KOC4度決勝進出のGAG福井が語る「コント界の大変化」 | FRIDAYデジタル

KOC4度決勝進出のGAG福井が語る「コント界の大変化」

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

今シーズン感じた「キングオブコント」の変化 

“ひくねと”(低くねっとりとした声)と称される独特のツッコミで知られ、キングオブコント決勝に4度進出した実力者でもあるGAG・福井俊太郎。現在、埼玉の大宮ラクーンよしもと劇場を中心に活動するユニット「大宮セブン」のメンバーとしても活躍中だ。

そんな彼は、今年のキングオブコントに何を思ったのか。大会に挑む姿勢が変わったターニングポイント、若い世代のコントユニットに感じること、東西のコントにおける見せ方の違いなど、コントにまつわる様々な事情について話を聞いた。

(撮影:スギゾー。)

僕らとしては納得の結果…去年よりウケてるぐらいじゃないと通らない

――今年のキングオブコントは残念ながら決勝進出ならずでした。率直な心境をうかがえますか? 

福井:例年ある準決勝2日間のうち、今年は1日目にあまり手応えを感じなかった。しっかり2日ともウケた人たちが決勝に行ったと思うので、ぜんぜん僕らとしては納得の結果です。去年までは、「ミスはなかったな」「やり切ったな」という感じがあったんですけど、今年はなかった。初日に「ちょっとよくないなぁ」という印象があったんですけど、改めてそういう反応がモロに響く大会だなと思いましたね。

――YouTubeチャンネル「GAG福井の『ひくねとチャンネル』」の中で作家のオノウエさんは、「会場の奥のほうまで笑いの圧が届いていた」とおっしゃっていましたよね。

福井:オノウエくんが音出しをやってくれた2日目は悪くなかったんですけど、初日がちょっと弱かったなという感じですね。2日間のうちどっちかが爆発的にウケて決勝に行くパターンもあると思うんですけど、僕らに関してはないでしょうね。もう何回もお世話になってるし、何だったら去年よりウケてるぐらいじゃないと通らないだろうなと勝手に思ってます。

大会のカラーみたいなものがガラッと変わった 

――今年は例年にも増してキングオブコントが盛り上がった印象です。その要因はどこにあると思いますか?

福井:やっぱり一番は審査員の方が変わられたことでしょうね。ツイッターで知ったんですけど、今年は窓に決勝進出メンバーの写真をつけたタクシーが100台ぐらい都内を走行してたらしいんですよ。大会サイドの力の入れようが違うというか、“今年は勝負の年”みたいに僕には映ってました(笑)。 

大会の大きな変化としては、「ネタを書いている方が審査されていた」ってことでしょうね。去年までの大会は脚本を審査するというよりも、プラスアルファでバカバカしさ、単純にどれだけ審査員の方々が笑えたかも審査の基準に入ってたんだろうなと思うんです。僕自身、そういう大会だと考えていましたし。 

ただ今年は、もう一つ脚本の面白さとか、ネタを書いてる方だからこそ見るような基準が加味されたのかなと思いました。たとえば、「この設定は思いつかないからすごい」みたいなこととか。バカバカしさにプラスして脚本の強さ、作品性が審査基準に入っていたように感じます。男性ブランコをはじめ、今年の大会にバチッと合うコントがいくつかあった気がしますね。 

たぶん、まったく同じネタを、去年やるのと今年やるのとでは点数も違っていただろうなと。今年からと言っていいのかわからないですけど、ちょっと大会のカラーみたいなものがガラッと変わったなとは思いました。

――決勝進出者の平均年齢もグッと若くなりました。世代的な影響もあってか、キャラコントと構成がうまく融合されていたものが多かったように感じます。

福井:世代交代的な印象は僕もすごく感じました。単純にネタのクオリティーも今年の10組はみんな高い。もちろん毎年高いんですけど、今年はとくに高かったなと思いましたね。 

ただまぁもう一度、ザ・ギースさんとか僕たちとか、ちょっと一つ上の世代の人たちの年がまた来るんだろうなとは思いました。それがいつになるのかわからないですけど、その兆しが見えるまでは僕らぐらいの世代が苦しくなるかもしれない。別に詳しいわけではないですが、ファッションの世界もそうだと聞いてます(笑)。

バカバカしさだけでは勝ち上がれなくなった。研ぎ澄まされてちょっと怖いなって…

――2008年からキングオブコントにエントリーされていて、これまで4度も決勝に進出されています。大会の初回と今とではコントの潮流に違いはありますか?

福井:演劇とお笑いの間みたいなコントが主流になって来たのはここ最近ですよね。2008年はキングオブコントが立ち上がったばかりで、大会の色がはっきりと固まっていなかった印象があります。当時はすごいバカバカしいものとか、素で面白い方々が出て会話するとか、今よりもっといろんな種類がありました。 

そこから時間を掛けて大会の色が出始めて、どんどん研ぎ澄まされていったイメージです。技術面も高くないと勝負しづらくなったし、バカバカしさだけでは勝ち上がれなくなった。より“真剣”というか、人が切れる刀ぐらいになって来てる。だから、ちょっと怖いなって思います(苦笑)。

――大会の方向性が決まったのは、どのあたりからだと思いますか?

