3万円と1900円…「海外渡航検査費用」なんでこんなに違うのか | FRIDAYデジタル

3万円と1900円…「海外渡航検査費用」なんでこんなに違うのか

同じ羽田空港内で、出国に必要な検査が15倍も差が。その理由を探ってみた

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外国人の新規入国制限や入国後の行動制限が緩和された11月9日、羽田空港で接種や健康状態の確認を受ける国際線の搭乗客たち。新型コロナウイルスのワクチン接種証明機能が追加されたデジタル証明書アプリ「VeriFLY」の画面はこうなっている(写真:共同通信)
外国人の新規入国制限や入国後の行動制限が緩和された11月9日、羽田空港で接種や健康状態の確認を受ける国際線の搭乗客たち。新型コロナウイルスのワクチン接種証明機能が追加されたデジタル証明書アプリ「VeriFLY」の画面はこうなっている(写真:共同通信)

新型コロナウイルスの国内の新規感染者は減少傾向が続いていたため、これまで控えていた日本からの海外出張は増加傾向にあった。ただ、出国時のPCR検査において、同じ空港内にもかかわらず、検査の場所によって3万円かかるところもあれば、1900円で済むところがあることも判明。

なぜこの差額が発生するのか。10月下旬から約1か月間、アメリカ出張に行っていたジャーナリストの加藤久美子氏が自らの体験をもとに詳しくレポートする。

筆者は10月27日に自動車関係のイベントやそのほかの取材のためアメリカに渡航して約1か月アメリカに滞在し、帰国した。

海外渡航に必要な検査方向や検査の種類は渡航国によって異なるが、11月8日から、アメリカへの入国には自治体が発行する海外渡航者用の「ワクチン接種証明書(2回接種済)」と出国前3日以内に実施したPCR検査または抗原定量検査のいずれかによる「陰性証明書」が求められるようになった。

筆者が出国した10月下旬の時点では必須だったのは「陰性証明書」のみだったが、レストランなどで食事をする際にワクチン接種証明書が必要と聞いていたので取得することにした。自治体のワクチン接種証明は無料であったが、陰性証明書を取得するには有料で抗原定量検査またはPCR検査を受ける必要がある。いくらかかるのかと思って調べてみたところ、検査費用に加え、証明書の発行代をあわせると安くても15000円から、高いものでは約5万円と想像以上に高額で驚いた。

横浜市内のクリニックで検査(抗原検査)3000円+陰性証明書発行5000円=8000円を見つけ、ここに一度予約をいれたが、検査の前日、さらに爆安の検査があることがわかった。木下グループが運営する羽田空港内の検査センターで、一番安い抗原検査なら1900円で受けられることがわかったのだ。

【木下グループ 新型コロナPCR検査センター(羽田空港第一ターミナル)】

●エキスプレスPCR検査(30分) 7,900円(税込)

●PCR検査(最短4時間)2,000円(税込)
※当日搭乗予定の場合、PCR検査単体は不可。クイック検査、またはセット検査の利用が推奨されている。

●クイック検査(抗原定量検査 30分) 1,900円(税込)

●クイック検査(抗原定量検査+PCR検査) 3,300円(税込)

検査結果が判明する時間で値段に差が出ていると思われるが、いずれにせよケタ違いの価格である。ちなみに同じく羽田空港内にある東邦大学海外渡航者PCR検査センターでは英文の陰性証明書+PCR検査で10月下旬の時点で38500円かかっていた。11月1日から3万円に値下げされたが、約15倍の価格差がある。

1900円の検査でもアメリカ入国には問題ないのか?リサーチしたところ、木下グループによる格安検査の陰性証明書でも問題なく日本を出国できたというツイートをいくつか見つけたため、予約していた8800円の抗原検査をキャンセルし、出国2日前の10月25日、「ワクチン接種証明書」を念のため持参した上で、羽田空港内にある木下グループの検査センターに向かった。

検査2日後、デルタ航空の空港カウンターでその証明書を見せるだけで無事出国することができた。アメリカのシアトル空港到着後、いつもより入国審査には時間がかかったものの、持参した「ワクチン接種証明書」はアメリカ入国時の審査で求められることはなかった。

格安検査のワケは?

なぜ、同じ空港内で同じ検査をして陰性証明書をもらうために、最高で20倍もの差が生まれたのか。アメリカに無事に入国したあと、余計に気になったため、アメリカ渡航を予定している人を中心にSNSの書き込みを見てみた。すると、「航空会社によっては木下グループの証明書では難しい」「日本の航空会社は融通が利かないから木下グループの証明書では不可…」などという書き込みが散見された。同じアメリカに渡航するのに航空会社によって認可する証明書が違う、ということなのだろうか。

私がデルタ航空に搭乗する前に確認したときは「木下グループの陰性証明書で問題ない」との回答も得て、同社の公式Twitterでもそう発信していた。では日系の航空会社はどうなのか。

◆全日空(ANA)広報

「弊社の場合、お客様の陰性証明書はチェックインの時にカウンターで確認するので日本語で問題ありません。名前に加えて個人特定できる情報として生年月日やパスポート番号などが必要になるので、それらが入っていない陰性証明書は原則認められません。しかし、陰性証明書には色々な形式があるため、生年月日やパスポート番号が入っていない(木下の)陰性証明書でも別の方法で個人が特定できれば、現場の責任者の判断で有効とする場合もあります」

◆日本航空(JAL)広報

「米国行きのフライトに搭乗する前には、航空会社が乗客の新型コロナワクチン接種および検査状況を確認するため、米国のCDC(Centers for Disease Control and Prevention)に記載の内容を遵守することが義務付けられており、弊社も原則この内容を遵守した対応をとっております。

