女子テニススター失踪の背後に「中国共産党内の権力闘争」 | FRIDAYデジタル

女子テニススター失踪の背後に「中国共産党内の権力闘争」

「チャイニーズ・マン」IOCバッハ会長まで動員 国際スキャンダルの呆れた真相 元中国国営メディア幹部が証言

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国際社会を巻き込むスキャンダルが明らかになって1ヵ月。いまだ、中国は火消しに躍起になっている。11月2日、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で中国女子テニス界のスター・彭帥(ほうすい)(35)が張高麗(ちょうこうらい)前副首相(75)から「性的関係を強要された」と、告発したのが事の始まりだ。

その後、彭帥は消息不明となったが、失踪から約3週間が経(た)った11月21日、事態は思わぬ展開を見せる。IOCのトーマス・バッハ会長が「彭帥とオンライン会談を行い、無事を確認した」と、突如発表したのだ。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が言う。

’17年10月、中国共産党大会に出席する張高麗前副首相(下)と習近平国家主席(上)。張氏は北京五輪招致で中心的な役割を果たした
’17年10月、中国共産党大会に出席する張高麗前副首相(下)と習近平国家主席(上)。張氏は北京五輪招致で中心的な役割を果たした

「『中国政府の監視下に置かれている』と、彭帥の安全を疑問視する欧米諸国やWTA(女子テニス協会)が、中国政府を厳しく糾弾し、来年2月に開催予定の北京五輪の外交ボイコットを検討すると発表したのがキッカケです。批判をかわすため目をつけたのがバッハ会長だった。

彼は東京五輪の会見で日本人を『チャイニーズピープル』と言い間違えるほどの、中国びいき。北京五輪に万が一のことがあってはバッハ会長も困る。IOCの運営費の約75%が放映権料ですからね。利害が一致したのです。バッハ会長に彭帥とオンライン会談をさせることで、彭帥の無事を対外にアピールし五輪開催のために力を合わせたのです」

そもそも彼女は無事なのか。いったい中国で何が起きているのか。「彭帥の告発を仕掛けた黒幕が共産党内にいる」と言うのは元中国国営メディアの幹部だ。

「彭帥選手の告発は共産党内の権力闘争のなかで生まれた副産物にすぎない。彼女は張氏を失脚させるための駒として利用されたのです」

この元幹部によれば、告発された張氏の現況が中国国内でも一切伝えられていないのは極めて不自然なのだという。汚職やスキャンダルに厳しい習近平体制では、見せしめとして処罰が公になるからだ。「それをしないのは、当局側に都合の悪い事実が存在する可能性が高い」と、元幹部が続ける。

「告発は世界的に流行しているセクハラ撲滅を訴える『#MeToo運動』の流れだったという声もあるが、中国をわかっていない者の発想です。彭帥選手が共産党の統制の恐ろしさを知らないはずがないからです。もし、彼女が本気で告発する気なら、家族とともに海外へ移住するなどの保険をかけているはず。取り締まりの手は親族まで及びますからね。テニス選手として名を馳(は)せた彼女が、保険をかけずリスクを冒すはずがない」

ウェイボーに告発文が投稿されたのは、「一時的に検閲システムが解除された」からだという。

「そもそも告発文がウェイボーに投稿されたこと自体がおかしい。中国では中央政治局員の名前が入っているだけで、投稿される前にサーバーで弾かれ、チェック部門に回されるからです。しかし、なぜか彭帥の告発は国家検閲を免れ、30分だけ公開された。権限を持つ何者かがある目的のために故意にスルーさせなければ、起こりえないのです」(元幹部)

なんのために張氏を失脚させようとしているのか。張氏が握っている「石油利権」が焦点だと言うのは中国共産党関係者だ。

「張氏は周永康(しゅうえいこう)前党中央政法委員会書記と距離が近かった。彼は国産石油を産出する大手3社からなる『石油閥』を掌握していました。周氏が’14年に汚職で失脚したあと、張氏がその石油利権を引き継いだのです。セックススキャンダルで、その利権を宙に浮かせたいというのが告発の真の目的でしょう。

画策したのは習近平の可能性が高い。彼はこれまで、政敵から水利権や電力利権を奪ってきました。党内の反習近平派である『上海閥』の犯行だという可能性も捨てきれないが、いずれにしろ、カネをめぐる共産党内の権力闘争であることは間違いない」

国際問題にまで発展したスキャンダルは、共産党という狭い世界のカネをめぐる権力闘争でしかなかったのか……。

中国国営メディア関係者が11月20日に公表した彭帥の自撮り写真。習近平を揶揄する象徴である『くまのプーさん』が国家検閲をスリ抜けて写りこむなど、不可解な点が多い
中国国営メディア関係者が11月20日に公表した彭帥の自撮り写真。習近平を揶揄する象徴である『くまのプーさん』が国家検閲をスリ抜けて写りこむなど、不可解な点が多い
11月21日、バッハ会長が彭帥選手とオンライン会談したと発表。チャイナマネーが流れた、と疑念が集まった
11月21日、バッハ会長が彭帥選手とオンライン会談したと発表。チャイナマネーが流れた、と疑念が集まった

「FRIDAY」2021年12月17日号より

  • 写真共同通信社(1枚目)

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