夫と長男を殺害…65歳女性が自宅に放火した「悲しすぎる動機」 | FRIDAYデジタル

夫と長男を殺害…65歳女性が自宅に放火した「悲しすぎる動機」

大橋とし子容疑者 寝たきりだった夫と長男が死亡「介護疲れ」と「生活苦」が原因か

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犯行現場となった自宅。灯油が撒かれたとされる1階部分は損傷が激しく、瓦屋根は崩れ落ちてしまっている

千葉県旭市の閑静な住宅街で、あまりに悲愴な放火事件が発生した。

11月18日、千葉県警は、大橋とし子容疑者(65)を現住建造物等放火と殺人の疑いで逮捕した。自宅の焼け跡からは夫・芳男さん(67)と息子の芳人さん(32)の二人が、遺体となって発見されている。

犯行当日の17日早朝、3人が暮らす一軒家から黒煙が上がり、周囲は騒然となった。火の手から逃げる大橋容疑者を見た近隣住民は、その様子をこう振り返る。

「『助けて!』という声がして慌てて外に出ると、顔を真っ黒にしたとし子さんが道路に座りこんでいました。『お父さんが灯油をかぶって家に火をつけた。息子が中にいる。私はなんとか逃げてきた』と。ただ、芳男さんは寝たきりの状態だったので、とし子さんの発言はおかしいなと思ったんです」

その後の捜査で、大橋容疑者が自宅に灯油を撒(ま)き、火をつけたことが判明。なぜ惨劇は起きてしまったのか。取材を通して見えてきたのは、高齢化社会の歪(いびつ)さが反映された切実な実情だった。

亡くなった芳男さんと交流があった近所に住む男性は、一家の様子をこう話す。

「とし子さんは物静かで優しい人でした。ただ、4~5年ほど前に脳の病気を患(わずら)って以降、下半身に後遺症が残ったと聞いています。腰を曲げて足を引きずりながら歩き、ほとんど外に出ることもなく、洗濯物を干す時くらいしか姿を見かけなかった。買い物もタクシーで出かけ、週に3度ほどデイサービスの車が家の前に止まっていました」

この知人男性によれば、息子の芳人さんにも重度の障害があり、寝たきりの生活で、月に数回は千葉市内の病院で専門の治療を受けていたという。

主な家事は大工だった芳男さんがこなしていたようだ。実際に買い物やゴミ出しを行う姿が度々目撃されている。また別の近隣住民によると、芳男さんは軽自動車を購入し、息子の病院通いの送迎も行っていたという。

歯車が大きく狂ったのは、今年3月だ。一家の生活を支えていた芳男さんが脳卒中で倒れ、以降は寝たきりの生活になってしまった。収入は絶たれ、さらに二人の介護に追われることになり、大橋容疑者の負担が一気に増えた。

「最後に姿を見たのは事件の2日ほど前、自宅前でとし子さんに挨拶したのですが、顔色が少し悪く見えたので、気になっていました。狭いコミュニティなのに、ほとんど近所付き合いをしない家族で、とくに芳男さんが倒れてから、その傾向は強くなった。

家族全員が病気となり、とてもじゃないですがとし子さん一人で介護が出来るとは思えなかった。なぜ施設に入れないのか不思議でしたが、狭い地域ゆえに周囲の目を気にして、それも難しかったのかもしれません。ただ、誰の目から見ても、明らかに異常といえる状態でした」(同前)

警察の取り調べに対し、大橋容疑者は「介護に疲れた」という主旨の供述をしているという。元埼玉県警捜査第一課警部補の佐々木成三氏は、今後の展開を次のように解説する。

「現住建造物放火で二人を殺害となれば、死刑になってもおかしくない。ただ介護疲れが動機となれば、温情判決となる可能性が高いです。’19年11月に福井県敦賀市で発生した事件では、介護疲れを理由に義父母と夫の3人を絞殺したとして71歳女性が罪に問われましたが、判決は懲役18年でした。どれくらい生活が追い込まれていたのか。どんな介護状況だったのか。公判維持のためにも、そのあたりの裏付捜査が必要になると思います」

家族を燃やし尽くした放火殺人の動機は、あまりに辛く、悲しいものだった。

警察官の補助を受けながら歩く大橋容疑者。後遺症のためか外出も少なく、近所でも孤立した存在だったという
放火は認めた一方、「息子を殺すつもりはなかった」と殺人容疑は一部否認。殺意の有無についても捜査が続く

『FRIDAY』2021年12月10日号より

  • PHOTO蓮尾真司

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