『男気ジャンケン』演出 マッコイ斉藤が語る「バラエティの未来」 | FRIDAYデジタル

『男気ジャンケン』演出 マッコイ斉藤が語る「バラエティの未来」

YouTubeに参入してヒット連発!「テレビはもっとバカでいい!」『全落・水落オープン』などの人気企画を生み出した辣腕

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マッコイ斉藤:本名は斉藤誠。山形県出身の演出家。『とんねるずのみなさんのおかげでした』で『買うシリーズ』などのヒット企画を手掛ける。’20年からYouTubeに参入し、『とんねるず』石橋と開設した『貴ちゃんねるず』はわずか1ヵ月で登録者100万人を突破した

「最高の常識をもって最高の非常識を作る――常にこの言葉を意識しながらバラエティを作っています。なんてカッコつけてますけど、非常識がすぎて、芸人さんを数人、収録中にケガさせてしまいましたが(笑)。ただ、令和のいまならケガどころかたった一人からでも苦情が来たら番組が終わってしまう。これでは面白いバラエティは作れません」

伝説のバラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)で『全落・水落オープン』(落とし穴へ落ちる面白さを採点)や『男気ジャンケン』(勝った者が全オゴリ)など数々の名企画を生み出した辣腕(らつわん)演出家・マッコイ斉藤(51)。彼のルーツはある大物芸人だという。

「ビートたけしさん(74)に憧れ、18歳で山形から上京しました。東京に来たもののどうすればたけしさんに会えるのかわからず、途方に暮れていたとき、コンビニで見つけた『De☆View』というオーディション情報誌で『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』のスタッフを募集していて、すぐ制作会社へ面接を受けに行きました。ところが会場に行ったら、僕以外みんなスーツ姿の大卒学生ばかり。僕は高卒でしかも革ジャン姿。

倍率が20倍と聞いて『絶対に落ちる』とあきらめて、履歴書をリレーのバトンみたいに丸めて持っていったんですよ。そしたら面接官が丸まった履歴書を伸ばしながら、『なんで丸めちゃったの?』と聞くので、正直に『必要ないでしょ?』と話したらしこたま怒られましたね(笑)。でも、奇跡的に採用していただき、そこからテレビマンとしての生活が始まりました」

マッコイがテレビ業界に飛びこんだ’80年代はテレビ黄金時代。まさに「面白ければ、何でもアリ」だった。

「『元テレ』で暴走族の人たちに出てもらったとき、ADのミスで、2チームブッキングしてしまい、茨城の河川敷で40対20の抗争が始まってしまったことがありました。ADが戦場のド真ん中にいて、巻きこまれそうになっていたので、距離を置いて見ていた僕がADを怒鳴りに行ったんです(笑)。大人の僕がブチギレたらみんな引くじゃないですか? それで場は収まりました」

「’80年代のテレビは面白い物を作るには最高の環境だった」とマッコイは語るが、働き方はメチャクチャだったという。

「タレントの仕込み、ロケ場所決め、弁当の手配まで全部自分でやるんですが、スマホはおろか携帯もないので、途方もなく時間がかかりました。とにかく寝られなかったですね。朝の5時ごろまで編集作業をしてそのままロケに行く、みたいな毎日でした。一睡もできない日が3日続いたこともあります」

マッコイは25歳で独立し、31歳で制作会社『笑軍』を設立。深夜番組を主戦場に、ガムシャラにバラエティを作り続けた。その中で、『とんねるず』、『おぎやはぎ』、有吉弘行(47)などと出会い、“ドS演出”の才能を開花させることになる。

「ヒットは飛ばせましたが、総合演出は孤独との闘いでした。『逃げない・ブレない・群れない』を僕はモットーにしています。“逃げない”は例えば演者さんとの間でトラブルが起きたときには総合演出が必ず謝りにいくこと。自分が考えた企画なら最後まで責任を持たないといけません。“ブレない”は撮ると決めたものは何があっても撮ってくること。編集で面白い映像にして、局員を黙らせればいいんです。

コンプライアンスを気にして、つまらないものを撮ってくるくらいなら後先考えずにバットを思い切り振ってこいって僕は指示しています。最後の“群れない”は、総合演出は一匹狼でなければいけないということ。徒党を組んで味方を作ろうとすることが一番ダメ。味方を作ると、会議で味方が間違ったことを言っていても指摘できなくなってしまう。総合演出は近寄りがたいくらいがいい。嫌われてナンボだと思っています」

