かが屋・加賀翔が明かす「初小説秘話と父との葛藤」 | FRIDAYデジタル

かが屋・加賀翔が明かす「初小説秘話と父との葛藤」

「お笑い第7世代」を代表するコント師が文壇に進出 粗暴な父との確執、両親の離婚、故郷を逃げるように飛び出したワケ…… 自身のルーツをもとに書き上げたデビュー作『おおあんごう』が話題

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加賀翔(かが・しょう)/岡山県備前市出身。1年半以上の歳月をかけ、処女作『おおあんごう』を書き上げた

「小説の執筆依頼が来たとき、テーマ選びにかなり迷いました。でも、家族と生まれ故郷を描かずに何を書くのか、と思い至ったんです。暗い話ばかりだけど、僕という人間の根幹を形作ってくれましたからね。この作品を読んで、思いっきり笑ってほしい。そう思いながら書き上げました」

処女作を世に送り出せた解放感からなのか、加賀翔(28)の表情は底抜けに明るかった。普段は相方・賀屋(かや)壮也(28)とともに人気お笑いコンビ『かが屋』として活動する「お笑い第7世代」イチのコント師だ。’19年には『キングオブコント』決勝に進出し、テレビで見ない日はないほどの活躍を見せている。そんな多忙な彼が11月10日に上梓した初小説が『おおあんごう』(講談社)だ。昨年8月、「脳波が弱っている」と診断され活動休止したのに加え、「句読点の使い方すら知らなかった」という加賀にとって、執筆は苦難の連続だった。

「正直、かなり辛かったです……。毎朝6時に起きて、仕事に行く前に原稿用紙1枚分書くという生活を1年半以上続けていましたからね。僕は一つのことにしか集中できないので、お笑いの仕事をしているときに、小説のことが頭から離れず『いま僕は何をしているんだろう』と上の空になってしまうこともありました。相方は僕の体調を心配し、『小説、大丈夫か』と、何度も聞いてくれました。あるとき、『ちょっとキツい』と相方に打ち明けたら、『じゃあ仕事をセーブしようか』と提案して、僕を支えてくれたんです。

担当の方も〆切を催促することはせず、書き上げるのをじっと待ってくれた。活動休止から復帰後、執筆を再開すると、文体が変わってしまっていて、結局一から書き直しました。休養していなければ、違った作品になっていたかもしれませんね」

作品の舞台は岡山県の小さな田舎町。粗暴な父の理不尽な振る舞いに翻弄(ほんろう)される小学生の「ぼく」と家族の日常を明るくイキイキと描いている。実の父をモデルにした「父さん」は家族に暴力を振るったり、酒に酔って警察沙汰を起こしたりなど、問題ばかりを起こす暴れん坊。題名にもなった「おおあんごう」とは岡山弁で「バカたれ」という意味で、作中では父の口癖となっている。

両親の離婚を経験し、幼く繊細な心を傷つけられながらも、主人公は父と向き合っていく。やがて上京して芸人になった主人公が父と再会するまでの物語だ。

「地元の岡山県備前市はとても閉鎖的で、僕はその空気が嫌で早く街を出て、芸人になるという夢ができたんです。どんなに辛い過去があっても、いつか『笑い』に変えられるように、その夢を主人公にも託したかった。

主人公同様、僕の両親が離婚したのは小学生のころでした。父親は主人公の父よりも暴れん坊だったんです。離婚すると聞いたときには、『そりゃそうじゃろ!』となぜか爆笑したのを覚えています。母親が父からやっと解放されて安心しましたが、同時に怒りも悲しさもあった。執筆中に『ほんまメチャクチャやったな、あいつ』と、しみじみと思い出すこともありました」

それでも父親だから

そんなメチャクチャだった父の下で育ったからこそ、大人になったいま、感謝することもあるという。

「僕は酒で暴れることは絶対ないですし、むしろ酔っぱらったら異常なほどほかの芸人を褒(ほ)めるそうです(笑)。人を傷つける誹謗中傷は嫌いだし、結婚したら絶対に温かい家庭を築きたい。反面教師だけど、あの父の下で育ってきたからこそ、人間として成長できたことも多かったと思います」

幼少期の暗い思い出と向き合いながら、それでも明るく家族を描き、でき上がった『おおあんごう』。父を描くにあたり、葛藤もあった。

「作品を読んでくださった地元の方々が祖母に『本当に大変やったんやね』と何度か声を掛けたそうですが、その度に『(実際の息子は)もっと暴れん坊やったわ!』とツッコミを入れているそうです(笑)。母は読もうとして、昔のことを思い出し、泣いてしまったと言っていましたしね。

いま父には新しい家族がいて、子供もいます。どこまで父をリアルに描いていいのか、その線引きには苦労しました。あくまで架空の話だし、僕は父だけを悪者にはしたくなかったんです。いまでもわだかまりはありますし、この作品を父が読むと考えると怖い。それでも僕は、父を憎みきれないんです。やっぱり血がつながっていますからね。

本当に嫌いだったら書かないし、もう何年も連絡を取っていない現在でも、つながりを感じています。子供の心を持ったまま大人になってしまったというか、とにかく純粋すぎる人だったのだと、いまでは考えています。この小説を読んでくれた人に父を好きになってもらいたいです」

作家兼お笑い芸人として新たな道を歩み始めた加賀。すでに次なる野望を持っていた。

「コントをしていたからこそ、小説を書く機会をいただけたと思います。恩返しのつもりで、ここから1年間はお笑いに全力を尽くしたいです。相方にも我慢してもらうどころか、サポートもしてもらいましたから。だから、また小説を書くとしたらコントで結果を残してからだと考えています。

でも、2作目を書きたいという気持ちもすでにあります。次に小説を書くんだったら母や祖母が悲しまなくて済むようなハッピーな物語がいいです。恋愛小説とかいいですよね。そのためには恋人を作りたい。あわよくば、結婚もしたいなぁ~(笑)。頑張ります!」

小説という新たな武器を得た加賀。まだまだ快進撃は続きそうだ。

’21年4月、加賀の休養明けにFRIDAYに登場した。賀屋(右)のサポートも大きかったという

「メチャクチャな父に振り回された、切なくも笑える家族の物語です」

作中では岡山弁が多く使われ、備前市の雰囲気や登場人物の顔がありありと思い浮かぶ。父との再会シーンは切ないが笑える
本誌未掲載カット かが屋・加賀翔 「お笑い第7世代」を代表するコント師が文壇に進出「それでも僕は、父を憎めなかった」
本誌未掲載カット かが屋・加賀翔 「お笑い第7世代」を代表するコント師が文壇に進出「それでも僕は、父を憎めなかった」
本誌未掲載カット かが屋・加賀翔 「お笑い第7世代」を代表するコント師が文壇に進出「それでも僕は、父を憎めなかった」

『FRIDAY』2021年12月10日号より

  • 撮影會田園

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