『ムショぼけ』プロデューサーが明かす「驚きの制作秘話」 | FRIDAYデジタル

『ムショぼけ』プロデューサーが明かす「驚きの制作秘話」

14年間シャバから隔絶されていた男の悲哀、再会、そして恋

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北村有起哉演じる主人公の陣内宗介

「コンビニのレジ袋は有料! 居酒屋は全面禁煙! てかスマホって何や!」

俳優・北村有起哉扮する「陣内宗介」がそう叫ぶ。長年の刑務所暮らしによって、社会と閉鎖された生活を送った者が出所後、世の中の環境の変化やスピードの速さについていけない現象、通称〝ムショぼけ〟。そのムショぼけ状態にある元暴力団構成員の男が、様変わりした14年振りのシャバに困惑しながら、悪戦苦闘するドラマ『ムショぼけ』が話題を呼んでいる。

原作は作家・沖田臥竜氏の同名小説で、主人公の陣内役を北村、主人公の元担当刑務官で、出所後は主人公だけが見える幻影として登場する「夜勤部長」役を板尾創路が演じるなど豪華なキャスト陣も人気を呼んでいる。

最終回直前、『ムショぼけ』チーフプロデューサーの山崎宏太氏(ABCテレビ、以下「山崎」)、プロデューサーの南雄大氏(同、以下「南」)に、制作秘話を明かしてもらった。

――これまでの反響はどうでしょうか。

山崎「SNSなどで大きな反響をいただいています。前半はコメディタッチだったので『面白い』という声が多かった。放送前はヤクザもののドラマというイメージが強かったですが、中身は関西を舞台にしたコメディなので、そのギャップも楽しんでいただけているのかなと思っています。第8話(関西では11月28日、関東では11月30日放送)は、主人公に心を通わせる重要人物のリサ(武田玲奈)が突然自殺してしまうということもあって、驚きとともに『不覚にも泣いてしまった』など、特に反響が大きかったです」

――映像化の経緯を教えてください。

山崎「原作の沖田さんと、企画プロデュースと今回クレジットされている藤井道人さん(バベルレーベル)とのあいだで、もともとの構想が始まりました。僕自身は藤井さんから『関西を舞台にした作品があるのでドラマ化できないか』とご相談をいただいた形になります。ABCテレビとしても、がっつり関西で連ドラを撮影するという機会は多くなく、ありがたいお話をいただいたと思いました」

――映像化する際に、なにかハードルはあったのでしょうか。

南「このドラマは沖田さんの実体験からくるリアリティがベースにあると思います。私自身、出来上がった脚本を読んで、驚いたことがいくつもありました。たとえば、刑務所では刺身など生ものは出てこない。刑務所では夜に出歩くことがないので、出所して夜の街を歩くことに戸惑う……といったエピソードは実体験からしか生まれないもので、『これは面白いドラマになる』と手ごたえを感じました。

しかしながらテレビですので、いくつか配慮しなければならない部分があることも事実です。たとえば、刺青のシーンについては様々な影響を考慮し、どのように表現するべきかスタッフ陣で話し合いました。第1話で主人公の陣内がコンビニ店員の対応にイラ立ち、さりげなく服をまくって刺青をチラ見せするシーンがあります。そこに『※良い子はマネしないでね』と字幕を入れることで、結果コメディとして楽しいシーンになりました」

陣内(左)と、板尾創路扮する夜勤部長

――個性的なキャラクターがたくさん登場するなか、板尾創路さん演じる夜勤部長の存在感は特に際立っています。キャスティングはどのような点を重視されたのでしょうか。

山崎「このドラマは沖田さん、藤井さんらとキャスティングを話し合ってきました。板尾さん扮する夜勤部長は、主人公と同じくらい多くのシーンで登場し、また、主人公の内面を象徴するイマジナリーフレンド(空想上の仲間)のような存在です。あの役はかなり重要で、最もキャスティングにこだわった役のひとつでした。『夜勤部長は板尾さんしかない』と当初から板尾さんの名前はあがっていて、本人も快く引き受けてくださり、かなり早い段階に決まりました」