近年、テレビ業界を取り巻いているのはコンプライアンス問題だ。過激な演出をウリにするマッコイには逆風だった。

「正直、『冗談じゃない』って思います。たった一人の苦情で撮り直したりしますからね。いまのテレビは暴力やいじめを連想させる演出を提案するだけで『古い』と一蹴されてしまう。お笑いって本来、理不尽であったり、非常識だったりするところから生まれてくるはずなのに、それを根本から否定するわけです。コンプライアンスという“見えない力”が、バラエティが持つ笑いの振り幅を失わせてしまっている。

僕らの仕事って本来イカれている奴が評価されるべきなんですよ。コンプライアンスを守るために、こだわりを捨ててはいけません。例えば、『男気ジャンケン』は、本当は負けた人が払う企画だったんです。でも、『負けた人が払うのはイジメだ』と潰(つぶ)されかけたので、『じゃあ勝った人が男気で払えばいいじゃん』と抵抗したら、すんなりOKが出た。

コンプライアンスに負けず、議論すること。柔軟な発想を持つことが大事です。どんな演出でも視聴者が『面白い』と思ってくれればいいんです。笑いに古いも、新しいもありません。いつからテレビは自由を忘れてしまったんですかね」

日本で『イカゲーム』は生まれない

視聴者離れが止まらないテレビは生き残ることができるか。マッコイが続ける。

「世界中で大人気の韓国ドラマ『イカゲーム』(Netflix)はいまの日本じゃ絶対作れない作品です。人間のドス黒い部分を描いているし、拳銃で頭を撃ち抜かれて、脳ミソがバンバンと吹っ飛んでいく。なのに、映像や音楽はコミカルなんです。イカれてますよね。だから、面白いんですよ。日本のテレビ界はネット配信やサブスクにシフトしていくと思います。視聴者が見たいものを自分で選ぶ時代が来る。テレビは情報番組とワイドショーなど”良い子ちゃん”の番組だけが残り、過激な番組は配信でしか視聴できなくなるのではないでしょうか」

コンプライアンスの逆風が吹くなか、盟友・石橋貴明(60)の冠番組が次々と終了した。マッコイが活路を見出したのは、YouTubeだった。’20年に参入して以来、登録者167万人を誇る『貴ちゃんねるず』や元プロ野球選手の清原和博(54)が球界の裏事情をぶっちゃける『清ちゃんスポーツ』など、ヒットを連発している。

「YouTubeは昔のテレビみたいで楽しい。まだコンプライアンスの波が来てないので、自分たちがやりたいことをやればいい。バズることばかり考えていると、つまらないチャンネルになるから、自分たちがやっていて楽しいことをやればいいんですよ。テレビ局みたいに視聴率も気にしなくていいんだから。

『最近、チャンネルの再生回数が落ちてきてるね』って言われますけど、気にしていないです。最初は興味本位で見てくれるけど、慣れてきたら見なくなるのは当然の話。そこからが勝負。僕は自分が面白いと思ったものを作るだけです。出る杭(くい)は打たれるけど、出過ぎれば打たれなくなる。そんなトガリまくったコンテンツを作りたいですね」

育ててもらったテレビへの愛は失っていない。マッコイは大きな野望を胸に秘めていた。

「最後はゴールデンタイムの特番で視聴者の方に『なんじゃこりゃ』って思われるような番組を作って、引退したいですね。その後は映画やドラマを作りたい。海外に知り合いがたくさんいるので、最高に非常識な映像作品を作って、海外でどのような評価を受けるか知りたいんです。僕の20~30代は仕事に捧げてしまったので、50代は自分のやりたいことだけをやっていきたいです」

マッコイはまだまだバカをしでかしてくれそうだ。  

’13年、本誌インタビューに登場したマッコイ。当時から”ドS演出家”として芸人たちから恐れられていたという
元プロ野球選手・清原和博のYouTubeチャンネル『清ちゃんスポーツ』で、格闘家にボコボコにされるマッコイ。
『貴ちゃんねるず』にて誕生日にパーマをかけられるというドッキリを受けた
本誌未掲載カット 『男気ジャンケン』演出家 マッコイ斉藤が語る“バラエティの未来”
本誌未掲載カット 『男気ジャンケン』演出家 マッコイ斉藤が語る“バラエティの未来”

『FRIDAY』2021年11月19日号より

  • 取材・文町田博鶴 (記者)撮影濱﨑慎治 中村和彦

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