ミスiD2021「シリア×日本のダブル」はんな18歳が語る夢
18歳。可能性は無限大
「8月が誕生日で18歳になりました。今度、はじめての選挙なんです。すごく楽しみ。ちゃんと勉強して、考えて、ぜったい投票に行きます!」
こう話すのは「ミスiD2021」のファイナリストで、「そのあまりに鮮烈な原石の輝きに…UP NEXT賞」に選ばれた「はんな」ちゃんだ。
「はんな、は本名です。英語の英って書くんです」
審査員に「女の子が誰しも憧れるプリンセス感溢れるルックスが圧巻」と評された。お人形のように大きな瞳をくるくるさせて、こちらの目をしっかり見て話す。
神奈川県藤沢市の「海までちょっと」のところに家族と暮らしている。
「海へは自転車ですぐです!」
というので、自転車を借りて一緒に海に向かった。住宅街を抜けて走っていく。小田急江ノ島線の踏切を越える。ちょっと短いスカートから伸びた長い脚が、ぎゅんぎゅん自転車を漕いで進む。なかなか海に着かない。もう無理…と思いかけた頃、視界が開けて海にでた。
「自転車、きつかったですかー? すみません! 大丈夫ですか?」
はんなちゃんにとって「ちょっとそこまで」の距離は「自転車で20分くらい」なのか…。
「でも、いつもならもっと飛ばして10分くらいで着いちゃいます! ここのビーチ、大好きなんです。友だちと来たり、近いからひとりで来ることもあります。向こうに見えるのが江ノ島です。島っていっても橋で繋がってるから、このまま自転車で行けますよ!」
さらに15分ほど、ゆっくり自転車に乗って、江ノ島を案内してくれた。
「今はお客さんが少ないけどここは観光地なので、ふだんは人がいっぱいいるんです。だから、江ノ島まで来るのは、ちょっと遠征です」
風で髪がくちゃくちゃになっても気にしない。ノーメイクだからメイク崩れもしない。自転車を降りてそのまま撮影できてしまう美少女っぷりに驚く。そして、健脚にも。
普通の子だって本気を出せば、案外遠くまで行ける
「母はシリア出身です。はんなっていう名前は、中東にもある名前なんです。日本人の父がつけてくれました。とても好きな名前です。
演じることや歌うこと、踊ることが大好きで、将来はそういう職業につけたらいいなと思って、ミスiDには自分で応募しました。
応募した時の自己PRで、『自分はとくべつ個性的ではなくて、普通だと思う。けど、普通の子だって、本気を出せば、案外遠くまでいける』って書いたんです。そうしたら、審査員の方たちから『普通であることは素敵なこと』って認めてもらえて、すごくうれしかったです」
はんなちゃんはこう言ってはにかんだ。拙いけれど自分の言葉で伝えようとする姿が、強くも見えるし、なんだかいじらしくもある。
「母の国、シリアには3度、行ったことがあります。シリアの公立小学校に通っていたんですが、小1が終わった夏に日本に帰って、その翌年に内戦が始まりました。それから10年経った今も、内戦が続いているんです。シリアで遊んでいた場所が爆撃で破壊され、そのころの友だちは、生きているかどうかもわからない。争いそのものだけではなく、難民の問題も深刻です。
わたしは、シリアのことも政治のこともよく知りません。日本で平和に暮らしてきて、ニュースで知ることしかできなくて、でも…」
言葉を探して、選んで、一所懸命に話す。
将来の「夢」のために
「親ガチャって言葉が話題になりましたけど…。誤解を生むかもしれないですが、『国ガチャ』も、あると思っていて。日本に生まれて育って、日本で暮らしている時点で、世界のハードな国よりずいぶん幸運かなと思います。2歳上の姉とふたりで、シリアのニュースに触れるたび『わたしたち、シリアにいたらどんなことになってるだろう』って話すんです。『日本にいられてよかったね』って。でも、じっさいシリアに暮らしている人がたくさんいるし、シリアだけじやなくてアフガニスタンとか、命が日々危険に晒されている国がいっぱいありますよね。日本にいるわたしにできることはないかと、考えています」
「遠い国」のことを他人事ではなく、幼い頃の経験と想像力とで、ぐっと近くに感じているのだ。
「将来の希望は、映画女優になることです。でも、もうひとつ夢があって。
今、高校3年で、受験勉強中です。言語の勉強をしたいんです。語学っていうより、言語そのものに興味があります。言葉って、文化とかルールの基本ですよね。外国、違うルールの国のことを知って、遠い国と日本をつなぐ仕事がしたいです。
でも、知らないことだらけで。学ぶことは好きなので、もっともっと、しっかり勉強したいです。だからこの取材のあとは、もう外出も控えて、受験勉強に集中してがんばります! あ、選挙だけは、ぜったい行きますけど!」
はんな18歳。その「あまりに鮮烈な原石の輝き」は、彼女自身の手で、ぐんぐん磨かれ、輝きを増しつつあるのだ。