楽天・岸孝之 日本一のカーブの使い手が語る「本当の魔球」

プロ野球スペシャルインタビュー

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
この左足のヒザ下を振る動きが抜群の制球力を生む。右手を身体で隠すことで打者は球種を読みづらくなる

’09年にWBC日本代表候補に選んでいただいて合宿に参加したんですが、そのときに「……無理だな」って思ったんです。当時のWBC公式球は日本のボールより大きく、滑るので普段のピッチングができなかったんです。

ところが、今回(『2018日米野球』)は日本製のボールを使うという。それなら自分のピッチングができる。しかも、33歳で選んでいただいた。年齢を考えると今後、選ばれる可能性は低いと思うので、ちょっとやってみようかなって(笑)。

意外や、東北楽天ゴールデンイーグルスの岸孝之は、11月9日に逆転勝利で終わった日米野球の初戦が“侍デビュー“であった。トリプルスリー男の柳田悠岐(ゆうき)(ソフトバンク)、秋山翔吾、浅村栄斗(ひでと)、山川穂高、中村剛也の西武20発カルテットら猛者揃いのパ・リーグでダントツ1位となる防御率2.72をマーク。通算防御率も3.02と、日本を代表する剛腕――なのだが、メジャー選抜に挑む彼に抱負を聞いても、「今回、(カージナルスのモリーナら)けっこう、スゴい方々が来るって聞いてますけど、僕はよくわからないんで。抱負はとくにないです」と、どこまでも控え目なのだった。

友達にはよく、「マウンドに上がると人が変わるね」と言われてました(笑)。

イメージと違うと言えば、’08年の日本シリーズ(VS.巨人。2戦2勝でMVPに輝く)のとき、僕が投げていたカーブに注目していただいて、いろいろと取材を受けましたけど……僕自身は特別、カーブを意識していなかったので、気の利いたことを答えられなかったですね。

初めてカーブを投げたのは小学校の2~3年生くらいのとき。社会人野球チームの監督をしていた父から「桑田真澄が良いフォームで投げているから見ておけ」と言われて……なんか「カーブを投げてみようかな」と思ったんでしょうね。見よう見まねでテニスボールで投げたんですが、たぶん曲がったんでしょう、楽しかったのを覚えています。

ただ、高校に上がるとスライダーが流行り出して、それからはスライダーばっかりでした。大学でもほぼ、スライダー。

転機は大学4年。日本代表に選んでいただいて、日米大学野球選手権(’06年)で登板したときにカーブを投げたら、相手打者の反応が全然違った。タイミングが取れてなかった。初めて「カーブって使えるんだな」って思いましたね。

アメリカ代表には、先日のワールドシリーズで大活躍したレッドソックスのプライスがいました。

翌年、西武に入ってプロ1年目のオープン戦からカーブを使い始めました。キャッチャーの細川亨さんも「使える」と思ってくださったんだと思います。

沢村賞投手の斉藤和巳氏ら一流投手が岸を「現役で一番のカーブの使い手」と評価。独特の大きく縦に割れるカーブは一度、打者の視界から消えるため、勝負球としても、カウントを取る球としても有効だ。則本昂大ら同僚たちが教えを乞いに来るというが、習得には至っていない。そしてもう一つ、岸のカーブがパの強打者たちに魔球と恐れられる理由がある。「腕の振りが真っ直(す)ぐと同じ」なのである。

へえ……そうなんですか(笑)。

でも、そう思われているのであれば、凄く嬉しいですね。腕の振りは意識しています。ピッチングの基本は真っ直ぐ。なので、どの球種も真っ直ぐと同じ腕の振りになるよう心掛けています。変化球は捻(ひね)ったり、抜いたりするので厳密にはまったく同じにはならないんですけどね。

コツは……「真っ直ぐだと思って投げる」!(笑) 冗談じゃなくて、とにかく投げ込む、身体で覚える。僕はそうやって毎年毎年、やってきましたから。

技術的に意識しているポイントは一つだけ。振りかぶり、右足一本でマウンドに立った後に左足でポンッと蹴るような動きをしてタイミングを取るのですが、この「ポン」だけですね。身体が一塁側に開くクセがあるんですが、「ポン」ができているときは身体が開かずに投げられる。

プロ10年目くらいに見つけて、それからフォームがしっくりきて、コントロールも安定したと思います。防御率を良くする秘訣は何かと聞かれたら、当たり前ですが、「キャッチャーの要求通り投げること」。もちろん、全球とはいきませんが、今季はより多くキャッチャーの要求通りに投げられたから、防御率のタイトルを取れたのかなと思います。

大事なのは制球力であって、カーブは「球種の一つ」と言うクールな岸。最近、怒ったことはありますかとの問いにも「子どもを叱ったくらい……」と苦笑い。最後にあえて聞いた。「魔球とは、最強の変化球とは?」

フォークです!(笑) 自分が投げられないだけに……。練習はするんです。ノリ(則本)に教えてもらって、試合で投げたりもしましたが微妙なんですよ。コントロールできない。速い真っ直ぐとフォークがあれば最強だと思います!

独特のカーブに独特の語り口。ニッポンのエースは己を曲げぬ男なのだ。

ポーカーフェイスで有名な岸の貴重な笑顔。ちなみに好物は牡蠣。決められないので買い物は一人では行かない。「掴みどころがない」と言われるそうだが「それでいいと思います。すべてを知られたくはない」(岸)
本誌未掲載カット
本誌未掲載カット

撮影:ジジ

 

Photo Gallary4

share icon記事をシェアする

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事