福井:僕が「あ、ここまで研ぎ澄まされた大会になったのか」と一番感じたのは、2013年にかもめんたるさんが優勝された時です。まだ芸人審査の頃(2008年~2014年までは準決勝で敗退した芸人が審査していた)だったんですけど、あの審査員席に座っていたほとんどの芸人が思ったんじゃないかな。 

「この大会に1年間すべてを懸けないともう勝てない」と思ったのを鮮明に覚えてます。すべてキングオブコントに時間と労力を割こう、となったのはあの大会がきっかけですね。あそこからみんな背筋がシャンとなった感じはします。

――今年は舞台装置を使用していたり、ハートフルなコントが多かったりしたのも印象的です。この点についてはどう思われましたか?

福井:時代に合わせて意識的にそうなったというよりも、若い世代でずっとハートフルなコントをやって来た世代が、今になって世に出始めたって印象があるんですよね。ちょうど僕らぐらいの世代から、ハートフルな着地に向かうコントが多くなった気がします。ただ、10年ぐらい前は「それってお笑いじゃないよね」みたいな風潮があったんですよね。 

今の若い世代は、学校教育とか時代の風潮が体に染みついてるのもあるでしょうけど、もともとハートフルなものをやっていてそのまま出て来たという感じがしますね。僕の中では、男性ブランコとか空気階段とかってそういうイメージがある。ネタの中に愛がある感じというか。それに加えて、見る層においても同じ世代の人たちが育って来てるみたいなことかもしれないですね。

事務所の垣根超えた活動「吉本の劇場サイドも変わって来てる」

――空気階段・水川かたまりさんは「コント犬」、ザ・マミィ・林田洋平さんは「コント村」、ニッポンの社長は「関西コント保安協会」というコントユニットでも活動していて、軒並みキングオブコントで結果を残しています。

福井:僕らぐらいの芸人って、「みんなで肩組んでやろうよ」みたいなのがダメとされた世代で。そういうことすると、上の方から「お前らしょうもないことしてんな」みたいに言われそうな空気がすごくあった。僕はそういうのが得意じゃなかったんですけど、その世代で生きて来た芸人ではあるんです。 

そのうえでコント村やコント犬をどう思うかと言えば、「うらやましいな」っていう一言ですね(笑)。面白い人たちが集まって、お互いのコントを見ながら「面白いの作ってるな。こっちも負けてられへんな」みたいな感じですよね。すごく風通しのいい環境で切磋琢磨してコントをやってるから、そりゃみんなレベルアップしていくよなっていう。

――とはいえ、福井さんも「大宮セブン」のメンバーです。決まった劇場でネタを磨くのと、いろんな会場でネタやトークを披露するのとで違いはあるのでしょうか?

福井:あるかもしれないですね。やっぱり吉本だけでやってると、常識みたいなものが固まっちゃうので。それこそ今、かが屋、サンシャイン、トンツカタンとか、毎月5、6組ぐらいのメンバーが集まって幕張の劇場(よしもと幕張イオンモール劇場)で「東京エモーショナルコント」ってイベントをやってるんですよ。そういうのって僕らぐらいの世代からするとあり得ないというか。吉本の劇場サイドも変わって来てるなと思うんですよ。 

昔は他事務所の人たちに場所を貸すってこともなかったし、「その人たちが売れるようなことをすんな」みたいな風潮がちょっとあったと思うんです。今はそれがもう許されてて、みんなで頑張れよってなってる。あと芸人たちのネタを見る目も鋭いから、面白い人たちが面白い人たちを見つけて、仲間にすることで自分たちもレベルを上げてっていう相乗効果ですよね。

――演劇的なコントユニットは吉本興業以外の文脈にあるイメージです。ここ最近で芸人発信のコントユニットが多発している理由はどこにあると思いますか?

福井:時代と事務所的な影響でしょうね。一昔前はちょっとピリピリしてる関係ぐらいのほうが格好いいみたいな風潮もありましたし。ただ、東京NSC 9期のライスさん、しずるさん、ジューシーズさん(2015年12月解散。現在、サルゴリラ、松橋周太呂として活動)、囲碁将棋さんとか、あのあたりの方々から「一旦そういうのはやめようよ」みたいな流れが出て来たと思います。 

吉本内でもそれくらいから縦の関係が一気に砕けて、「みんな横で手をつないでやろう」って空気になっていったイメージですね。直接そういうことを言ったとかではないと思うんですけど、空気感で下の人に示してくれたというか。 

あとゾフィーの上田(航平)くんが、いろんな人たちを集めたり、いろんなトコに絡んでいったりするじゃないですか。コント村とか、今はもうやってないですけど僕も1回呼んでいただいた「弱い人たち」(ゾフィー・上田、ラブレターズ・塚本直毅、ポテンシャル聡、劇団「玉田企画」の玉田真也によるユニットおよび公演)とか。 

それで思うのは、今盛り上がってるコントユニットの先駆けは上田くんだなと。「事務所関係なく、コント好きが集まって面白いことやろう」みたいな活動はそこから始まったと僕は思ってます。そういう意味でも彼はすごいですね。コント村のメンバーでコント番組の立ち上げまでいってますから。

