山本KID徳郁の「お別れ会」 試合観戦に行く服装がドレスコード
「弟は本当に最後の最後まで強かった。痛いとか苦しいとか弱音は吐かず、辛いのに自分が手本を示したキックの動画を送ってくれたりした。『お前はまだキック、パンチができていないからちゃんとやれよ』って。病室で姉弟喧嘩して普通に怒られていました」
KIDさんの姉、山本美憂さん(44)は気丈に振る舞いながら話す。9月に胃がんで亡くなった格闘家の山本KID徳郁(のりふみ)さん(享年41)のお別れ会が11月4日、青山葬儀所で営まれた。会の途中では、KIDさんの入場曲やラップが流れ、外には生前好きだったスーパーカーが30台並ぶなど、参列者たちのド肝を抜くような演出でファンを楽しませた。なにより、参列者には「試合観戦、応援に行くような服装で」と異例のドレスコードが指定され、親族をはじめとしたスタッフ一同が、メモリアルTシャツ姿で参列者を迎えた。
会場には武蔵、魔裟斗、須藤元気らKIDさんと同年代のファイターから、那須川天心など若手に至るまで、格闘技のファイターとファンら約1000人が参列。それぞれが胸に秘めていたKIDさんとの思い出を話していた。
「いろんな選手と闘ってきましたが、KIDにはオーラがあって、ギラギラしていた。ちっちゃいんですけど、『怖いな』と感じたのはKIDが初めてでしたね。一方で、練習のときは、『空手の蹴りを教えてください』『パンチを教えてください』とよく聞いてきた。なんでも自分のものにしてしまう天才でした」(武蔵)
KIDさんは身長163cm。恵まれた体格ではなかったが、ファイティングスピリットは誰にも負けなかった。
「彼は僕より小柄で、体重が軽かったんですけど、真っ向勝負で打ち合った。僕は63戦してますが、中でも’04年、大晦日の彼との試合が一番印象に残っています。アドレナリンがすごく出て、闘っていて一番楽しかった」(魔裟斗)
参列者を眺め、ライバルとして何度も闘った須藤元気はこう言った。
「今日のお別れ会みたいに、格闘技仲間がこんなに集まるのは初めて。KIDさんはみんなに好かれていたんだなあと改めて感じました」
「神の子」山本KIDは、天国でもライバルたちを挑発しているに違いない。
- 撮影:蓮尾真司