巨大化する中で生じる維新の会と橋下徹氏の「微妙な距離感」 | FRIDAYデジタル

巨大化する中で生じる維新の会と橋下徹氏の「微妙な距離感」

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大きな組織をまとめるのも大変…?(AFLO)
大きな組織をまとめるのも大変…?(AFLO)

衆議院総選挙で41議席を獲得した日本維新の会。本拠地・大阪では全勝して15議席を独占するなど、同地区で比例復活のわずか3議席に留まった自民党とは明暗がくっきり分かれた形となった。国政の場でもその影響力が拡大することは必至だ。

その兆候が、さっそく現れた。10区で辻元清美を破った一期生・池下卓議員が国会議員に支給される文書交通費について「任期1日でも100万円出る。世間の常識では考えられない」と指摘したことで、たちまち世論を巻き込んだ大論争へと発展した。来年の参議院選挙で一気に全国区へと打って出たい維新の会としては、注目度を集めるという意味では上々の滑り出しを果たしたとも言えるだろう。

だが、当の文章交通費問題の波が派生して、党内で小さくないわだかまりが出来ている、という声も聞こえてくる。ある党本部の職員は「与野党問わず噛み付く最近の橋下さんの過激な発言は、さすがに看過できない。いつ党にブーメランが返ってくるか……」と本音を漏らす。その声には議席増により、若手議員たちと橋下徹元代表との距離感の相違が生まれたというニュアンスも伝わってくる。

橋下氏は文書交通費問題について一貫して「メスを入れるべき。実費での支給をすべきだ」と明確な指針を打ち出している。11月中旬に出演したテレビ番組では、

「維新は(使い道を)公開しているから他の党よりマシなんです。民間企業の経費の実費精算って、領収書の添付は当たり前だけど、おカネが余ったら戻すってのももう一つ重要じゃないですか?でも、維新は中身は公開するけど、戻さないんです。どこに戻すかと言ったら自分の政治団体に入れちゃう」

などと発言している。また他党との差別化を図る上でも維新は理想を目指すべきとしつつ、「いまの維新であれば政権をとっても、政府や政党の領収書不要のカネにメスを入れられない」と警鐘を鳴らしている。

だが、そんな橋下氏の言動に対して、党内では必ずしも賛成意見ばかりでもないというのだ。

実際にアクションを起こす議員も現れた。党内きっての政策通として知られる足立康史衆議院議員が、橋下氏に対してツイッター上で舌戦を展開し、ネット上でも盛り上がりを見せている。

日本維新の会に所属する議員が明かす。

「もともと維新の会は、政治改革を掲げ支持を得てきました。それが今回の選挙で圧勝できた理由の一つ。ただ母体が大きくなったため、現在の党内には様々な意見が生まれるようになった。橋下氏への距離感も同様で、特に当選一期目の議員の中では、『国政の経験のない橋下さんがなぜこの問題に首を突っ込んでくるのか。世間ではいまだに橋下さんの意見=維新の会の総意、という捉える人も少なくない。その発言の飛び火がこちらにもまわってくる』と訝がる者もいます。

特に文章交通費問題はデリケートでもあるゆえに、本来であれば新人が積極的に切り込み、“お手柄”にしたいという考えがあったため、橋下さんが出しゃばりすぎだ、という声もありますね。つまり、いまだに橋下さんの影響力が強い維新の現状に対して、疑問を感じている議員もいるということです」

党代表を離れてからは、コメンテーターとしてテレビで見ない日がないほどひっぱりだこの橋下氏。一見維新とは距離を取っているように見えて、現在も重要な局面では党幹部との会食を繰り返しているという。

「松井代表、吉村知事、馬場伸幸共同代表などを含めた党幹部と結構な頻度で会食し、アドバイザー的に意見を求められることもあるそうです。しかし、それをよく思わない議員もいる。今回の党内人事に関しても、吉村さんと関係が深い藤田文武さんを幹事長として登用するなど若手中心の起用となりましたが、これについてもネガティブな意見があります。

さらに言えば『そろそろ橋下さんの影響力頼みの状態から脱却すべきだ』という意見も少なくない。松井さんが引退を表明しているいま、吉村さんを中心とした若手を登用するのは理解できますが、明らかに不遇な状態の実力派議員もいる。他党のように党内闘争の一歩手前というような状態…という危惧もあるのです」(同前)

一枚岩でなくなってきた原因は、維新が「勝てる政党」になってきたことにより、国会議員の座席を巡り「椅子取りゲーム」が始まっているからだという。

「存在感を示せば、自分たちでも国政へ行ける」「なぜあいつが俺より先に国政選挙への切符を手にしたんだ」

そうした野心と不満が渦巻けば、党内がギスギスするのも当然…というわけだ。

「追い風が吹いていることもあり、国政希望者が多すぎるというのが今の大阪維新の会です。実際今回の選挙戦でも早い段階から、辻元清美さんがいた10区、左藤章さんの2区、岡下昌平さんの17区、奥下剛光議員の7区以外は、はやばやと楽勝ムードでした。つまり党内の公認さえ取れれば勝てる、といっても大袈裟ではないわけです。吉村知事が早々と東京など他県の応援演説に力を入れたのも、いかに大阪以外で議席を伸ばすか、ということに集中できたからです」

その一方で、早々と伊東信久議員のマルチ商法業者スキャンダルが週刊文春で報じられるなど、リスク管理に不安を感じるという声も上がっている。先出の議員は今後の維新の会の未来のためにも「しっかりとした身辺調査は必要だ」と警鐘を鳴らす。

「今回当選したメンバーは、金銭的に余裕のある候補者が大半でした。もともと資金繰りがウチの弱点だったわけですが、それを補える人選だったとみています。こうなってくると怖いのが、スキャンダルです。関西の場合は、メディアと維新の距離が近く、スキャンダルも抑え込めるという自信があったかもしれませんが、全国区となるとそうもいかない。ローカル感覚が抜けてない議員が多い今の維新に、橋下さんが抱いている危機感というのも正しい。来年の参院選、23年春の統一地方選挙を見越しても、橋下さんとの関係性は今後も重要でしょうね」

議数を増やすことで、派閥が生まれ権力闘争が生まれるのは永田町の論理でもある。今回の総選挙で昇り龍となった日本維新の会の動向は、与野党問わず関心事となっていくだろう。

  • PHOTO時事通信社

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