田中前理事長逮捕で日大事件を連日報道する新聞社の「本気と苦悶」 | FRIDAYデジタル

田中前理事長逮捕で日大事件を連日報道する新聞社の「本気と苦悶」

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2018年7月、自宅から関係者にガードされて出勤する田中容疑者。12月1日に日大の理事長辞任の意向を示した(撮影:蓮尾真司)

脱税の疑いで逮捕された日本大学の田中英寿容疑者(74)が12月1日、理事長を解任された。アマチュア相撲の学生横綱から、大学職員、理事、常務理事となり、2008年に理事長就任。5期13年にわたり、権限の集約と側近重用で築き上げた「田中王国」が崩壊、ついに終焉の時を迎えた。

連日、新聞、テレビは田中容疑者の金まみれの所業をこれでもか、これでもかと伝えているが、実はマスコミも日大とのビジネス上の関係は浅くはない。たとえば今年4月8日の朝日、毎日、読売、スポーツニッポン、日刊スポーツ、スポーツ報知には、日大新入生の入学を祝う新聞広告が掲載された。さらに昨年9月30日にさかのぼると、「日本一教育力のある大学を目指します」という広告が朝日、毎日、読売に加え、日本経済新聞にも掲載された。「日本大学は日本一教育力のある大学を目指します」というキャッチコピーが大きく掲げられ、田中前理事長の顔写真とコメントが載っている。

いうまでもなく、新聞社の収入源は販売と広告が二本柱である。様々な新メディアが誕生する中、費用対効果から新聞への広告掲載を取り止める会社も出ている。そんななか、少子化で学生確保に奔走する私立大学は一部の新聞にとっては「お得意様」ともいえる。日大はその一つだった一面がある。

今回のスキャンダル以前から、各紙の社会部は田中容疑者の疑惑を洗い出そうと取材を重ねてきた。しかし、ある新聞社では、一部のネタは紙面化されたものの、目の前の日大マネーに手を伸ばすために、田中容疑者に配慮したケースもあったという。

「古い話ですけど」と前置きしてその新聞社の関係者が昔の話を語ってくれた。

「社会部が書いた記事に怒った田中理事長が『あそこには2度と広告は出さない』と、ずっとスルーされていたんです。それが7、8年前に突然、広告が掲載されました。なぜ載ったんだと調べたら、社の役員が広告料ほしさに田中理事長に頭を下げたそうです」

その後、東京地検特捜部によって事件化されると、「恐怖政治」「独裁者」「暴力団の影」などのおどろおどろしいフレーズが各紙面を飾る。記者、編集者は「やった、やった」だろうが、一部の社の広告営業担当、あるいは役員のなかには、一連の報道に苦虫を噛んでいるものもいるのではないか。

また、日大は一部のマスコミ関係者の転職先でもあった。2018年のアメフト部悪質タックル問題の際、内田正人監督と井上奨コーチ(いずれも当時)の記者会見を仕切ったのが、共同通信OBだった。それも経済部長や論説委員長を歴任した大物である。

日大関係者によれば「共同だけでなく、大手各社のOBが定年後の再就職先として広報部で仕事していました。何かあったときの情報収集の役割も担っていますが、実際に役立っているのかどうかは疑問です。新聞社は封建的というか、体育会系の体質がありますが、最近は後輩に口を出すとか、頼みごとは簡単にはできなくなってきましたから」。

また、田中容疑者は日本オリンピック委員会(JOC)の副会長を務めていた。およそ月1回開かれる理事会には毎回出席していたが、いつも会議開始直前に現れ、一言も発言せず、誰も寄せつけない雰囲気で閉会と同時に去っていった。

JOC関係者に「あの人がなぜ副会長なのか」と質すと「本人がなりたいというから、根回しをしたんだ。いろいろ便宜を図ってもらっているからな。あまり、深く考えるなよ」と脅しまがいの返答があった。この幹部が語った「便宜」とはいったい何だったのだろうか。

カネや人事で、マスコミと日大に少なからぬ関係があったことは事実。さまざまなところにアンテナを張りめぐらせ、肝心かなめのポイントを抑えられた社もあった。多くは日大サイドから伸びてくる手を払っただろうが、なかには、大きく、分厚い田中容疑者の手のひらの上で転がされてきた組織もあるだろう。今回の逮捕と、それについての報道が影響して、日大からの広告が打ち切られるのでは…と苦悶している社もあるはずだ。

反対に、もしもそれを「これまではやりたい放題やられてきた」と感じているのであれば、これから事件の本筋解明を徹底的にやるしかない。本気の見せ所だろう。

  • 写真蓮尾真司

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