吉高由里子の魅力あふれる『最愛』に散りばめられた「不穏さ」 | FRIDAYデジタル

吉高由里子の魅力あふれる『最愛』に散りばめられた「不穏さ」

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新井順子×演出家・塚原あゆ子のタッグ作品

今クールドラマの最注目作『最愛』。殺人事件の重要参考人となった主人公は、介護と創薬を手掛ける「真田ウェルネス」の社長・真田梨央(吉高由里子)。そして、梨央の幼馴染であり刑事の宮崎大輝(松下洸平)、梨央を様々な場面で守り続ける弁護士・加瀬賢一郎(井浦新)を中心に展開していくサスペンスラブストーリーだ。

今作も、『夜行観覧車』や『Nのために』、『リバース』、『アンナチュラル』、『MIU404』などの多くのヒット作を生み出してきた“プロデューサー・新井順子×演出家・塚原あゆ子“のタッグである。

ハズレなしと言われる作品の数々の中でも、塚原あゆ子の演出で相変わらず上手いと思わされるのが、自然を写しているだけの場面など、何気ない描写に漂う不穏さだ。セリフによらず、あくまで映像で感じさせる不穏さはどのようなものか。過去作を振り返る中で、『最愛』、『Nのために』、『夜行観覧車』に共通する“不穏演出”が見えてきた。

(イラスト:まつもとりえこ)

次第に大きくなる心音の様な「メトロノーム」

『最愛』では、真田ウェルネスの専務・後藤信介(及川光博)が不正利用していたお金を発見する場面で、ドアにぶつかったメトロノームが動き出す。一定に刻まれるメトロノームのリズムが視聴者の不安を煽るような効果を生み出し、まさに“不穏演出”となっている。

実は、この特徴的なメトロノームの演出は、『Nのために』でも行われている。それは、1話序盤で主人公・杉下希美(榮倉奈々)の一家に父(光石研)の愛人(柴本幸)がやってくることで、それまで裕福で幸せだった家庭が崩れていくきっかけとなるシーンだ。

部屋にあることで唐突さすら感じるメトロノームの違和感、主人公の心音のようなリズム。これら全てが場面の不穏さを強調している。

(撮影:榎原優美)

周囲から浮くほど鮮やかな「赤い服」

塚原あゆ子演出で、これまた特徴的なものは、周囲から浮いて見えるほど鮮やかな赤い色の服をまとった登場人物だ。『Nのために』では、先述した父の愛人が、目も覚めるような真っ赤な服を登場シーンで着ている。舞台となるのどかな瀬戸内海の島の風景や住人から、明らかに浮いている。その異質さがまた不穏さを際立たせているのではないだろうか。

『夜行観覧車』では、その場面ごとにキーパーソンとなる人物が赤い服を着ていることが多い。主人公である遠藤真弓(鈴木京香)の娘・彩花(杉咲花)が中学受験に落ちてしまうシーン、真弓が高級住宅街のバザールに一人だけ庶民的なものを持ってきてしまうシーン、真弓たち家族の向かいに住む高橋家で殺人事件が起きるシーンなど、数々の場面で真っ赤な服がある種の居心地の悪さのようなものを効果的に表現している。

今作『最愛』でも、梨央の母親・梓(薬師丸ひろ子)は真っ赤なカーディガンやスカートを着用していることが多い。塚原あゆ子演出における“赤い服”は一種の不穏さの象徴のようだ。

薄暗い部屋と「ランプ」

塚原あゆ子演出の作品に頻出する場面の一つに、“薄暗い部屋を照らすランプ”がある。『最愛』では、梨央が寮での事件に巻き込まれる直前、薄暗い食堂でランプ一つ着けて試験勉強をしている。

『Nのために』では、希美の母・早苗(山本未來)が、陽の光も射しこまないような、薄暗い部屋の隅にあるドレッサーの前に座る場面が多い。これまでのような裕福な暮らしができなくなったことを受け入れることができず、買ってしまった大量の高級な化粧品が、ドレッサー上のオレンジ色の光を放つランプに照らされるシーンが印象的だ。『夜行観覧車』でも、ひばりが丘の住人たちが集う手芸教室は、暗い部屋に怪しげなランプが複数置かれており、日々住人たちの噂話がされている。

直接的な表現ではないものの、その不気味な雰囲気を十分に醸し出している。

事件と隣り合わせの「炎」

塚原あゆ子演出のサスペンスドラマには事件がつきものだ。そして、それらの事件には高確率で“炎”が登場している。

『Nのために』において希美と慎司(窪田正孝)が起こした放火事件は言うまでもなく、『夜行観覧車』でも、夫が殺害されたことで錯乱状態になる高橋淳子(石田ゆり子)の背後では暖炉の火が揺れている。

揺らめく炎は、不安定な登場人物の心を映し出しているかのようだ。『最愛』では、梨央の父(光石研)が亡くなる場面で、囲炉裏の炎が映し出されている。吹けば消えてしまう炎は、儚い生命のようでもある。

「夕日」の分岐点

塚原あゆ子の演出は、キラキラと光る水面、風に揺れる田んぼの豊かな緑など、自然を綺麗に映し出すことでも有名である。その中でも、夕日のカットは美しいながらも、不穏さを醸し出す要素となっている。雲がかかる夕日は、ストーリー展開の明暗の分岐点となることが多い。

『最愛』で梨央のお父さんが亡くなるシーンでは、沈んでいく夕日に照らされる山々が映し出される。お父さんの死を含む一連の事件は、それまでの楽しかった日々と、殺人事件の重要参考人となってしまったその後とを分かつ分水嶺である。その分岐点を、昼から夜に、“明”から“暗”に向かって行く夕日が象徴している。

『Nのために』では、希美が追い出された家を燃やそうとするシーンの前に、『夜行観覧車』では、彩花が中学受験に落ちてしまうシーンの前に夕日のカットが入れられている。

以上に挙げたもの以外にも、現代パートと過去パートの「色味の変化」や、物語が大きく展開する「夜の演出」など、塚原あゆ子が手掛ける演出には至る場面に“不穏さ”が散りばめられている。『最愛』は、いよいよラストスパートを迎え、ますます盛り上がりを見せるだろう。どんな“不穏演出”が繰り出されるかにも要注目だ。

  • オオタアイカ

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