「家族崩壊」「死んで返すしか…」スルガ問題「被害者」の悲痛な声 | FRIDAYデジタル

「家族崩壊」「死んで返すしか…」スルガ問題「被害者」の悲痛な声

今年5月に発足した「スルガ銀行不正融資被害者同盟」。ダメ物件を購入させられたと主張する彼らは、一様に多額のローン返済に苦悩している。平穏な日々が一変してしまった人々の実情とは

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今年9月末にスルガ銀行東京支店前で行われた「被害者同盟」によるデモの様子

シェアハウス「かぼちゃの馬車」の事件で世間を騒がせたスルガ銀行が、新たな局面を迎えている。

今年3月、シェアハウス問題は約882億円の借金帳消しという異例の条件でオーナー側との和解が成立した。しかし今度は、アパート・マンション融資に伴う「スルガ銀行不正融資被害者同盟」が5月に発足。約300人がスルガ銀行に対して、約805億円という巨額の賠償請求を行っているのだ。

「被害者同盟」の訴えについては本誌10月22日号で詳報した。現在、スルガ銀行との間で交渉を続ける「被害者同盟」のメンバーは、一様に極めて厳しい経済状況に立たされており、「3億円の借金を背負った」、「家庭が崩壊した」、「生命保険で支払うしかない」といった悲壮な声は取材を重ねるほどに出てきた。スルガ銀行の融資を受けてマンション・アパートを購入したことを境に、人生が一変してしまった人々の実像を追った。

横浜市在住の中村さん(仮名・40代)は4人の子宝にも恵まれ、絵に描いたような幸せな家庭を築いていた。大学卒業後一部上場企業に就職。順調に出世し管理職となり、年収も1000万円近い。

ところが、年金問題への不安から’15年にスルガ銀行のマンションローンを組み、静岡県内に一棟マンションを購入したことで、家族の風景は変わっていった。

「スルガ銀行からの融資額は約8800万円。ところが蓋を開けてみると購入時の説明とはまったく事情が異なり、レントロール(貸借状況一覧表)は偽装に偽装が重ねられていました。全12部屋で毎月78.8万円以上の賃料が見込め、ローン弁済は月46万円だから十分採算がとれるとの話でしたが、実際は空室ばかり。更に1階部分は構造耐震の問題があることまで発覚し、大規模な修繕をしないと貸し出しできない状況で、修繕に5000万円近い持ち出しが必要だったんです。

そんな物件ですから部屋はわずか5室しか埋まらず、ローン46万円に対して家賃収入は26万円。自分の給料から毎月の赤字分を補填し、子供達の学費を捻出することすら苦しい状況なんです」

中村さんが抱える負債は年々膨れ上がり、現在は1億円を超える。スルガ銀行の担当者に4.5%という金利の見直しを訴えたところ、教育資金の名目で金利7%という、さらに高金利のフリーローンを提案されたという。4人の子供の学費を捻出するため、藁にもすがる思いで契約書に判を押した。この蟻地獄のようなローンの連鎖が、一層生活を逼迫させている。

「今は食費すら満足にわたせていません。自己破産の道も考えたが、契約時に妻が連帯保証人になっている関係で、妻も一生債務という十字架を背負っていかなければなりません。上は大学生、下は小学生の子供がいますが、経済的な状況で子供を学校に通わせることすら厳しい。

当然妻や子供たちからは毎日のように責められて、次第に家族の会話は消えていった。親族に頼み込み1000万円近いお金を借りて何とか返済にあててきましたが、それが原因で親族からも見放されました」

「被害者同盟」の各メンバーの主張に共通するのは、レントロールや個人資産といった項目で契約時に大きな改ざんが行われていた、ということだ。投資は最終的には自己責任であるが、そもそも提示された物件などの情報に大きな齟齬があり、返済不可能な額の融資を“受けさせられていた”とするなら、正常な判断は困難だろう。自己責任という一言で片付けられないところに、この問題の根深さがある。

「もし許されるのであれば、これまでのごく普通の生活に戻り、もう一度希望を持てる人生を送りたい。私の願いはその一心です。死をもって団体信用生命保険の死亡保険金で解決するしか、もう道は残されていないのでしょうか……」

東京都郊外の一軒家に住む香川さん(仮名・50代)は、’16年に大分県内のアパートを2棟、北海道にもマンションを購入して合計約1億6000万円の融資を受けた。香川さんは、これらの物件も当初の説明からまったく異なる条件の“ダメ物件”だった、と主張する。3棟合計で年間500万円以上の赤字を垂れ流しており、財産差し押さえの危機に立たされている。

大手金融機関に勤める香川さんと病院勤務の妻の収入を合わせると、世帯年収は約2000万円。私大医学部に在籍する長男と、医学部を目指し浪人中という次男がおり、元々はかなり裕福な家庭だった。そんな一家においても、1500万円のローンの返済に追われる余力はなかった。

