「毎日一杯こってり食べる」『天下一品』社長の情熱の保ち方 | FRIDAYデジタル

「毎日一杯こってり食べる」『天下一品』社長の情熱の保ち方

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木村会長が毎日通うスパリゾート「あがりゃんせ」から見える琵琶湖の風景。グランピング場を作るため、2年半かけて湖を”削る”許可をもらった(撮影:村瀬秀信)
木村会長が毎日通うスパリゾート「あがりゃんせ」から見える琵琶湖の風景。グランピング場を作るため、2年半かけて湖を”削る”許可をもらった(撮影:村瀬秀信)

初日に売れたラーメンがわずか11杯でも、やくざにどつかれ流血しても、天下一品創業者の木村勉氏は鶏ガラべースのこってりスープ一筋50年。お客さんの舌を魅了しながら全国233店舗(2021年11月現在)、年商約200億円のラーメン店へと成長した。

しかし時代は、飲食冬の時代へ。約2年前から世界的に新型コロナウイルスが大流行し、大量閉店に追い込まれた大手チェーンなどに比べれば被害は遥かに少ないが、天下一品も同じく我慢の時間を強いられることになった。

「50年やってきた歴史でもこんな緊急事態は、はじめてのことやね。コロナ自体はもう誰も抑えることができひんのやから、政治家のせいにばかりしてもアカンのやろうけど。やっぱりリーダーが前に出て対策せなアカンかったんやろな。周囲の顔色ばっかり窺ってないで、わたしが大臣なら棒持って『外出るな』言うて尻叩いて回るよ。

もちろん民主主義の国やからそんなことしたらアカンのは当たり前なんやけど、いざという時はリーダーが行動せな。何十兆、何百兆円という金がもう死んでしもうてますやん。みんながんばっとるんや。一生懸命やっています。それが間違った努力にならへんよう、リーダーが方向を示してやらなアカンねん」

“正しい努力”

それは全国に233(2021年11月現在)ある天下一品の店内に書があるように、木村会長が生涯大事にしてきた座右の銘である。

「どんなに頑張ったってそれが間違った努力やったら、これはナンボしたってアカンねん。たとえば昼に一生懸命仕事してやり遂げた。その夜に加減できなくほど酒を飲んで翌日に欠勤しよったら、昼の努力は間違った努力になってしまう。みんながんばっとる。しよる努力が正しいか間違っとるかなんや。

『しんどいの、重たいの、かなわんわ』言うて尻叩かなアカンのもおるけど、今の若い子はがんばっとる子も多いよ。やっぱり若いときにがんばらな寂しいよなぁ。新しくラーメン屋を興したいというのもええやん。でもそれも努力の方向や。結局な、人のマネをしていたらアカンねん。いまからラーメンをはじめよう思ったら、本を買って来てつくれるような、醤油やみそ、とんこつ、どれをつくろうかやない。新しいもんをつくらんと。自分で開発せんと。

何十年も前の話やけど『5億円出すからスープを教えてくれ』と頼まれてもお金の問題やないと断ったんや。スープは命や。天下一品は『こってり』を開発し、信念を貫き守ってきたから今でも生きていられる。それは発想も何も誰も想像つかへんことを、努力してやらな、できひんかったことやねん」

御年86歳。3年前に一線を退き会長となった現在も、天下一品各店舗に精力的に顔を出し、仕事以外でも毎日1時間ウォーキングを日課に、週末の夜は20年以上KBS京都テレビの冠番組に出演。スープづくりに懸けた情熱は、後期高齢者となろうとも濃度は変わらない。

「あそこの湖岸を削る許可を行政からもらうまでに2年半も掛かってしもうたんやけどな、今はグランピング場をつくろう思うとります。夏になれば琵琶湖の花火大会を見ながらバーベキューや。最高でっしゃろ」

会長室の窓の外に広がる美しい琵琶湖の湖岸を指さしながら、木村会長が夢を語る。屋台から身を起こし、天下にひとつしかないラーメンを武器に日本中を席巻し、琵琶湖の形をも変えてしまう様はまさに天下人のそれ。

なぜ、これだけアクティブに動けるのか。その答えは、やはり今も毎日食べている天下一品の“こってり”であるそうだ。

「毎日1杯は店に行って必ずこってり。ニンニクはスプーン一杯分。『こってりは年をとって食べられへんねや。あっさりでええわ』いう人もおりますやろ。わしは『勘違いしてはる』と言いたいんや。食べられへんのは怠けてるいうこと。年いっても、オナカ減っとったらなんでもおいしいですやん。今の人はみんな運動不足や。わしもそうや。最近は怠けて歩けてへん。おなかが減らんと食べる量も減る。最近は“こってり”も手伝ってもらうことが増えてきたしな。これじゃあかん。動かないとアカンねん」

これから益々厳しくなることが予想されるコロナ後の世界。これを生き抜くためには、健康で“がんばること”は当たり前としながら、努力の方向性。そして誰もやったことがない開拓精神。それまでの価値観をひっくり返すほどの“こってり”とした信念を貫き通すことであると木村会長は言う。

「いまの世の中にある食べ物では思いつくもんはなかなかないなぁ。野球でいえば大谷翔平やな。二刀流。わしは野球が好きでメジャーリーグもよお見るんやけど、あれは天才的やな。メジャーでピッチャーやりながら、ホームランあれだけ打って、最後は誰も勝負してくれへんようになった。正々堂々と勝負してな。価値観をひっくり返すってああいうこっちゃ。えらいもんや。わしは二刀流やなくてこってり一筋で50年。次の50年、100年と続いていけたらええよな」

「天下に類なきもの すなわちこれ 天下一品なり」。木村勉会長が50年間続けてきた生き様に通じる(撮影:村瀬秀信)
「天下に類なきもの すなわちこれ 天下一品なり」。木村勉会長が50年間続けてきた生き様に通じる(撮影:村瀬秀信)
木村会長が座っているソファーの後ろにはライオンが吠える絵画。屋台を引く前に絵画販売をしていた経験からか、天下一品の各店舗・あがりゃんせなどには会長の好みである写実的な絵画がよく展示されている(撮影:加藤慶)
木村会長が座っているソファーの後ろにはライオンが吠える絵画。屋台を引く前に絵画販売をしていた経験からか、天下一品の各店舗・あがりゃんせなどには会長の好みである写実的な絵画がよく展示されている(撮影:加藤慶)
  • 取材・文村瀬秀信撮影加藤慶

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