実力派芸人ザ・ギースが語る「キングオブコント」の進化と変化 | FRIDAYデジタル

実力派芸人ザ・ギースが語る「キングオブコント」の進化と変化

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「刺激を受けた」という、 “ハイブリッドコント芸人”の台頭

コント日本一を決める大会「キングオブコント」の第1回から出場し、これまで4度の決勝進出を果たしているザ・ギースの高佐一慈と尾関高文。実力派でありながら、今年に入って初の漫才ライブを開催したり、尾関がピンネタライブに挑戦したりと、いまだコントの可能性を追求し続けるスペシャリストだ。 

そんなストイックな2人であれば、キングオブコントという大会の変遷、コント自体の移り変わりを誰よりも熟知しているに違いない――。なぜ今年の大会はここまで盛り上がったのか、ネタと審査方式の関係性、東西や世代におけるコント作りの違いなど、余すところなく語ってもらった。 

ザ・ギースの高佐一慈(左)と尾関 高文(撮影:スギゾー。)

今年のキングオブコントが盛り上がった理由 

――今年のキングオブコントでは残念ながら決勝進出ならず。ただ、準決勝の第2ブロックで「一番ウケていた」との声もありました。

尾関:正直、そんな気持ちはあったけど……。 

高佐:いやいや、出ちゃってるから(笑)。準決勝って2日間あるんですけど、1日目は思ってたより反応がよくて。割と体を使ったネタで、もしかしたら今後もやるかもしれない。 

尾関:「当たったら大きいかも」みたいな。三振かホームラン的なネタでした。 

高佐:それが当たったんですよ。けっこうボールも遠くまで飛んだんで「オッ!」と思ったんですけど、2日目がいまいち振るわなくてっていう感じでしたね。 

尾関:本当に悔しいですけど、まぁそれは結果として受け止めます。ただ、終わってからいろんなトコで「準決勝でウケてたみたいだね」って言われるのはすごい嬉しいです。

――今年は大会自体も盛り上がりました。これまでと何が違ったと思いますか?

高佐:もちろんこれまでもよかったですけど、まずは審査員が一新したっていう盛り上がりがありましたよね。あとは若い世代の芸人が決勝に揃ったのもあるし、ちょっと演劇的なコントが多くてそれを評価してくれる大会の流れになってたのもよかった。お客さんもすごいよくて、笑い声でより盛り上がった感じもありましたし。そういうのがいろいろ絡み合って、すごくいい大会になったのかなと思います。 

尾関:去年、うちらが出た時は、コロナで世の中が本当に暗い空気だったんですよ。今年は、それが何となくちょっと光も見えて来た中で弾けた感もあるかもしれない。あと、キャラが濃いうえに構成もちゃんとしてるコント師が増えましたね。今までのいいトコどりというか、“ハイブリッドコント芸人”みたいなタイプが出て来た。 

今後、構成がメインでキャラがそんなにない芸人、うちらみたいなのは苦労するだろうなってひしひしと感じましたね。だからこそ、逆に頑張んなきゃっていう。前向きな意味で刺激を受けました。 

「芸人が芸人を審査する」から「審査員審査」に 

――お二人はキングオブコントの第1回大会で決勝に進出しています。当時はリーグ戦で、準決勝で敗退した芸人100人が審査するというもの。一緒に戦った芸人から審査されるのってどんな心境なんですか?

高佐:ちょっと怖かったですね。当時、まだ僕らは芸歴5年目とかで、もちろん先輩のほうが多かったですし。しかも、M-1グランプリにはない“芸人が芸人を審査する”ってルールで、手放しで応援してくれる感じではないというか。 

尾関:先輩はみんな、(前のめりで睨むように)こうやって見てましたから。今でも覚えてます。もうすごい怖い目で見てて、「うわっ、ぜんぜん笑ってない」って思いながらやってましたから。

――第2回から第6回までは、芸人の審査はそのままに2ネタの合計得点を争う方式、第7回は1組ずつ対戦して勝ち上がる「一騎打ち方式」、第8回以降は5人の審査員審査で上位3組が争う形で落ち着きました。お二人は第8回で再び決勝に進出しましたが、第1回と比べてやりやすかったですか?

尾関:その前年にシソンヌが優勝したんですよ。その時までは芸人審査で、ちゃんと玄人目線があった。要は、ライブとか準決勝でウケた人が評価に直結してたんです。審査員審査になっちゃうと、やっぱりお客さんの笑い声で判断するトコもあるでしょうし、より一般視聴者の目線が評価に出るのかなって気もします。 

準決勝ではお客さんの反応もすごくよかったんです。ただ、お笑いをよく見てるようなコアな人向けのネタだったんで、それが一気に裏返ってしまって。だから審査員審査は、2015年の僕たちには向かい風でしたね。もちろん松本(人志)さんとかにネタを見てもらえるのはめちゃくちゃ嬉しかったですけど。だからこそ悲しい気持ちにもなったっていう。 