関西はお客さんにより近いコントをやってる

――蛙亭、男性ブランコもそうですが、関西のコント師はある時期から東京に拠点を移しますよね。

福井:僕らはたまたま「よしもと漫才劇場」ができる2014年に東京に移ったんですよ。その前にあった「5upよしもと」が閉館して、システムも一新するということになって「東京に行かせてください」となった感じです。だから、東京に出た後に漫才劇場ができたって事実を知りました。結果的にタイミングがよかったんです。 

東京と大阪では、コントをやれる土壌がぜんぜん違いますからね。大阪はやっぱり漫才の国。まずお客さんが劇場に足を運んだ時点で「漫才を見せてくれるもんだ」と思っていらっしゃるんです。とくに地方から来られる方は漫才を見たくて来る。コントを始めると、「これは何をしてるんだ?」みたいな空気がちょっとあるんです。ガッカリ感というか。 

それに比べて東京は、コントを見たいお客さんの分母が本当に大きい。今でこそ、関西コント保安協会の特番(2021年7月にABCテレビで放送された『関西コント保安協会』)をやったみたいな話も聞きますけど、それまで関西にコント番組は皆無でしたから。漫才番組はずっとあるんですけどね。

――過去にはシェイクダウン(2000年解散)、チョップリンなど、大阪にも演劇的なコント師はいたと思います。この流れが続かなかったのは、良くも悪くも漫才というブランドの影響が大きいと。

福井:いまだに大阪でコントをやってる方は、お〜い!久馬さんだけですもんね。バッファロー吾郎さんとかは、東京に来られていますし。コントやる人は、途中まで大阪でやって東京に出るっていうのが絶対的な流れなんですよ。学校を卒業したら高校に行くみたいな感じで。 

次長課長さんもその印象ですし、「コントやられてる方は東京に行ったほうがいいよ」っていうのは僕らの世代ですらずっと言われてましたからね。だからこそ、関西コント保安協会の世代の方たちはすごい。その流れで番組までやれてるって、昔だったら本当に考えられないことですから。

――本当に土壌が違うんですね。関西と関東のコントでは、どこに一番違いがあると思いますか?

福井:関西はやっぱり笑わせてなんぼ、笑い声をもらってなんぼみたいなところかなと思います。東京みたいにコントの形があんまり決まってないからこそ、独特な空気感が生まれる気はしますね。 

個人的に思うのは、東京ってお客さんと演者の間にしっかり壁があるんですよ。舞台が部屋だとすれば、その部屋の中でちゃんとその世界のことをやってる。でも関西はその壁がそんなになくて、お客さんにより近いコントをやってる気はします。

――東西落語の成り立ちの違いにも似たお話ですね。そもそも関西では拍子木を打って人の目を引きながら屋外で演じていて、関東では最初から屋敷に招かれて披露していたようです。

福井:それはそうかもしれないですね。僕は漫才とコントの違いって言われた時に、いつもそのイメージがあって。漫才はお客さんとの壁が一切ないじゃないですか。そういう意味で関西は、漫才とコントが融合してる感じはしますけどね。“別空間感”が薄いというか。

かもめんたるさんが優勝した時は「これ以上どうなるんだろう?」って思ったけど…

――福井さんが芸人を始めた時代から、コントは進化していると思いますか?

福井:進化していると思います。たぶん時代の主流とか揺り返しがありながら、その時にしかないものが足されていくんでしょうね。かもめんたるさんが優勝した時は「これ以上どうなるんだろう?」って思ったけど、そういうのも乗り越えながら進んでいく気がします。

――ちなみに今後のGAGに変化はありそうですか?

福井:年齢相応のコントをやっていこうって、40歳になった時にすごく感じたんですよね。学生服一つ着るのでも「40やのに……」って思うし、大学生やるにしてもメイクさんに頼らないと厳しいなって。そこはスーツに変えたりして、違和感のない30代、40代のコントにしようって自然となりました。 

まだ相方2人は30代なので若い役もやれると思うんですけど、僕は一旦卒業しようかなと考えることが増えました。もし相方にも違和感が出て来たら、おじさんばっかりのコントになっていくでしょうね。年齢ってコントにすごく影響すると思うんですよ。もちろん年齢に関係なくいける人もいるんでしょうけど、僕たちのやってる感じだとキツくなるだろうなって。漫才と比べると、よりそこはシビアに考えないといけないなと思いますね。 

あと今まで「ダサ坊」みたいなキーワードでやって来たんですけど、そろそろ“坊”と言うにはおじさん過ぎるかなと。まぁない言葉ですけど、「ダサおじさん」みたいな何か新たなジャンルみたいなのを作っていけたらなっていうのも思います。おじさんになってもできるコント、自分らの新しい形のコントを作るのが今の目標ですね。

  • 取材・文鈴木旭

    フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。4月20日に『志村けん論』(朝日新聞出版)が発売された。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中。http://s-akira.jp/

  • 撮影スギゾー。

Photo Gallery7

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事