創刊20年『LEON』元編集長が告白「ちょいワル」誕生秘話 | FRIDAYデジタル

創刊20年『LEON』元編集長が告白「ちょいワル」誕生秘話

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ジローラモとは公私に仲が良く、国内の自動車レースによく出場するという。運転席にいるのが岸田氏。16年ごろ撮影

う~ん……渋い……カッコイイ……。

立ち居振る舞いだけでなく、着ているモノからも存在感が漂ってくる。ブラウンのライダースジャケットに、カシミアのズボンが落ち着いた雰囲気にピッタリ。左腕に見えるのは、黒い革ベルトのクロノグラフ(ストップウォッチ機能を備えた高精度の腕時計)だ。男性はゆったりとソファに腰を沈めると、静かに話し始めた。

「服装を気にするだけで、雰囲気をガラリと変えられるよ。注意すべきは、『高級ブランド品を身につければカッコ良くなれる』わけではないということ。大切なのはサイズ感だね。年をとるとダボっとした服を着がちになるけど、身体に合ったサイズを選ぶべき。グッとオシャレな印象になるよ」

男性の名前は岸田一郎(70)。元『LEON』の編集長だ。今年で創刊20周年を迎えた同誌は、イタリア人タレント、パンツェッタ・ジローラモをモデルに起用し、「ちょいワルオヤジ」ブームを起こしたミドルエイジのメンズファッション誌。元気な中高年男性を、大量に生み出す原動力となっている。

岸田氏が、『LEON』創刊の舞台裏を明かす(以下、発言は岸田氏)。

「当時ファッション業界のメインストリームは、10代から20代の若者だった。30代40代のオヤジは結婚し家庭を持っているので、ファッションに興味が薄いと思われていたんだよ。でもオヤジたちは可処分所得が高く、購買力も高い。それまでにもライフスタイル誌の編集長をしてきた経験から、切り口が彼らに響けば、オヤジ向けファッション誌は成功すると考えたんだ」

考えたテーマが「ちょいワル」。いったい、なぜーー。

「学生時代を思い返してよ。女性にモテるのは、生徒会長などの優等生ばかりではない。型破りなヤンキーの人気が高かっただろう。

『ちょい』という言葉を使ったのは、日本人の気質を考えたから。我々は『目立つのはイヤだけど、オレは周囲のヤツらとちょっと違うんだ』という感覚を好みがち。だから『ちょい』とか『プチ』という言葉が、よく使われるんだよ。『女性にモテるための中高年向けファッション誌』を作るなら、『ちょいワル』はキャッチーなコピーだったね」

米国でも英国でもなくイタリアな理由

来日した名優ブラッド・ピットと。右はジローラモ。02年ごろ撮影

イメージしたのは、米国でも英国でもフランスでもなくイタリアだ。しかもモデルに起用したのは、当時ほとんど無名だったジローラモである。

「英国やフランスは、優等生のイメージが定着し『ちょいワル』に合わない。その点『イタリアのオヤジ』のお茶目なちょいワルスタイルが、『LEON』にピッタリな男性像だったんだ。

モデルは、最初から一流タレントを使うつもりはなかったね。例えば木村拓哉さんにお願いしても、カッコ良すぎて読者は親近感がわかないだろう。大切なのは『がんばればオレもなれるかも』と、読者に思わせること。その点、NHKのイタリア語講座に出演していたジローラモさんはうってつけだった。彼は決して身長が高くなく、失礼ながら2枚目でもなかったから」

岸田氏は創刊前の見本誌の表紙で、ジローラモを下着1枚の姿で登場させた。広告代理店を集めたプレゼンテーションの場で、見本誌を配布。参加者からは「この人、誰ですか?」と、反応はイマイチだった。

「自分なりの、うぬぼれ的勝算はあったよ。以前から中高年男性をターゲットにした雑誌は存在したけど、高級ブランド品を紹介したカタログ誌ばかり。高いモノを身につけているだけでは、女性は興味を持ってくれないからね。

イイか悪いかは別として、『LEON』は『オヤジがモテる』という目的を達成するために、どんな方法がベストかを真剣に追求した雑誌だった。中高年男性にも女性にお近づきになりたいという欲望があるんだから、知りたいノウハウだろう。『LEON』は、スグにオヤジのブランド雑誌になったね。発行部数は10万部程度だったけど、クライアントからの出稿がどんどん入り、広告収入が1号で5億円を超えたこともあるんだ」

女性がトイレに行っている間に……

イタリアのファッションモデル、モニカ・ベルッチ(中央)と。03年ごろ撮影

岸田氏があげる「モテるノウハウ」の一つが、牛肉の部位を覚えること。女性と高級焼肉店に行くだけでは、なかなか会話が盛り上がらない時もある。そんなとき部位を知っていれば、スキンシップもはかれるという。「ミスジってどこ?」と聞かれ、「キミのこの辺かな」と。もちろん、これが許される関係であることが前提だが。

「『下品』という批判は見当違いだね。そもそも現実を追求する、たかだか雑誌に、理想や教養を求めること自体間違っている。それを求めるなら、ちゃんとした書籍や専門書を読まないと。雑誌は薬局のようなモノ。風邪をひいた時、お腹が痛くなった時、それぞの症状に合った薬を出せばイイ。大掛かりな手術ななんかできないよ」

岸田氏は女性の好感度を上げるため、ピアノの演奏も勧める。

「オシャレなレストランで会計をする。お相手の女性が、店を出る前にトイレに立つ。戻ってくると、なんとオヤジが店内のピアノを弾いている。何も完璧に弾ける必要はない。女性が戻ってくるまでの間、7小節か8小節弾ければイイんだよ。それだけで、女性の印象はガラリと変わる。この程度の努力で意中の女性にモテるなら、誰でも必死でピアノを覚えるだろう」

創刊当時の『LEON』読者は、現在50代60代に。モテるノウハウを知っているため、年を重ねても女性からの支持は若い年代に比べ圧倒的に高いという。

「長く生きているからこその経験値なんだろうね。70歳になっても、ボクは女性から声をかけられるから。大人しい10代20代の若者より、エネルギーがあるのかな。高級品を身につけるだけでは芸がない。女性にモテるためには、それなりの創意工夫をすることが大切なんだよ」

インタビュー後、岸田氏が乗り込んだのは大型の高級車ではなく、2人乗りのコンパクトな小型車だ。

「スポーツカーも持っているけど、移動を考えたらコンパクトカーのほうが合理的だろう。目的に合わせて手段を選べることも、モテる男の条件じゃないかな」

う~ん……カッコイイ!

岸田一郎 きしだ・いちろう 51年、大阪府生まれ。日本大学経済学部卒業後、フリーライターを経て世界文化社へ入社。男性誌『Begin』『時計Begin』などの編集長を歴任。00年に主婦と生活社に移籍。『LEON』を立ち上げる。現在はセミリタイアして、日々のリアルをYouTube「岸田チャンネル」で展開中。

インタビュー時に岸田氏がつけていた「ボヴェ」の時計。約80万円。時刻表示が干支なのがオシャレ
「ドルチェ&ガッパーナ」のライダースジャケット。約60万円
「ブルネロ クチネリ」のカシミヤパンツ。約20万円
「エルメネジルド ゼニア」の靴。約15万円
グッチのセーター(約15万円)とエトロのスカーフ(約5万円)
「『フライデー』には散々悪口を書かれましたよ」と岸田氏
インタビュー後に手を振って別れる。日本では限定80台しかないというベンツの小型車「スマート BRABUS」
  • 撮影西崎進也

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