「副操縦士逮捕事件」酔いどれパイロットが世界の空を飛んでいる

JAL副操縦士がアルコール基準値超えで逮捕・起訴。事件は氷山の一角?

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11月1日に行われたJALの謝罪会見では、進俊則専務(左から2人目)らが「再発防止に取り組む」と述べた

「今の飛行機は、緊急事態になったら機長一人では操縦できないようになっており、全ての分担が決められている。副操縦士だったからと軽く考えたら大間違いです。それにしても、あの酒量はちょっと考えられない。私を含め、航空業界の人間はみんなびっくりしています」(元日本航空機長で航空評論家の杉江弘氏)

日本航空(JAL)の副操縦士(42)が英国の警察当局に逮捕された。彼は現地時間の10月28日午後7時、ロンドン発羽田行きのJAL便に乗務予定だったが、飛行機に向かう専用バスの運転手が酒臭いことに気づき、空港の保安担当者に通報した。自供によると、前日の午後6時から深夜0時過ぎまで、滞在先のホテルでワイン2本、ビールの小瓶3本、缶ビール2本を飲んだという。

それにしてもなぜ、フライト前にこんなにも多量の飲酒をしたのだろうか。

「ひとつの可能性として、過度のストレスがあります。国際線の場合は時差との戦いなんですよ。寝付けなければ、睡眠不足となり、フライト中に注意散漫になることもありえます。お酒によって寝付きを良くしようと思った可能性はあるかもしれません」(同じく元日本航空機長で航空評論家の小林宏之氏)

しかも搭乗前の打ち合わせ時に、JAL独自のアルコール検査が行われていたが、それはパスしていたという。不可解なことだらけだ。JALの広報は話す。

「今回の件を受けて、国内では配備が完了している新型アルコール検査器を海外でも配備することが現時点で決まっています。一度勾留が解けたタイミングで弊社社員が本人に話を聞きましたが、現在は再び英国の警察当局の管理下で勾留されており、具体的な勾留施設については私どもも把握しておりません。弊社としましては裁判の判決を受けて、厳正かつ適切な処分を下す予定です」

JALをはじめ航空各社には乗務12時間前からの飲酒を禁止するルールがあるが、この制度にも問題があるという。

「新興航空会社やLCCでは、夜着いて朝早くに出るというフライトのパターンが増えている。そうすると、どうしても飲みたい人は部屋でこっそり飲んでしまう。これは逆に危ない。実態に合わなくなっているんですね」(前出・杉江氏)

今回の騒動の直前の10月25日には、全日空の子会社の40代機長が体調不良を訴え、パイロットを交代し遅延が生じたが、これは二日酔いが原因だった。

「12時間以内に飲んでいることがわかり、おそらく呼気検査に引っかかったのを、『本人から体調不良の申し出があったのでフライトを遅らせた』という建て前にしたんでしょう」(前出・杉江氏)

操縦士の「体調不良」というアナウンスは、実は飲酒の問題である可能性が高いというのだ。『腐った翼ーJAL消滅への60年』の著者である森功氏が話す。

「かつてのJALのパイロットはエリートで、特に国際線のパイロットともなれば渡航先でもてなされるというのが普通でした」

しかし、’85年に日航機墜落事故が起こり、JALの安全に対する意識は格段に高まった。ところが――。

「’10年の経営破綻で人件費が削減され、パイロットの数はANAを下回るようになり、待遇も冬の時代に入りました。しかし、最近はパイロット不足で再び厚遇されるようになってきている。機長出身の植木義晴氏が社長(現在は会長)に就任したことも大きい。植木氏は’13年度から人件費を100億円以上も増やし、機長は48歳モデルで月収200万円近い。このような流れの中で、パイロットの意識が緩んだのではないでしょうか」(森氏)

国土交通省は航空乗務員の飲酒の基準を強化するため、有識者による検討会を設置すると発表したが、遅きに失した感は否めない。検査をすりぬけた酔いどれパイロットがいまも世界の空を飛んでいる可能性は高いのだ。

副操縦士の飲酒は海外メディアでも大きく取り上げられた
JALは世界中から厳しい批判にさらされている
副操縦士はヒースロー空港から飛び立つ前に逮捕された

写真:共同通信社(JAL本社) 時事通信社(ヒースロー空港)

Photo Gallary4

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