移動ではワクチン証明が必須。EU内では6月末から「デジタル・グリーン認証(ワクチンパスポート)」がスタートしている(写真:アフロ)

さらに、岸田文雄首相は10月16日、今後のGoTo トラベルについて「平日利用を促す集中的補助と中小事業者への重点的な配分」を打ち出す方針との発言が報道された。特に、旅行での利用が集中する土日祝を避け、空いている平日利用を促進するのはコロナ禍ではいちおう理にかなっている。しかし、ネット上ではこの発言を聞いて「割引なぜ平日だけ?」「平日働いている人たちにとって不公平だ」という声もかなり多く、賛否両論となっている。

不公平や格差が広がっていると感じることは、結局のところ、国による政策や対応が行き当たりばったりで、大半の国民が納得できないまま行われているからに他ならないだろう。またしても後手に回っている感が否めない。

■記事中の情報、データは2021年10月23日現在のものです。

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  • 文・写真(特記以外)Aki Shikama / シカマアキ

    旅行ジャーナリスト&フォトグラファー。飛行機・空港を中心に旅行関連の取材、執筆、撮影などを行う。国内全都道府県、海外約40ヶ国・地域を歴訪。ニコンカレッジ講師。元全国紙記者。

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