高佐:しかも準決勝が終わってから、「審査方法が変わります」となったので対策のしようもなくて。準決勝でウケた人たちが、軒並み決勝で散々な目に遭うって回ではありました。その後、2018年は割とお客さんの反応がよかったんですよ。ただ、ハナコ、チョコレートプラネット、さらば青春の光とかみんな面白くて。やっぱりあんまり褒めてもらえなかったんですよね。 

尾関:“人(にん)”が足りないんでしょうね。マンパワーというか。あの方たちは、もちろん構成もそうですけど、やっぱり「人の面白さが出てる」のを見てるから。映像使ったり、ハープ弾いたりしてると、「道具使ってるね」ってなるのかもしれない。 

高佐:ただ順位で言えば、去年のハープのネタが一番いいんですよね。とくに松本さんが意外と評価してくれた。今年もそいつどいつのチャレンジ精神を買ってたり、松本さんが好きそうなニッポンの社長が意外と伸びなかったりもしてますよね。だから、松本さんの中でも何か変わって来てるのかもしれないですね。 

尾関:最初より考えることが増えたのか、全体を見た審査になってる感じはするね。前は本当に面白いコントだけを評価してた気がするけど、またちょっと違う要素も含めた感じになってるのかなって。わかんないですけど、若手の流れとか大会自体のことも含めて変わって来たのかもしれないですね。 

大阪と東京、コント作りの違い 

――2008年から2020年までに4回も決勝進出を果たしています。大会で勝つためにコントの作り方を変えていった部分もあるんでしょうか?

高佐:もちろん時間を5分尺に縮めるとか、ニッチな層にしか響かないところはもうちょっと間口広げるとかっていう微調整はあります。ただ、大会のために対策するっていうのはないですね。僕らは、単独ライブをやって、その中で行けそうなネタを選ぶ感じだから。 

尾関:よく対策用のネタライブとかやってる芸人さんがいるんですけど、結局面白いネタができるかどうかだから。キングオブコントだからどうっていうのはないですね。 

高佐:聞いたところだと、かまいたちはキングオブコントを分析して挑んだみたいですね。それはそれでアスリート的な感じがしてすごい。覚悟決まってるなと思います。 

尾関:ネタをかけられる場所が多いっていうのもあるしね。そこは吉本さんらしいというか、M-1グランプリの流れを汲んでるところもあるかもしれない。

――大会全体を見ると、第2回の東京03から第7回のシソンヌまで東京勢が優勝。その後も東京を拠点に活動するコント師の優勝が目立ちます。この理由は何だと思いますか?

高佐:準決勝を東京でやってるから、というのはあると思います。だから、大阪の人はアウェイって感じがあって、単純にコマ数的に有利な東京勢が多かったっていうのはある気がします。 

尾関:コント師の数が東京のほうが多かったのもあるかもしれないね。向こうは漫才とコント、半々ぐらいでやってる人が多いイメージですけど、コントはこっちのほうが多いから。 

高佐:蛙亭とかGAGはそれで東京進出したみたいですしね。男性ブランコとかもそう。やっぱり向こうは漫才文化だし、「あんまり観てくれる土壌がない」みたいなことを聞いたりもします。 

尾関:1回禁止されてたしね、コント。よしもと漫才劇場では漫才しかやっちゃいけなかったという話もありましたもんね。

――『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「よしもと漫才劇場芸人」でも、そのエピソードが紹介されてましたね。大阪と東京では、コントの作り方にどんな違いがあると思いますか?

尾関:西は漫才的な文化が根強い気がします。素でやる文化というか。やっぱり漫才師のみなさんはコントに入った時に「違う人を演じるのが恥ずかしい」って言う人が多い気がします。そういう感覚は向こうの人のほうが強いんですかね。作り方、演じ方がそこで違うのかもしれない。 

高佐:たしかに憑依型の人って東京に多いですもんね。ロバートの秋山(竜次)さんとか、シソンヌのじろうさんとか。あと、いわゆる演劇的なコントっていうのは、東京育ちってイメージがありますね。 

尾関:だから関西の芸人さんたちはやらないのかな。一昔前は「東京の文化が苦手」っていうお客さんもいましたし、そっちに寄せるのはちょっと気恥ずかしいというのは、まだあるのかもしれないですね。 

音響、照明…「劇場型になってきてる」若い世代 

――今年のキングオブコントは、決勝メンバーの顔触れもグッと若返りました。お二人の世代と若手の芸人さんとで、コントの作り方が違うなと感じるところはありますか?

