自民党「想定外の静岡補選大敗」で漂う政権交代へのヤバイ危機感 | FRIDAYデジタル

自民党「想定外の静岡補選大敗」で漂う政権交代へのヤバイ危機感

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参議院静岡選挙区補選で、自民候補が大敗した。24日に行われた参院静岡、山口の補欠選挙は、どちらも自民党議員の辞職に伴う補選だ。「政権交代」を目指し共闘する野党にとっては、大きな弾みになる勝利となった。

「新総裁のご祝儀で自民圧勝」のムードは一変した。各地で勢いを増す野党共闘で、政権交代の可能性が日に日に高まっている
「新総裁のご祝儀で自民圧勝」のムードは一変した。各地で勢いを増す野党共闘で、政権交代の可能性が日に日に高まっている

総選挙を1週間後に控えた各党にとって重要な意味をもつこの補選で自民は、山口はとれたものの「まさかの」静岡敗北。党内に衝撃が走った。

「政権選択選挙であった参院補選。静岡県民の判断を厳粛に受け止めたい」

期間中、2度にわたり静岡入りした岸田文雄首相の表情からは、敗戦のショックが隠せない。得意のポーカーフェイスがついに保てなくなったようだ。当落の結果が出た24日の夜、遠藤利明選対委員長もこう言った。

「結果をしっかりとらえる。ぎりぎりの衆院選を戦っている皆さんと力を合わせ、岸田文雄総裁を中心に一致団結して戦い抜く」

本来なら敗戦の原因を分析、反省すべき立場の選対委員長だが、今や補選を落としたからといって「反省」などしていられない。「ここは力づくで総選挙をやっていくしかない」という、ある種やぶれかぶれに近い発言に聞こえる。

看板が変わっても中身は同じ

「両選挙区とも、もともと自民党議員の辞職に伴う補選ですから、負けは許されなかった。静岡県は、8小選挙区中6選挙区で自民が議席を持つ地の利で押し切れるはずだった。が、大逆転負けとは。投票結果が出た瞬間、何が起こったのか飲み込めず、言葉を失ってしまった」(自民党選対関係者)

地方選挙区応援中の自民党有力代議士が電話取材に応え、岸田政権への危惧を吐露した。

「今の空気感は、大敗した今夏の都議会議員選挙の空気と酷似している。菅執行部から岸田執行部に移行した自民党だが、本質は安倍・菅政権から何も変わっていないんじゃないか、多くの有権者が、そんな印象を持っているようだ。

地方を回っていても、どれほど声を張り上げて街宣活動をやっても手応えが感じられない。自民党支持層の動きが鈍いんだ。

一方で、有権者には、立憲・共産・社民・れいわ連合にも手放しで行くわけにはいかないという躊躇も感じる。前政権の疑惑や自民党の行きすぎた保守思想への不信不安があるものの、本気で政権を取るために野党共闘を決めた立憲民主党にも不安はある。有権者は、投票先を見失っているのではないだろうか」

この代議士は、行き場を失った票が維新に流れ自民にとって消極的支持票となり、結果、自民票が伸び悩んでいるのではないかとも語っている。

常識が覆り、有権者の「気持ち」が読めない

1週間前、静岡補選に特化したサンプル数3000人を超える大がかりな世論調査を自民党が行った。この調査では、自民公認の若林支持が44%台、立憲・国民推薦の山崎支持は38%台と、自民「若林」が6ポイント近くのリードを保っていた。しかし、有権者の多くが「山崎」を選んだ。

菅政権下の補選3連敗、東京都議会議員選挙、横浜市長選挙の敗北など、この1年に行われた選挙を、自民党はことごとく落としまくっている。選挙に先立つ、各政党やマスコミによる選挙区情勢調査は、このところまったく当てにならない。有権者と政治に大きな乖離が生じ、これまでの「常識・定石」は、通用しなくなっているようだ。

自民党支持団体の関係者が言う。

「新型コロナによって有権者の政治への見方は変わってきた。各種支持団体の動きも変わった。例えば、コロナ対策で矢面に立った医師会は、上層部と若手メンバーの意見が合わず一枚岩になっていない。農協のなかにも、野党支持を表明しているグループがある。これは、小泉進次郎前環境相が党農林部会長のときに農協改革を推し進めた反動もあるだろう。

こうした支持団体、友好団体に大きな変化が生じたため、集票マシンが機能しなくなり、自民党に思ったような票が集まらなくなったんです」

民意がみている「真実」とは

しかし、理由はそれだけではない、というのはある宗教団体関係者だ。

「河野太郎政権を望んだ世論に反し、自民党は岸田政権を押しつけてきた。また、引退した河村建夫元官房長官の長男、河村健一は山口ではなく、北関東ブロックの比例32位になった。この2つの例に象徴されるのは『反主流となったその瞬間から、徹底的に排除される』という執行部の不寛容です。これが、あからさまに行われるようになった。昔の自民党は、党内の右にも左にも幅広い闊達な議論が許されたのですが、今はそうじゃない。有権者は、そんな殺伐とした自民党を嫌悪し始めているのではないのかと思いますね」

「選択制夫婦別姓」の否定、「LGBT法案」の見送り。岸田首相が総裁選でしきりと語った「令和版所得倍増」は、選挙公約に記載すらされなかった。国民は「自民党は変わった」と評価するのか、それとも変わらぬ与党に交代を求めるのか。投票まであと4日だ。

  • 取材・文岩城周太郎

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