おぼん・こぼんが明かした「仲直りして、一番嬉しかったこと」
1時間のインタビューでわかった本当の関係 『水ダウ』放映以降、出演日は毎回、満員御礼! 再ブレークを果たした“お笑い第2世代”のレジェンドが語りつくした
今、『浅草東洋館』(台東区)に、連日長蛇の列ができている。お目当てはベテラン芸人『おぼん・こぼん』だ。今年10月に放送された人気バラエティ番組『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で長年に及ぶ不仲を解消し、電撃的な和解を果たした二人。そんな姿を一目見ようと、劇場は満席状態になることもあるという。
芸歴57年目にして、再ブレークを果たした『おぼん・こぼん』。1時間を超えるインタビューで見えてきたのは、そんな二人の深すぎる“漫才愛”だった。
おぼん「番組の反響はすごいですよ! 放送翌日、東洋館で出番があったんですが、開場前から140組以上のお客さんが並んでくれて、チケットはソールドアウト。放送から1ヵ月経った今もまだ、普段の5倍くらいは来てくれてますよ」
こぼん「コロナの影響で、お客さんより出演者のほうが多いじゃねぇかって日が多かったですから、ありがたいですよ」
おぼん「ただ一番嬉しかったのは『番組を見て私たちも仲直りしました』って手紙が何通も届いたこと。疎遠になっていた家族と連絡を取るようになったという感謝が書いてあったりとか。上司と部下の二人から、ずっと対立してたけど、あの番組を見て『お互いに折れよう』って仲直りしたっていうのもありました」
番組から1ヵ月以上経つが、仲直りして以降、ケンカはしていないという。
おぼん「いままでは舞台で目線が合うことすらなかったんですよ。俺とお客さん、こぼんとお客さんって別々にネタを披露している感じ。でも、今はしっかり目を合わせて漫才できるようになりましたね」
こぼん「プライベートでも、前は居酒屋に入って相方を見つけると、『アカンわ、店変えよう』って出てたんですけど、さすがにそんなことはしなくなった。そしたら驚いたことに、『おぼん・こぼんが一緒に飲んでた』って週刊誌に取り上げられて」
おぼん「熱愛でもスクープされたかのように、しつこく追っかけられましたよ」
こぼん「二人で錦糸町のホテル行ってるとかならまだしも。もちろんそんなことはないんですけどね(笑)」
おぼん「そら、絶対ないわ(笑)」
10年に及ぶ冷戦期にピリオドを打った二人。その背景には、変わらない漫才への想いがあった。
おぼん「オモロい漫才がしたい、それだけですよ。ドッカーンとウケて、『いい加減にせぇよ』って漫才が終わっても、まだお客さんが笑ってる。その笑い声を背中に受けながら、舞台袖に引き返す瞬間がたまらないんですよ。何度経験しても、それをまた味わいたいんですよ」
こぼん「あとはまぁ、娘に泣きながら『仲直りしてほしい』なんて言われたらね。もちろん、ウケる漫才をやりたいっていうのは根っこにありましたよ」
おぼん「もう少ししたら正月番組の仕事もあるから、そこではぜひ新ネタをやりたいですけどね。せっかくこういう形で人様(ひとさま)に注目してもらえてるわけだから、舞台上でケンカし始めて、仲直りするみたいなのやったら、ウケるんじゃないかなとかは考えますよね」
こぼん「我々には、有名なギャグもないしね。でも、1時間もらえれば、その時間を誰よりも楽しませる自信はあります。『おぼん・こぼん』のスタイルは“アンサンブル”なんですよ。漫才もやれば、次の瞬間にはタップダンスをやったり。歌もやるし、楽器も弾(ひ)く。エンターテインメントショーが好きなんですよね」
おぼん「よく『おぼん・こぼんは器用だから』って言われるけど、それは違う。ダンスひとつとっても、ちゃんとレッスンに通って、一生懸命努力してきたからできるんですよ」
“第7世代”への想い
’60〜’70年代にデビューした“お笑い第2世代”の一員として一世を風靡した二人。漫才界ではレジェンドとなる二人だが、“第7世代”の活躍をどう見ているのか。
おぼん「ユーチューブなどで先輩たちのお笑いも見放題だから、技術もあって、たしかに面白い。ただ、これは番組の作り方のせいかもしれないけど、最近の若い子らが、掛け合いや間の取り方でじっくり組み上げていくのではなく、飛び道具みたいなネタだけやってるのを見ると、かわいそうだなって思いますね。この間も、笑福亭鶴瓶と今田耕司が司会やってる番組を観ましたけど、『しょーもな』って。ネタ時間が1分しかなくて、それで次々にネタ見せられてもね。漫才を愛してる二人が番組の司会やってるのを見て、より切なくなりましたね」
こぼん「最近のお笑いは、“出会い系”みたいですよね。次から次に新しい人を出して、その中で一組でも視聴者の気に入る芸人が見つかればマッチング成立みたいな(笑)」
おぼん「芸人は営業でお金を稼ぐことが基本。でも、今のテレビに出ても、奇抜さばかりで技術は身につかない。それがもったいない」
こぼん「芸人を育てようって人が今はいないでしょう。だから、ちょっと無責任なんじゃないかなと思いますよね」
現在の漫才界のテッペンである『M-1グランプリ』の在り方についても、独自の目線から切り込む。
おぼん「あれ、タレントが審査するでしょ。審査するのは、局のプロデューサーや事務所のチーフマネージャーなど、芸人を育てる立場にある人がやるべきですよ。そもそも見る人によって受け取り方が違う。審査なんてできないと思うんですけどね。『ダウンタウン』も審査員なんてやりたくないんじゃないかな。
二人とは昔、大阪のネタ見せ番組で一緒になったんだけど、『審査なんてされてたまるか』って不満だったのか、あいつら3分の出番の間、一言も何もしゃべらんかったことがあって」
こぼん「『やすしきよし』のやっさんに、『チンピラみたいなことしやがって』って楽屋で殴られてましたよ。やっさんのほうがチンピラみたいでしたけどね(笑)」
おぼん「あの人はチンピラやない、ヤクザや(笑)」
こぼん「とはいえ、『俺たちの好きなようにやる!』って、そんぐらい気概(きがい)のある生意気な若手が出てきてほしいね。まぁ『ダウンタウン』は再注目してもらうきっかけを作ってくれたわけですから、感謝していますよ(笑)」
二人揃(そろ)って今年度で73歳を迎える。最後に、今後の目標を聞いてみた。
おぼん「憧れは『松鶴家千代若・千代菊』師匠なんですよ。80歳を過ぎても舞台
に立っていたんですが、足腰が悪いせいで、袖から出てきても全然センターマイクに辿(たど)り着かないんですよ。ヨロヨロしちゃって。その姿だけで、お客さんは笑ってる。そうなっても続けたいですね」
こぼん「長生きも芸のうちってことですよね。健康ならいつまでも続けられる仕事ですから」
おぼん「せっかく仲直りしたからには、新ネタだってやりたいし、100歳になっても漫才、続けたいですよ。ヨボヨボのじいさんが舞台でタップダンスやってるってだけで、画になるでしょう?」
漫才愛により不仲を乗り越えた二人。一日でも長く舞台に立ち続けてほしい。







『FRIDAY』2021年12月10日号より
取材・文:味道苑PHOTO:結束武郎