発信はOKでも仕事はさせない…「生き埋め」にされた高市早苗 | FRIDAYデジタル

発信はOKでも仕事はさせない…「生き埋め」にされた高市早苗

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あの時のスポットライトはいまや…(AFLO)
あの時のスポットライトはいまや…(AFLO)

女性初の宰相に最も近いといわれる自民党の高市早苗政調会長に試練が訪れている。9月の党総裁選への出馬を機に保守層の心をガッチリとつかんだ高市氏だが、そのタカ派色の強さから「主演女優」になることへの警戒が党内で急速に広がりつつあるのだ。

これまで女性たちのキャリアアップを阻んできた「ガラスの天井」。高市氏はそれをぶち破り、最終ゴールへたどり着くことはできるのだろうか。

「高市包囲網」

今、政府・与党内には「高市包囲網」とも言われるトライアングルが存在する。構成するのは、岸田文雄首相と茂木敏充幹事長、そして公明党だ。岸田氏は9月の自民党総裁選でこそ保守派の歓心を誘う主張を重ねたが、そもそもがリベラル派を包容する宏池会の会長である。「タカ派色の強い高市氏とは合うはずがない」(自民党中堅議員)とされる。

首相が党運営を任せるのは、信頼が厚い麻生太郎副総裁と茂木幹事長で、この3人は頻繁に会談。時には松野博一官房長官を含めた「2プラス2」で政府・自民党の息を合わせることに注力している。政調会長は、党内議論を通じて国政選挙の公約とりまとめや政府への提言などを担うが、11月25日に開かれた自民党の「新しい資本主義実行本部」の初会合で雛壇に座ったのは、岸田首相(党総裁)や茂木幹事長、甘利明前幹事長らで、高市氏の姿はそこになかった。

全国紙政治部記者が語る。

「新しい資本主義は、岸田総裁の一丁目一番地といえます。そこに政策責任者である政調会長が不在というのは意味がある。岸田氏には党の政策も自分と茂木氏でまとめていこうという考えがあるのでしょう」

麻生氏を含めた3人に共通するのは、派閥の会長であることだ。それに比べて高市氏は総裁選の国会議員票で2位(114票)を獲得したとはいえ、派閥に属さない「一匹狼」。河野太郎広報本部長や野田聖子男女共同参画担当相を含め、岸田氏は先の総裁選で争った3人を要職に起用したものの、「派閥を率いる者とは格が違う」(自民党ベテラン)との前提は消えない。

公明党が衆院選公約に掲げた18歳以下の子供を対象にした10万円相当の給付をめぐる政府・与党協議でも、高市氏は「蚊帳の外」だった。高市氏は「自民党の公約とは全く違う」と異論を唱えたが、党ナンバー2の茂木氏と公明党の石井啓一幹事長による会談で給付案は決着。自民党内の異論を反映させることができず、最後は「政調の手の及ばない部分で…」と悔しがるほかなかった。ある自民党議員は「首から上で発信はさせるが、体を埋めて仕事をさせない状態」といまの高市氏の現状をたとえた。政治的な生き埋めとは、まさにこのことであろう。

与党担当のテレビ局記者が解説する。

「茂木氏は高市氏が暴走することを警戒していると思います。それならば自分が調整する、と。『平和の党』を金看板とする公明党も外交・安全保障政策でタカ派色の強い高市氏は苦手で、なるべくならば幹事長同士、党首同士で物事を決めていきたいという本音がうかがえます」

「花形ポスト」の1つといわれる政調会長でありながら、影が薄くなりつつある高市氏は今後どうなってしまうのか。全国紙政治部デスクは「高市氏が飛躍するか、終わった人物になってしまうかは安倍晋三元首相次第です」と断言する。

高市氏は安倍元首相と政治信条が近く、自民党入党後の政治活動の大半を共に歩んできた。2006年の第1次安倍政権で沖縄・北方担当相として初入閣し、2012年末に安倍氏が再登板を果たした後も総務相や自民党政調会長を歴任した。すべての要職経験は安倍首相時代にある。

その安倍氏は、ジャーナリストの櫻井よしこ氏と対談した月刊誌「WiLL」12月号で、「菅政権下で行われた地方選や補欠選で、自民党は苦しい戦いを強いられた。原因は何かと考えたとき、まず浮かんだのが保守層の離反。自民党のリベラル化に疑問を抱く保守派が増えているということです」と語っている。

保守派を代表する宰相候補として国家観が近い高市氏を総裁選で全面支援し、今もなお後ろ盾になっているということである。

岸田首相が日中友好議員連盟会長を務めた「親中派」の林芳正衆院議員を外相に起用し、冷え込んできた中国との距離感を修正する中で、対中強硬派である安倍氏ら保守政治家の警戒心は高まっている。来年は2月に北京五輪が開幕し、日中国交正常化50周年の節目にもある。「すべては来年にかかっている」。安倍氏に近い自民党中堅議員は不気味な笑みを浮かべる。

岸田首相が香港や新疆ウイグル自治区の人権問題を無視して北京五輪に政府高官を派遣したり、習近平国家主席ら中国要人の国賓来日を実現したりすれば、来年夏の参院選を前に保守派が「岸田おろし」で決起する可能性はある。もちろん、代わりとなる宰相候補は高市氏というわけだ。

11月21日にはツイッター上に「#岸田総理の辞任を求めます」とのハッシュタグがトレンド入りし、その投稿者には高市氏の支持者も目立った。

「残念ながら勝利は叶わなかった。それでも私はあきらめません。歩みを止めず、戦いを続けて参ります」

月刊誌「WiLL」12月号で、総裁選敗北からの再起を誓った「保守派のヒロイン」が、1年後に宰相へと上り詰めている可能性は必ずしも小さくはなさそうである。

  • 取材・文小倉健一

    イトモス研究所所長

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