首都圏で唯一建設中の「八ッ場ダム」工事 ついに村が水底に沈む

【ドローン撮】フライデー・スペシャルノンフィクション

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建設中のダム上空から吾妻川の上流側をドローンで撮影。白線内が完成後、水に沈む地域だ。右が川原畑地区、左が川原湯地区。中央を横切っているのが八ッ場大橋で、不動大橋が奥のほうに見える

首都圏唯一の建設中ダム

「八ッ場(やんば)ダムの計画が立ち上がったのは昭和27(1952)年。ここまで66年間もかかっていますが、現在は24時間体制で順調に工事が進んでいます。堤高116mのダム本体は8〜9割が打設済みとなりました。完成は’20年3月を予定していますが、その前に試験湛水もあります。ダム完成時に水没する地域を見ることができるのは、あと少しということになります」(国土交通省関東地方整備局・八ッ場ダム工事事務所の遠藤武志副所長)

’09年9月には前原誠司国交相(当時)が建設中止を表明した八ッ場ダム。だが’11年12月には条件つきながら事業継続方針が決定し、’15年2月にダム本体が起工、現在は最終工程に入っているのだ。

関越自動車道・渋川伊香保インターから車で約1時間、付け替えられた国道145号線の雁ヶ沢(がんがさわ)・茂四郎(もしろう)トンネルを抜けると建設中のダムが見えてくる。ダムの周囲には巨大なクレーンがアームを伸ばし、時折、重機がつり下げられる様子も窺える。

現在、常時400人以上がダム建設に従事しており、完成時に水底になる場所には工事のための仮設プレハブなどが建ち並ぶ。なかでも目を引くのが、長大なパイプ状の建設物だ。

「これは、ダムの骨材を運ぶベルトコンベヤです。八ッ場ダムの本体は100万㎥のコンクリートを必要とするため、その原材料となる岩を近接の原石山(下図)から切り出し、約10kmにわたって敷設されたベルトコンベヤでダム真横まで運搬してきて、ここでコンクリート状にしてダムに流し込むのです。このベルトコンベヤも仮設構造物も、ダム完成時にはすべて撤去します」(前出・遠藤氏)

ダム完成時に巨大な湖となる場所には、両岸を結ぶ湖面橋が3本かかっている。一番ダムに近い八ッ場大橋の橋桁には、かなり上部に2つのマーカーがついており、上がダムの高さ、下が満水時の湖面高(上写真点線部分)を表している。この高さまで水が貯まることになるのだ。

470の家屋はすべて更地に

八ッ場ダムは、計画当初から地域住民の激しい反対運動に遭い、計画は難航した。なかでも地域のシンボル的存在だったのが、800年の歴史を誇る川原湯温泉だ。温泉街の中心地でもあった共同浴場・王湯は、新たな代替地の高台に移転した。しかし「温泉街」の風情はそこにはまったくない。

かつて川の両側には川原畑地区と川原湯地区の集落など計470世帯の家屋があったが、それらはすべて解体されて更地となってしまった。ダムの上流側には145号線の旧道、そして旧JR吾妻線の鉄橋が、わずかに人里の名残を留めているだけだ。鉄橋はそのままダムの底に沈むが、現在はまだ敷設されたままの枕木は水質保全のため、注水前には取り除かれる予定だという。

地元にカネは残らなかった

八ッ場ダム建設では水没地域の住民対策として、「現地再建方式」がとられた。用地を買い上げて別の地域に移転してもらうのではなく、コミュニティを保全できるよう、移転代替地をダム湖畔沿いの高台に建設。いわば村ごとスライドしてもらう方式だ。だが、この方式も上手くいったとは言いがたい。この地で4代にわたり農家を構え、以前はダム対策委員長を務めていた篠原茂氏が言う。

「結局、470世帯のうち代替地に移ったのは94世帯。国交省が俺らの土地を安くない値段で買い取ってくれたけど、その後、国が整備した代替地を買わなきゃいけない。その値段が高くて驚きました。なんでこんなに高いんだと聞いても、納得できる答えはもらえなかった。周囲にはダムのおかげで儲かったろうなんて陰口を叩かれたけど、本当にこの地に愛着があって残った人間には全然カネなんて残らなかった。こんな寒村の土地を売って市街地の家が買えるんだから、皆、そっちに行っちゃうのも仕方ありません」

篠原氏は、細々と続けていた農業をやめて、湖面2号橋・不動大橋のたもとに作られた道の駅『八ッ場ふるさと館』の駅長となった。ダムの進捗につれて来客も増え、農産物直売コーナーの売り上げは地元経済を潤している。

「ここの名物は、ダムを模した『八ッ場ダムカレー』。辛口です。国に翻弄された住民の気持ちも入ってるから(笑)」

上流側、八ッ場大橋越しにダムを見る。吾妻川は橋梁左の木々の奥を流れている。ダム建設中の現在はトンネルを掘って水を迂回させている
景勝・吾妻峽がある下流側から見たダム本体。八ッ場ダムは治水、利水、発電のために作られる重力式コンクリートダムで、下流側の地下に八ッ場発電所が設置される

廃線となった旧吾妻線。下流側ではダム完成後、この線路を観光に活用しようとしている
高台の新・川原湯地区から建設中のダム本体に続く立ち入り禁止区域へと至る道
八ッ場大橋からは建設中のダムが一望できる。見学ツアーも実施され、人気に
高台に移転した川原湯温泉のシンボル的公共施設「王湯」。湯からの眺めは絶景
川原湯の源泉をくみ上げるためのポンプ。温泉旅館も数軒が高台に移転した
ダム真上の建設用高架より撮影。ダムの上は幅10m、堤頂長290.8mで、完成後は観光客が散策できるようになる。ダム内に設置される2本のエレベーターのうち1本は一般に利用できる

撮影:桐島瞬

Photo Gallary10

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