膨らみすぎた放映権料…地上波から日本代表戦が消えた「舞台裏」 | FRIDAYデジタル

膨らみすぎた放映権料…地上波から日本代表戦が消えた「舞台裏」

W杯出場を懸けた最大の山場であるアウェイ2連戦。しかし、国民の大多数は、その試合を見ることさえできない

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10月12日に行われたオーストラリア戦に臨む日本代表イレブン。すでに2敗を喫するなど厳しい戦いが続く

2勝2敗という厳しい滑り出しを強いられ、早くも来年のW杯出場に向けて崖っぷちに立たされた日本代表が、11月11日(木)と16日(火)にアウェイでベトナム戦とオマーン戦を戦う。

どちらも勝ち点を落とせない重要な一戦となるが、しかし日本でこの2試合を中継するのは有料動画配信サービスのDAZNのみ。残念ながら、国民の誰もが無料で視聴できるテレビの地上波放送局はホーム戦のみの放送権を有し、アウェイ戦は中継できない。

長年にわたり、地上波放送局にとって、サッカー日本代表戦はキラーコンテンツであり続けた。同時に、サッカーというスポーツが日本国民に広く認知され、それに影響を受けた子供たちを中心にサッカーの競技人口が爆発的に増加するきっかけにもなった。

「(日本)代表戦は誰でも見られる環境であるべき。申し訳なく思う」

今回のW杯アジア最終予選が、地上波放送ではホーム戦しか放送されないことを受け、田嶋幸三JFA(日本サッカー協会)会長が悔しさをにじませるのも無理はない。

肥大化する放映権バブルの現状

そもそも、これまで地上波放送で見られるのが当たり前だった日本代表戦が一部有料でしか見られなくなった背景には、様々な要素が絡み合っている。

まず、2018年に放映権の販売元であるAFC(アジアサッカー連盟)が中国とスイスの合弁会社「DDMC Fortis」と結んだ大型放送権契約があげられる。後にアジアサッカーに関して「FMA(フットボール・マーケティング・アジア)」というブランド名で活動する同社が、AFC主催大会の放送権を購入した額は、2021~28年の8年間で総額20億~24億米ドル。年間にして約2億7500万米ドルという巨額契約で、前回2017~20年の契約と比べ、4倍近くに跳ね上がった。

当時の中国は、サッカー界でも“爆買い”ブームの真っ只中。多額の移籍金を払って一流選手をスーパーリーグに呼び寄せていた他、複数の中国企業がFIFA(国際サッカー連盟)のメインスポンサーになるなど、彼らにとってサッカーは大きな投資対象だった。

そんな右肩上がりの中国経済とは対照的に、日本の経済力は低下する一方。その経済状況のギャップに加え、2020年には世界中でコロナウイルスが大流行。放映権パッケージはさらに手を出せない“物件”になってしまった。

結局、日本の地上波放送局は白旗を上げ、今年8月、電通の子会社が株式の一部を保有するDAZNがW杯アジア最終予選の放送権獲得を発表。さらに同日夕方には、前回大会まで放送権を有していたテレビ朝日が、ホームの日本戦5試合のみを放送することが公にされた。

いずれにしても、たとえ有料の動画配信サービスとはいえ、DAZNが日本に上陸していなければ、日本のサッカーファンが自国の代表戦を視聴できないという状況が生まれていた可能性を否定できなかったことは確かだろう。

問題は、日本サッカーの未来だ。

サッカー日本代表が国民的アイコンになってから20年以上の月日が流れ、社会状況はずいぶんと変わった。国民生活の中でテレビが占める割合が激減し、スマートフォンなど個人端末によって動画を視聴する文化が若者を中心に浸透。テレビの前で家族揃って日本代表を応援するという風景も、少しずつ失われつつあるのが現状だ。

そんな中、プロ化によって右肩上がりの成長を続けてきた日本サッカー界はいよいよ岐路に立ち、その舵取りを誤れば、あっという間に停滞から下降線を辿ることも決してあり得ない話ではない。欧米を中心とした諸外国のようなユニバーサルアクセスの概念が浸透していない日本においては、全国民が無料で日本代表戦を視聴できる環境を取り戻すべく、JFAが問題解決を主導するしか道はないだろう。

たとえば、次のW杯予選までにJFAとジャパン・コンソーシアム(W杯や五輪中継で組織される地上波放送局の集合体)で放送権獲得資金をプールするなどして、電通を通してDAZNと交渉し、W杯予選の放送権を共同購入する方法も考えられる。あるいは他の競技団体と共闘し、あらゆる日本代表の重要な試合を国民が無料で視聴できるよう、スポーツ庁に訴えかける方法もある。

少なくとも、指をくわえて見ているだけでは、日本サッカーに未来はないだろう。

  • 取材・文中山淳

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