渋野日向子&古江彩佳が米ツアーで戦う「韓国の超新星」の実力
来季は二人そろってアメリカツアーへ本格参戦が決定! しかし、“ゴルフ強国”韓国からも次のヒロイン候補が続々と登場している
米女子ツアーの2022年シーズン出場権をかけた最終予選会(Qシリーズ)が終了した。トータル8日間、144ホールに及ぶ長い戦いに挑んだ日本の古江彩佳(21)は7位、渋野日向子(23)は20位タイで終え、共にツアーメンバー資格と出場権を獲得。来年は米ツアー1年目の“新人”選手として戦うことになる。
日本でも2人の動向に注目が集まるが、同じく米ツアーに初参戦するたくさんのライバルたちがいるのも忘れてはならない。今回の最終予選会で1位通過を果たしたのは、これまで数多くの海外メジャーチャンプを輩出している韓国の選手だ。
その名はアン・ナリン。韓国女子ツアーを主戦場にする25歳で、米ツアー最終予選会に初挑戦ながら堂々の1位通過を果たした。8日間のスコアは圧巻だ。第1ラウンド「67」、第2ラウンド「67」、第3ラウンド「72」第4ラウンド「66」、第5ラウンド「64」、第6ラウンド「69」、第7ラウンド「70」、第8ラウンド「66」。一度もオーバーパーを打たずに首位通過を果たしたのだ。韓国人選手が最終予選会で1位になったのは、2018年のイ・ジョンウン(当時22)以来3年ぶりだという。
「アン選手は2014年にプロ入りしてからは、ほぼ無名に近い存在でした。ブレイクしたのは、2020年韓国ツアーで初優勝を含む2勝してから。今年は優勝こそなかったものの、2位2回を含むトップ10入り11回、賞金ランキング9位とトップ選手の仲間入りを果たした。アマチュア時代も韓国代表になったこともなく、エリート街道とは無縁でしたが、着実に力をつけ、米ツアー出場権をつかんだ努力家タイプの選手です」(韓国のスポーツ紙記者)
彼女の強みは精度の高いショット力。2019年の韓国ツアーでのパーオン率は66.81%だったが、初優勝した2020年は74.46%にまで上昇している。今年も73.62%で、アイアンショットの技術向上がスコアをまとめるカギとなっている。トップ通過を果たしたアンは、
「2週間の戦いは体力的に厳しいところもありましたが、いい成績を出すことができてうれしい。米ツアーは色々な国に行けるので今からとても楽しみです。今までテレビで見てきた選手たちと競争ができるのでうれしい」
と新たな環境でゴルフができることを心の底から楽しみにしている。来年の米ツアーの“ダークホース”と断言していいだろう。
そしてもう一人、韓国で最も期待されているのが、22歳のチェ・ヘジンだ。すでに韓国女子ツアー通算10勝(アマチュアでの2勝含む)の実績を持ち、初挑戦となった米ツアー最終予選会で8位に入った。彼女は現在の韓国女子ツアーにおいては、華のあるナンバーワンプレーヤーと言っていい。
「アン選手とは対照的に、エリート街道を順調に歩んできたのがチェ選手です。アマチュア資格で出場した2017年の海外メジャーの全米女子オープンで、いきなり2位に入りファンの度肝を抜きました。また、同じ年の韓国女子ツアーでもアマチュアで2勝。見た目にはまだあどけなさが残りますが、ショット力の高さと堂々としたプレー、何事にも動じないメンタルは、すでにベテランの域に達しているかのようです」(前出・スポーツ紙記者)
プロ入り後は1年目の18年に2勝、19年に5勝して初めて賞金女王のタイトルを獲得。20年も1勝して、韓国女子ゴルフ界で盤石な地位を築き上げた。18年から3年連続で「KLPGA大賞」(年間最優秀選手)を受賞しているが、彼女の能力の高さを証明するには十分だろう。
「米ツアー参戦が目標」と言っていたチェ・ヘジンは、新たな夢の第一歩を踏み出し、少し興奮気味にこう語っていた。
「(米ツアー出場権を確保したことが)まだ信じられません。今からとてもワクワクしています。これからはもっとたくさん練習して、気になる部分を修正していきたい」
“ゴルフ強国”と言われる韓国には、まだまだポテンシャルの高い選手が多い。現在の女子ゴルフ世界ランキングトップ10には米ツアーで活躍する4人の韓国人選手(2位コ・ジンヨン、3位パク・インビ、5位キム・セヨン、9位キム・ヒョージュ)がいる。やはり層の厚さを感じずにはいられない。
韓国ツアーから主戦場を米ツアーに変えるアン・ナリンとチェ・ヘジン。渋野と古江のよきライバルになるのは間違いなさそうだ。
- 取材・文:キム・ミョンウ
スポーツライター
大阪府出身。新聞記者、編集プロダクションを経てフリーに。サッカーやゴルフを中心に、さまざまなジャンルのスポーツを取材する。著書に『イ・ボミ 愛される力』(光文社)。【X】https://twitter.com/mwkim0727