高佐:ちょっとありますね。それこそ最初に僕らが出た頃って、準決勝にペナルティさんとかインスタントジョンソンさんとかが出られていた時代で、キャラクターコントが多かったんです。僕らはちょっとスタイリッシュって言われちゃうようなコントだったから、同じクラスだけど別の班みたいな感じがありました。 

尾関:その頃って演劇的なコントが憎まれてたというか、敵対視されてる感もあったから。そういう意味もあって、とくに吉本さんとかでやる人は少なかったんじゃないですかね。 

高佐:「スカしやがって」みたいなね。しずるとかライスとか、東京NSC9期あたりからガラッと変わったみたいな話は聞きますけど、当時たしかに吉本さんには少なかったと思います。それが今は見事に垣根を超えてガッチリ融合してる感じで。コントとしてすごくクオリティーの高いものになって来たなって印象ですね。 

尾関:ネットを見てるからなのか、構成が超ちゃんとしてて。だからこそ、それが弱点というとあれですけど、音楽とか音に頼る人が多いなって感じがしますね。準決勝でもけっこう音楽を使ってた人が多くて。安易に盛り上がる方法論を知ってるから、入れがちなのはあるかもしれない。空気階段のラストは必要性があったからいいと思うんだけど、やたら使ってる若手が多いなとも感じましたね。 

高佐:やっぱり劇場型になって来てるのかもね。 

尾関:しかも、言えば吉本さんが作ってくれるしさ。本当に効果的であればいいんだけど、いろんな技の一つとして使いがちになってるんじゃないかっていうのは思うな。 

高佐:あんまり道具とか使わずにやろうって感じから、音響だったり照明だったりっていう舞台的な装置をどんどん使い始めたと。その中でいろんなコントの可能性を示す人たちが多くなったってことなのかな? 

尾関:そうだね、やり方が増えて来たっていうところですかね。まぁ我々のほうが映像使ったりとか、よっぽどえげつないことしてるんですけど(笑)。必要性がないトコでやりがちだなって感じはあります。

――たしかに決勝でも舞台装置を使ったコントが多かったですね。数年前の審査なら、ジェラードンやマヂカルラブリーのようなネタがトップ争いに入っていた気もします。

高佐:わかります。ジェラードンとかも本当に面白かったし、それまでの審査ならトップになってる可能性はあったでしょうね。今年は劇場でやっている審査員の方もたくさんいたから、そこを評価したのかな。 

尾関:そうだね、玄人目線だろうな。構成に関しても、細かく見る人が多かったし。そういう意味では、構成も含めた審査の割合がちょっとだけ強くなったのかもしれないね。 

キングオブコント出場を続ける訳… 

――これまでのキングオブコント、すべての大会に参加されています。欠場を考えたことはないですか?

高佐:欠場はないですね。出続けるのは、もう意地とかに近いかもしれない。キングオブコントって、一番新しいコントが集まる大会だと思うんですよ。やっぱり僕らも年々狭き門になってるし、アウェイな感じもあるし、でもその中で「何とか若手と渡り合うぞ」みたいなところでやってる感じがありますね。 

尾関:やっぱり同じぐらいの芸歴の人たちは、9割5分が「もういいかな」ってなっちゃうんですよね。ただ、だからこそ逆に燃える要因になるというか。やれるトコまでやってみようっていうのはあります。うちら以外だと、ラバーガールとかもそうですね。「ここしかない」っていうわけではないですけど、キングオブコントで頑張りたいって気持ちがすごく強いんだと思います。

――お二人がキングオブコントで得られているものって何でしょうか?

高佐:何でしょうね……格好悪いですけどね、こんな40超えて青春真っ只中のコンビ(笑)。甲子園にOBがチーム作って出てるみたいな。でも今ライブに呼んでくれるのは、自分たちより下の若手なんで。そこと交流を図れたり、そのことで若いお客さんにも観てもらえたりっていうメリットはありますね。 

尾関:青春とは別な気がするけどな(笑)。ただ2人とも変なプライドがないから、門戸は広いかもしれない。それこそ去年のキングオブコントがきっかけで、西の面白い若手とも知り合えたしね。 

高佐:決勝が決まるとTBSに1回集合するんです。そこで尾関が真っ先にニッポンの社長、ロングコートダディ、滝音に絡んでいって。僕がトイレ行って戻って来る間に仲良くなってたから驚きました。 

尾関:とくに3組は人もよくて面白いから、普通に売れそうな感じもありますからね。そういう人としゃべってると、自分たちも面白くなるじゃないですか。だから、面白いものを作っていく過程にキングオブコントがあるって感じですよね。

――3年ほど前にインディーズライブに出ている錦鯉・長谷川雅紀さんを見たんですが、20歳以上離れてる若手にイジられて楽しそうでした。そういう感覚は大事かもしれません。

高佐:僕も最近、若手のライブで“老害”ってイジられてます(笑)。尾関は体も大きいし、動きも変だし、意地汚い部分もあるから、そこをイジられて面白がられるんですけどね。僕はあんまりそういう経験なかったから、イジりの膜が薄くなって来たのが嬉しいし、やっとおじさんキャラもついてありがたいなと思ってます。 

尾関:あとはハゲたら完成する。もう最終章まで来てます(笑)。僕はさらけ出しますよ、ぜんぜん。できるなら、うまくコントにも絡めたい。いろんな要素が重なって人生って広がるし、そういうのが全部コントに出るだろうなと僕は思ってやってます。 

  • 取材・文鈴木旭

    フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。4月20日に『志村けん論』(朝日新聞出版)が発売された。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中。http://s-akira.jp/

  • 撮影スギゾー。

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