CDC文中*陰性証明書には、本人を識別する情報を含まなければならない。本人の名前と、少なくとも追加でもう1つの情報(生年月日やパスポート番号)が必要とあります。なお、証明書は日本語で問題ありません」

2社の回答からは、必ずしも「木下グループの証明書はNG」というわけではなさそうだ。では、差額を生み出しているのは何なのか。医療関係者に聞いたところ、検査前の診断や検査結果を伝える際、医師が直接かかわるか否か、で価格が大幅に変わってくるという。

「クリニックや病院が行う検査は検査前に問診を行うなど基本、医師が検査や結果の診断に関わっている。無症状の人にPCR検査を行うことは保険がきかない自由診療に相当するので必然的に値段が高くなる。木下グループの検査は医療法人の監修を受けているが、基本は検査結果のみを伝えるので検査費用が格段に安く設定できる。精度は問題ないはずです」

羽田空港にある「東邦大学羽田空港第3ターミナルクリニック」は、同大学医学部および医療センター大森病院より派遣された医師が医療面接(問診)を行い、健康状態を確認した上で新型コロナウイルス検査を実施している。

「委託先の検査場は、所轄の保健所の正式な認可を受けており、医師の指導のもと厳重なコンタミネーション防止策をとり厚生労働省が認定した検査機器と試薬で行なっております。渡航用陰性証明書は、外務省・経済産業省が定めた証明記載事項を明記し、医師が内容確認をしたのちに署名をしたうえで発行をしております。11月1日からは、渡航用陰性証明書の作成に係る作業工程の一部を自動化するなどの対応を行うことにより価格改定(値下げ)をいたしました」

格安の木下グループの検査でも出国できている現状から、さらに検査費用を下げる可能性については明言を避けた。

一方、木下グループの検査センターの受付の担当者に確認したところ、以下の回答を得た。

「当検査センターで発行している陰性証明書の記載事項は『お名前』『検査日』『検査結果』『検査方法』のみとなります。こちらの記載事項で渡航できるかはお客様ご自身でご利用予定の航空会社、渡航予定先入国窓口へお問合せをお願い致します」

木下の見解では、筆者が受け取った「陰性証明書」には英文の表記はあるものの、パスポート番号や生年月日の記載はなく、現時点では“正式”な証明書ではないという。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の公式ページには「陰性証明書」の必要事項が記載されており、書式は自由だが、「氏名」「生年月日」「検査結果」「検査日」「検査方法」が必要、との記載がある。木下の陰性証明書には、CDCが要件としている個人を特定できる「生年月日」や「パスポート番号」などの情報が入っていないため、“正式な証明書”であると今のところはアナウンスできないと思われる。

しかし、筆者の場合、アメリカ入国時に必要とされる「陰性証明書」は実際、日本を出国する搭乗手続きの際に航空会社のカウンターで確認し、到着後の空港では確認を求められなかった。ゆえに、日本で確認するため英文の証明書は必要なく、日本語の証明書で出国は可能なのだ。英文の証明書というだけで陰性証明書の発行手数料が日本語の2倍3倍(日本語なら3000円のところ英語なら5000~1万円など)になるところもあり、これも差額の一因となっているとも考えられる。

さらに木下グループの広報担当者はこう続けた。

「グループ内に、病院、リフォーム事業、不動産事業、抗菌事業などが揃っており、準備段階でコストを大幅に抑えることで安価な価格で、精度の高い検査体制を提供できるようになりました。試薬や材料メーカーと長期の優先契約を結び、原価を抑えることも実現しています。何よりも本事業は社会貢献事業と考えており、利益度外視で検査をご提供させて頂いております。

検査精度に関して弊社のPCR検査は、リアルタイムPCR法による遺伝子検査を行います。さらに、検査精度を高めるため、厚生労働省が認可している2種類の検査機器を使用し、ダブル検査を実施します。検査機器は医療機関と同等の機器を導入しており、検査所は医療法人社団和光会監修と医療施設の設計・建築の知見をもとに、医療施設に準じた設計と衛生管理を行っています。検体を検査する検査ラボは、厚生労働省が指定する『衛生検査所』に登録済みとなります」

ちなみに木下グループは東京五輪の期間中、選手や大会関係者のPCR検査をした実績もある。前出の医療関係者が指摘するように、同グループの検査精度に問題がないからこそ、出国もアメリカへの入国も可能なのだろう。

11月8日以降、日本入国(帰国)後の待機期間について申請を行い諸条件を満たせば10から3日に短縮されるとした(実際は3日待機が認められるまでには大きなハードルがあるが…)。また、17日からは申請の際にワクチンの接種証明の写しを不要とし、22日以降は誓約書や活動計画書など緩和措置に必要な書類の電子申請も可能になる。このような状況から今後はアメリカを中心にビジネス目的で日本からの出国が増えると予想されるが、出国前の陰性証明書は当面マスト要件であり続けるだろう。

渡航先の国によって入国に関しては諸々の条件が変わってくるため、必ず自分で最新の情報を入手して確認しておきたい。さらに、日系航空会社は(審査が)厳しいという噂もあったが、原稿内で書いてきたように、木下グループの「陰性証明書」で出国できている例は多数ある。筆者の個人的な考えではあるが、「別の方法で個人が特定」されるために、出国の際はパスポートと共に、運転免許証やマイナンバーカードなどを合わせて持参するとスムーズなのではないかと考える。

吉野家USAの看板。ワクチンを接種していてもマスクの徹底とワクチン接種証明書の持参を求めている(撮影:加藤博人)
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アメリカ上陸18日目にして初めて要求された。店内で飲食をする場合はワクチン接種証明書を見せる
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注文した品と接種を行った自治体が発行しているワクチン接種証明書。アメリカのみならず、多くの国で持参が求められるだろう
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  • 取材・文加藤久美子撮影加藤博人

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