――逆にキャスティングが難航した役柄はありましたか。

山崎「HIRO(お笑いコンビ『コウテイ』の九条ジョー)ですかね。主人公の現役時代の弟分という元暴力団構成員でありながら、現在はユーチューバーとして活躍している。なかなかイメージがしにくく、説得力を持たせるのが難しい役どころ。『ABCお笑いグランプリ』でコウテイさんが優勝したということもあり、『九条さんがいいのでは』ということになりました」

――九条さんが演じられているので違和感なく見ることができますが、冷静になって考えると、かなりトリッキーな役ですね(笑)。

山崎「結構重要な役ですし、難しかったと思います」

『コウテイ』の九条ジョーの演技が光る

――もともと兄貴分だった主人公に対して、割と失礼なことをやっているのに、どこか憎めないような不思議なキャラクターだと思いました。

山崎「うまく演じていただけました。コウテイは今、特に若い層から人気がありますし、良いキャスティングだったと思っています」

――ABCテレビ制作で関西が舞台とあって関西圏に馴染みのあるキャストが多いです。主人公の母親・オカン役を演じた末成映薫さんは、『吉本新喜劇』などでお馴染みの存在です。

山崎「兵庫の尼崎や大阪の岸和田など、全編関西で撮影しました。関西のキャストで、関西弁で喋り、関西で撮るというのが企画の大きな狙いだったので、末成さんにオカンを演じていただけたのは大きかったです。南はもともとバラエティー番組のディレクターをやっていたので、末成さんとも面識があったのです」

南「末成さんは昨年、芸名を『末成由美』から『末成映薫』に変更されました。理由をうかがったら『映画とかドラマに出たいのよ』とおっしゃっていた。『朝ドラのヒロインを狙っている』ともおっしゃっていましたが(笑)、『ムショぼけ』の話が来たときは本当に嬉しかったそうです。大阪の人たちも普段見られない末成さんの姿は新鮮なようで、反響は大きいですね」

末成映薫(一番左)と、陣内の娘・ナルミ役の鳴海唯(左から2人目)

――全編関西ということで、尼崎駅のまさに目の前などでも撮影されています。撮影許可がおりないなど、いろいろとご苦労があったのではないでしょうか。

南「ロケ地に関しては沖田さんをはじめ、地元の皆さんのご協力をいただき、寛容に進めることができました。企画プロデュースの藤井さんが出来上がりを見て、『どこを切り取っても東京都では撮れないような渋いロケーションだ』と。たとえばシャッター街の商店街や、駅前など、渋いロケーションはドラマの見どころの一つだと思います。東京の視聴者の方にとっては新鮮だと思いますし、関西の方にとっては『本当に関西で撮影しているんだ!』という説得力もあるのかなと。ロケをしていると『誰おんの?』と寄ってくる人は東京でロケをする際よりも多く、現場では対応に奔走することもありましたが、いまとなっては楽しい思い出です」

――電車内のシーンはどこで撮影されたのですか。

南氏「南海電鉄さんにご協力いただいて、6駅ほどしかない短い路線を行ったり来たりしながら撮影しました。東京では電車内での撮影はハードルが高いので、関西だからこそ撮れたシーンの一つだったと思います」

――車窓に映る甲子園を見つけて、甲子園の思い出話に移るシーンがありましたが、撮影のタイミングを合わせるのは難しかったのではないでしょうか。

南氏「実はあそこで見えている甲子園はCGなんです。実際の電車からは甲子園は全然見えない。仕上げチームの技術力ですね」

――最後に最終回の見どころを教えてください。

南氏「陣内は敵対する組織の組長を狙撃して14年ものあいだ刑務所に入ることになったわけです。最終回ではそれまで伏せられていた『そもそもなぜ陣内が狙撃することに至ったのか』という謎について、自身の経験を本にすることを決意した陣内が、自らの筆で描いていきます。

また、本を出すということで、娘のナツキ(鳴海唯)との関係性はどうなってしまうのか。陣内だけに見えていた夜勤部長はどうなってしまうのか。重度のムショぼけ状態の陣内がシャバで本当の幸せをどう見つけていくのか。そのフィナーレを見届けて頂けたらと思います」

『ムショぼけ』最終回は、関西では12月12日、関東では12月14日に放送予定だ。

  • 取材・文芳賀慧太郎

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