M-1台風の目となった「怪奇!YesどんぐりRPG」の野望
一発ギャグを得意とするピン芸人3人が事務所を超えてユニットを結成
(この記事はM-1準決勝進出者発表前にFRIDAY本誌に掲載されたものです。来年への意気込みとしてお読みくださいませ)
「もちろん目指すは優勝ですよ! 優勝して、漫才の概念を壊したいです」
そう語るのは今注目のお笑いトリオ『怪奇!YesどんぐりRPG』のサツマカワRPG(30・写真右)だ。ピン芸人のサツマカワが、Yes!アキト(31・写真左)とどんぐりたけし(29)を誘い、’18年8月、事務所の枠を超え、全員が一発ギャグ芸人という異色ユニットが誕生した。
そんな彼らがいま『M−1グランプリ』で快進撃を続けている。なぜギャガーたちはしゃべくりの頂点を決める大会に挑(いど)むのか。準々決勝の結果発表を待つ彼らを直撃した。
サツマカワ(以下:サツ)「『M−1』は、トリオ結成からの目標でした。むしろそのために2人にユニットを持ちかけた」
どんぐり(以下:どん)「誘われて即決でしたね。軽いノリで『いいッスよ〜』みたいな。実はサツマカワに誘われる数ヵ月前に、アキトに『M−1』に出ないかって誘われてたんです。ただ事務所に相談したら『なるべく事務所内で組んだら?』って提案されて。そしたら今度はサツマカワから2人が誘われて。しかもめちゃくちゃしつこいんですよ(笑)」
アキト(以下:アキ)「僕だけ事務所が違うんですが、僕の代わりに事務所にも話を通してくれて。熱量にやられました」
4回目の出場で、長く壁だった3回戦を突破し、準々決勝へ進出した3人。その裏には、あるきっかけがあった。
サツ「今年の夏、平成ノブシコブシさんのラジオに出させていただいた時、徳井(健太・41)さんに『出場して、異色トリオってネタになって満足してるんじゃないか』って言われてドキッとしました」
どん「『100%本気で優勝を目指してやっているヤツらと、そうじゃないヤツらの、10年後の生き様は違うぞ。だから本気で目指してみろ』って言われて。もちろんそれまでも優勝を目指してましたが、この言葉で改めて身が引き締まった」
サツ「あとは初戦からトラブル続きで緊張する暇がなかった。1回戦、初っ端(しょっぱな)の一発芸で、まさかのカツラがペロンってめくれちゃって!」
アキ「僕らはまったく気づかなくて、『やけにウケるな〜』って超ノリノリで(笑)。引き上げた後に事情を聞いて、めちゃくちゃ焦りました」
立ち位置を変えつつ「プレイヤーチェンジ、プレイヤーチェンジ……」とつぶやきながら一発ギャグを連発するのが『怪奇!』のスタイル。はたしてネタはどうやって作っているのか。
どん「3人ともピンでも活動しています。ネタ担当はいなくて、逆に全員がギャグをやり合って、それを広げていく」
サツ「どんぐりは語感のニュアンスが天才的にいい! 『○○かい! ムール貝酒蒸しにして〜 いや酒蒸しにしたら酔っぱらっちゃうヨ〜ン様(サマ)ンサタバサ 何が入ってると思います〜?』という決め台詞があるネタがあるんですが、そもそもはどんぐりの持ちネタだった。普段は週2回、下北沢のライブスタジオに集まって、ネタをすり合わせています」
最後に昨年、『マヂカルラブリー』優勝で巻き起こった「漫才論争」について、どう思っているか聞いてみた。
サツ「いい流れだとは思います。マヂラブさんが許されたんだから、俺らも許されるかもって(笑)」
どん「そもそも、僕らのは漫才ですけどね〜〜」
アキ「それは変なことをやってる人に言ってほしい。こっちは本気で漫才やってんすから!(笑)」
異色トリオの挑戦は続く。





『FRIDAY』2021年12月3日号より
撮影:結束武郎