異常事態か…!「2ヵ月動静不明」金与正が姿を消した驚きの理由
北朝鮮の指導者・金正恩氏の妹、金与正氏が動静不明になっている。
与正氏が公の場に現れたのは、今年10月11日の朝鮮労働党創建73周年記念日に行われた「自衛2021国防発展展覧会」が最後。以来、2ヵ月近くも姿を見せていないのだ。12月6日付の韓国紙『朝鮮日報』は、韓国当局も彼女の動きを把握できていないと報道。「周辺で異常事態が起こった」との見方を紹介している。
「以前にも長期間、与正氏が公の場に現れなかったことはあります。しかし韓国当局は、地方を視察するなど彼女の非公開の行動は把握していた。今回は、まったく動向をつかめていないようです。11月16日の金正恩氏による北部・三淵池の建設現場視察に同行せず、12月1日に行われた労働党政治局会議にも参加しませんでした」(韓国紙記者)
新型コロナウイルスに感染し重症化、政治上の大きな失敗をし失脚……。韓国のネット上には、与正氏が姿を消した背景についてさまざまな憶測が流れている。
「首領」に込められた意図
別の見解を示すのは、朝鮮半島情勢に詳しい『デイリーNKジャパン』編集長・高英起氏だ。
「カギとなるのが、11月8日付の朝鮮労働党機関紙『労働新聞』1面です。『戦闘の決勝戦は遠からず 必勝の信念高らかに勇気百倍で前進!』という記事の中で、金正恩氏について次のように記していました。『偉大なる首領であられる金正恩同志』と。以前は『最高指導者』『将軍』と呼ばれることが多かった正恩氏ですが、最近は『首領』という呼称が増えているんです。
来年、実権を握り10年の節目を迎える正氏が、自身を偶像、神格化しようという意図がうかがえます。ただ北朝鮮で『首領』とは、一般的に建国者で正恩氏の祖父・金日成主席を指す。人民の固定観念を変えるため、重大な役割を担っているのが党宣伝扇動部です。与正氏も、深くかかわっているのではないでしょうか」
与正氏は同部の副部長だ。兄の神格化のため、業務に専念しているのかもしれない。前出の『朝鮮日報』は、「韓国国家安保戦略研究院」元院長ユ・ソンオク氏の、次のようなコメントを紹介している。
「与正氏は神秘主義的な戦略により、(消息不明になることで)外部からの関心を高め、突然登場し存在感を示す可能性があります。新たな行事を準備中で、公の活動を自制し、静かに動いていると考えられる」
前出の高氏が続ける。
「金正恩氏と与正氏の兄妹が、より権威を高めようとしているのは間違いないでしょう。ただ2人は、40歳になっていないといわれます。偉大なる祖父と同じ地位に立つには、指導者としてはまだ若い。『首領』を名乗っても、人民の共感を得られるかは疑問です」
姿を消した与正氏。自分たちの権力を絶対的なモノにするため、苦闘が続く。
- 写真:ロイター/アフロ