大人に食い物にされて居場所を奪われた「トー横キッズ」の本音
現地ルポ 薬物のオーバードーズに飛び降り自殺 淫行や傷害致死で逮捕者まで出た 警視庁は取り締まりを強化中だが、当のキッズたちはシラケムード
12月6日、夜9時を過ぎた新宿・歌舞伎町。つい1週間前まで「トー横キッズ」と称される未成年者で溢(あふ)れていた『TOHOシネマズ』横の路上は閑散としていた。この2日前、私服警察官120人がこの場所にたむろする未成年者を一斉に補導したのだ。
「今年に入り、トー横界隈では薬物乱用や飛び降り自殺など、未成年者が関わった事件が頻発しています。10月26日、トー横界隈に入り浸る21歳の男性が児童買春で逮捕され、11月27日には、少年を含む6人組のグループがホームレス男性をリンチし、殺害する事件まで起きています。こうした事態を受け、警察が年末年始を前に、取り締まりに本腰を入れ始めたのです。
トー横キッズの少女に管理売春をさせ、カネを稼ごうとする半グレ組織が現れたことや、『シマを荒らされた』と、その半グレ組織を排除するため歌舞伎町に本部を置く指定暴力団『住吉会』系三次団体まで動き出したことも背景にあります。児童相談所の職員や民間警備会社にも依頼をして、未成年者の保護にあたっています」(警視庁関係者)
トー横キッズのほとんどが家庭に居場所がなく、仲間を求めるように歌舞伎町に集まっていた。皮肉にもグループ化したことによって、大人たちに目をつけられ、居場所を奪われつつあるのだ。
歌舞伎町を去ったと思われたトー横キッズのグループが姿を現したのは日付が変わったころ。FRIDAY記者はつい1週間前に警察に補導されたというミズキ(17)と名乗る少女に話を聞いた。
「カウンセリングという名目で新宿警察署に連れて行かれました。机の上に置いてあった『トー横関係聴取カルテ』に沿って、『トー横のリーダーは誰?』『偽装身分証を持ってる?』とか、いっぱい質問されました。SNSアカウントのフォロワーを見られたり、『この人知ってる?』と、50枚以上の顔写真を見せられたりして、何時間も部屋に閉じ込められたんです。私には関係ないし、警察に利用されたくないから全部ウソで答えました。しつこいからパニックになったフリして、見逃してもらいました」
警察はいま、トー横キッズのSNSを監視し、トー横界隈に出入りする若者たちのリストアップを始めているのだという。同じグループにいたミナ(仮名・17)はこう憤(いきどお)っていた。
「監視されてると聞いてから、SNSは控えめにしています。でも、SNSが生きがいだから正直キツイ。ここにいる皆が売春とかパパ活してるわけじゃないし、そんな子たちを狙う大人が悪いでしょ。被害者は私たちですよ。正直、トー横はもうオワコンですよ。お金が貯まったら、出ていきます」
居場所を失ったトー横キッズたちに行くアテはあるのか。「トー横」に詳しいライターの佐々木チワワ氏が言う。
「トー横はもともとSNSに自撮りを載せることが好きだった子たちがオフ会をするときに、待ち合わせ場所にしていたのが始まり。別に場所自体に愛着があるわけじゃない。キッズたちは大阪の『道頓堀グリコサイン』の下(通称『グリ下』)や、神奈川にある横浜ビブレ入り口横通路(通称『ビブ横』)などのトー横に似たたまり場に移動しています。なかには年齢を偽ってバーなどで雇ってもらい、移動資金を貯(た)めている子もいます」
社会や家庭にある根本的な問題を解決しないかぎり、またどこかで新たな″界隈″が生まれてしまうだろう。




『FRIDAY』2021年12月24日号より
PHOTO:結束武郎(現地写真3点) 蓮尾真司(送検) 佐々木氏提供(カルテ)