「長男からは『せっかく入った大学を辞めなくてならないのか』、次男からは『進学は諦めたほうがいいのでは』と言われています。妻からは『この家を売らなくてはならないのか』と詰められていますが、返す言葉がなく、自責の念にかられる生活が3年以上続いている。投資は自己責任といえど、数字の誤魔化しや嘘で塗り固められた融資を広げてきたスルガ銀行側に罪はないのか。全国には私のような思いをしている人が、何千人といるんです」

購入した大分の物件の入居率は当初説明では約70%だったが、実際はその半分にも満たなかった。現在はわずか16%という悲惨な状況だ。何度も担当者を詰問した香川さんだが、担当者からは驚きの提案が行われたという。

「少しも悪びれる様子なく、『この2棟を担保にいれて、北海道の新しいマンションに投資して回収しましょう』と言われたんです。行員も現地をチェックしていて、一部上場企業であるスルガ銀行のお墨付きの物件です、と繰り返すんです。私も麻痺しており、回収を焦る気持ちもあり、契約しました。

ところが、それも同じようなレントロールの偽装が行われていた。後でわかったのは、私の口座の預金は実際のものより、2000万円も多く改ざんされていたことです。本来であれば通らない融資を通すために、不正に書類を書き換えていた。以降担当者は梨の礫で、スルガに問い合わせてもまともに取り合ってくれません」

銀行お墨付きの3つのアパート・マンションと引き換えに、2億円近い負債を追った香川さんの家庭は瞬く間に崩壊していった。現在は借金の矛先が家族へ向かうことを避けるため、ある決断を迫られている。

「家族への影響を避けるため、妻とは離婚し、財産もすべてわたして自己破産するしか道はないでしょう。もし賠償が認められなければ、家も手放さなければなりません。30年近く金融の世界で生きてきて、銀行という組織でこんなことがまかり通るコンプライアンスが実在することが未だに信じられません」

香川さんはそう言って、天を仰いだ。

「被害者同盟被害」の中には、違法性を指摘し返済を停止している者もいる。’16年に千葉県・松戸市にマンションを2棟購入した外資系保険会社で働く田中さん(仮名・50代)は、2年半にわたり返済を行っていない。サブリース契約の物件は、売主から約180万円の家賃保証の支払いが約束されていたが、売り主が破産。それにより家賃保証がなくなり、弁護士を通して情報開示を求めると次々と物件の瑕疵が明らかになったという。スルガ銀行からの融資額は3億円。当然返済を求められるが、弁護士を通して偽装を追及した上で、返済停止の姿勢を貫いている。

「もし仮に返済を行っていれば、年間の赤字は800万円にも及びます。購入の際も実際の物件の評価額と融資額に大きな乖離があり、不安でした。そこにスルガの支店長から『絶対に大丈夫な物件です。安心して投資下さい』と念押しされた。ところが実際は大規模修繕が必要なほど劣化しており、家賃収入は半分にも満たなかった。首が回らないので評価額から大幅に値下げして売ろうとしても、問い合わせすらこないような物件なんです。

スルガ銀行側も物件の瑕疵を認め、金利を1%に下げ、元本を21万円分下げると提案して来ましたが、到底納得いかない金額です。当初は何度も自殺を考えましたが、スルガの担当者や仲介業者の顔を思い出すと悔しくて自殺なんかできない。その一点だけを拠り所に生き恥を晒しながらも闘っています」

今でこそ徹底抗戦の覚悟を決めたが、ローン返済のために貯金は底をつき、別の金融機関からも借金を重ねていた。だが、それでも赤字は修復するどころか更に膨らんでいったのだ。そんな負い目もあり、初めて家族に話したのは今年の4月だった。二人の子供からは呆れられ、妻は泣き崩れたという。

「老後の資金はすでに尽きたことも打ち明けました。妻は将来に悲観し、怒りながらもどうしようもない状況を把握して、泣いたまま起き上がれなかった。今の返済停止状態がいつまで続くかわかりませんが、税金、老後や相続を考えるといずれにしろ自己破産は免れません。私自身も本業の保険販売に身が入らず、年収も半額以下になってしまいました。私のケースは『かぼちゃの馬車』とほぼ同じで、スルガ側も非を認めている。賠償請求に応じられない理由があるのなら、しっかりと明示して欲しい。それだけですね」

「被害者同盟」は弁護団と連携し、根気強くスルガ銀行と交渉を続けていくつもりだ。彼らが再び平穏な日々を取り戻すことはできるのだろうか。

今年9月末にスルガ銀行東京支店前で行われた「被害者同盟」によるデモの様子
今年9月中旬には「被害者同盟」の集会も開かれ、約150人が参加。今後の交渉について話し合った
  • 写真小川内孝行(1枚目、3枚目)、田中俊勝

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